第36話 反乱
日本の法律では多重国籍は認めて居ないが、諸外国の中には許可する国も多い
日本に帰化申請し、日本国籍は取得しても、中身は外国人の人々も残さぬ様に、アメリカとフランスは軍を動員し、志那は人民解放軍を使い迅速な退去を進めた
この動きに対する日本政府の反応は無く、警察も公安も自衛隊も何の取締りすら出来ずに、寧ろ日本人が邪魔をしない様に警備する有り様である
「日本国籍取得の為に」日本人と姻戚関係を結んだ工作員達も、家族を捨て一目散に船に乗る
その際に授かった子供は、「穢れた血統」である為に伴侶と共に置き去りにされた
彼等は元々「漢民族」以外を認める積りは無かった
いずれ世界を手に入れた暁には、漢民族以外は
志那共産党の指示に逆らう事は許されず、拒否する者は日本に置き去りにされる
尤も、ここ数年は婚姻せずともビザすら緩和し、帰化申請も簡略化されて居た為にその様なパターンは極少数の反逆者として処されて終わる
日本からの退去の理由は明かされ無かったが、勘の良い者はこの不自然な動きの真意に気が付いた
20世紀の終わりにアメリカが湾岸戦争をおっ始めた時、東側の武器は尽く西側兵器群と戦術に歯が立たなかった
あの時、アメリカは極東にも目を向け、ロシアを恐れず志那を無力化しておくべきだったのだが、目先の利益に目が眩んだ支配者達はそうしなかった
その結果、慌てた志那は大慌てで腐敗の温床であり国家体制の基盤で在った統制経済をアッサリ鞍替えし、成金国家として世界No.2の軍事大国へのし上がってしまった
愚かな人間の欲望が世界史の舵取りを変えてしまった典型であるが、もう取り返しは付かない
志那は太平洋の覇権を手に入れる為に、どうしても日本列島が欲しかった
日本がアメリカの属国である限り、思う様に事を進められない為に、日本の政治を、社会そのものを破壊しに掛かり50年
やっと無制限に植民地化を進められる所までこぎ着けたが、此処へ来て天皇が余計な事をしでかした
「神の戒め」とやらで電気が使えなく為り、太陽も輝きを失ったが、3日過ぎには元通りだ
志那共産党は、それが神を名乗る日本の限界だろうと高を括った
何しろ志那共産党に於いて、宗教とは社会主義を推進する上で邪魔で有り、「神」を信仰するなど許され無かった
国家として「無神論」を推奨しているのである
かたや、戦後教育に依り歪められ洗脳された多数の日本人も、アメリカ主導の個人主義に走り資本家の手先として奴隷化されていた為に、無神論者が多かった
其処が天照大御神の怒りを買う事に為ったとも理解せず、反日勢力の洗脳にまんまと乗せられ「天皇不要論」や「女系天皇」に賛同する始末である
当然「神国日本」の真意を理解しようともせず、経済活動の規制や今迄の便利な世の中が破壊される事への過度な拒否感が過激な言動を育む結果と為った
「私は …… 」
世龍乱がゆっくりと立ち上がる
「天照大御神様より、全てを任せられて居る」
反日勢力に煽られた数万もの暴徒の群れが、皇居に火を放った映像がテレビ画面に映し出される
諏訪子は画面に映る皇居が焼け落ちるシーンを見て、涙が止まらなかった
余りの恐怖に身体の震えが止まらない
警察も消防もマトモに機能していない
消化活動すら無いまま、紅蓮の炎に焼け落ちる皇居から天皇陛下が脱出出来たと言う報道は無い
「諏訪子、済まない」
世龍乱と目が合う
「折角、夜刀の信徒と為ってくれたのに、貴様を救う事すら出来ない様だ」
「陛下はご無事なのでしょうか …… ?」
恐る恐る言葉を捻り出す
「徳仁天皇は、警護官と自衛隊に " 何が有っても
圧倒的な数の力で皇居内へなだれ込んだ暴徒の群れは、所構わず火を放ち、自らも退路を絶たれて炎に巻かれて居る
これでは、とても無事では済まないだろう
「そんな …… 折角神と人とが共存出来る国作りを目指したと言うのに!」
「日ノ本の人間が自ら其れを否定し、神に弓引いたのだ …… 真摯に天照大御神様の御言葉に従おうと世界も動きかけて居たのに、残念だ」
世龍乱が眼を閉じると、額の真ん中に第三の眼が開眼する
世龍乱の姿が更に陽炎の様に揺らいで見える
諏訪子は強烈な目眩を感じ、倒れてしまう
ヤトが諏訪子を膝枕して涙を流した
「諏訪子、ごめんなさい」
「ヤト …… 貴女のせいじゃ無いのよ?なかないで、お願い。この星を救って?」
全てが止まって感じる
日下部も幕僚長達も、時間が凍結したかの様に微動だにしていない
世龍乱の
まだ日本国内に多数の外国人が残って居るにも関わらず、アメリカ、志那、フランスから同時に多数のICBMが発射された
ロシア、インド、イギリスの艦載巡航核ミサイルも其々発射される
人為では無い
全て世龍乱の権能に依り、勝手に発射されたのだ
但し、目標は日本だけでは無かった
30分後
最初の核爆発が北京を襲う
続けてワシントンDC、モスクワ、パリ、ロンドン、インド洋から中東に至るまで、ヒロシマ型原爆の何千倍もの核爆発が世界を覆い尽くす
12万発にも及ぶ核ミサイルが飛び交い、各国軍事施設、大都市が軒並み消滅するのに2時間も掛からなかった
そうして神へのささやかな反乱は
神の怒りに依り鎮められた
人類の歴史は、人類が自ら為した過ちに依り幕を閉じる
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