第30話 国家と人


 日本の天皇が国体に言及し、国の在り方を変更すると宣言した


 アメリカのみならず、支那、南北朝鮮半島、フランス、オーストラリアは日本の軍国主義復活であるとし、激しく非難して来たが、イギリスのスターマー首相とロシアのプーチン大統領が其れに対し慎重な意見と、環境問題に対して積極的関与を表明する


 また、第二次世界大戦で、日本が「占領支配」した事に為っている東南アジア諸国からも、当時の日本の統治のお陰で、西欧諸国の植民地支配から解放され、真の意味で国家として民族が独立出来たのは日本のお陰であったと主張

 戦勝国に依る戦後のプロパガンダを非難した


 日本に於いてすら、敗戦後GHQ支配に依り「戦争の責任は日本に有る、悪いのは日本である」と言う自虐的歴史教育を強制され続け、今ではその歪められた歴史観が真実であると思い込んだ世代ばかりである


 日本で「戦争」を口にすると、ヒステリックに反戦や平和が唱えられるのは、アメリカに原爆を落とされ民間人に甚大な被害が出たからだ


「原爆」「平和」「戦争反対」は、コミュニストのお題目として80年に渡り日本人の意識に刷り込まれ、その本質や原爆を投下したのはアメリカであると言う事実を忘れさせた


 敢えて言うならば、当時のアメリカは日本に対し「本土決戦」を敢行するだけの継戦能力が無かったのである

 太平洋の日本占領地を攻め落とし、沖縄で多数の民間人を犠牲にしてアメリカ国内では厭戦気分が起こり、更に中立を約束していたソ連が参戦して来たために、早期に戦争を終わらせる必要に迫られて居た


 その結果が核兵器に依る無差別鏖殺である

 アメリカは計7発の原爆と水爆を日本に落とし、米兵の犠牲を出す事無く日本人を殲滅する計画であったが、計画半ばで無条件降伏したのは、その計画を日本へリークしたアメリカ反戦派の情報が裕仁天皇の耳に入り、無辜の臣民の為に降伏を選択したのである

「全ての責任は私( 天皇 )に在る、私自信の命を貴方にお任せする」

 GHQ最高司令官であるマッカーサー元帥との会見で、国民に罪は無く全ての責任を自分が被ると発言した彼に敬服し、それまで「You」と呼んでいたマッカーサーは「Your Majesty陛下」と呼び方を変えたとされる


 原爆を落とし、民間人を虐殺したのはアメリカなのに「その責任は日本に有る」と滅茶苦茶な屁理屈を強制、洗脳し続けて来た訳だ


 徳仁天皇は幼い頃、祖父の側近から真実を聞かされていた

 被害にあった日本人民間人には何の罪も無いのに、何故原爆投下の責任を押し付けられねば為らないのか

 彼は物心ついてから60年間、ずっとその蟠りを抱えて来た


 しかしながら神国日本とは、其れが即軍国主義への懐古を現すものでは無い


 天照大御神のご意思に従い、八百万の神を尊重し、自然を大切にする心に立ち返り、経済優先で振り回される事無く、人間の尊厳を取り戻しましょうと言うのが徳仁天皇の意見であった


 神の御加護在っての人間社会であり、間違いを指摘されたのであれば、素直に正そうと言う、ごく当たり前の話しなのだが、環境問題と経済問題だけに固執し、日本の軍国主義復帰を非難する人々は既に神の存在など、どうでも良くなって居た


 ロシア正教会は、密かにプーチンに「正教会としてはヤトを神とは認める事は無いが、神がお造りに為られた世界を維持するのは、人間の責務である」と進言していた

 ロシアはOPEC+に参加している関係で、化石燃料の価格暴落を防ぎながら、環境問題を解決するリーダーシップを取りたかった


 また、此れを機会に長期化しているウクライナとの領土問題に、留めを刺せるチャンスとする思惑も有る


 産油国の中でもサウジアラビアのムハンマド皇太子やUAEのザイード大統領、クエートやカタールの首長達は、元々石油依存経済の為にパリ協定にも批判的立場であり、何よりイスラム教が天照大御神の存在を許さなかった


 彼等は、たった一週間石油供給が絶たれただけで、日本社会が破綻した事実を槍玉に挙げ、天皇の神国復帰を資本主義を否定するもので在ると糾弾し始める


 もはや誰にも収拾の付かない状況であった


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