第31話 罪と罰
「冗談では無いぞ、原爆もホロコーストも、民間人大虐殺で有る事実に変わりは無い!戦後80年もの永きに渡り日本人を貶め続けただけでは足りないと言うのか!?」
「幕僚長、落ち着いて下さい …… 」
「君は平成産まれだから分からんのだ、私も戦後産まれだが、昭和と言う時代の日本人の変容を身を以て体験した私には、陛下の無念と悔しさが良く解る …… !!」
「ネットの反応が凄い事に為ってますね …… スマホが繋がらない日本人のポストは少ないですが、一部九州や北海道で石油や食糧を海路で調達出来てましたから、あちらでは発電所も通信施設も無事な様です」
関東から関西にかけて、国際ハブ空港と為っていた空域でヤトが暴れたものだから、日本列島の真ん中部分が全滅していた
政治、産業、経済の中枢が機能不全に陥り、治安維持もインフラの維持も出来ず食糧の奪い合いが横行する無法地帯と為っている
「神々のありがたみを忘れ、目先の己の欲望を満たす事のみに囚われる文化に埋没するから、そう為るのだ、自業自得だ」
「徳仁天皇の御言葉を聞いたでしょ?ヤマトの国を、
世龍乱と雷禅が世界の反応に怒りを露わにする
物凄く息苦しく感じるのは、気のせいでは無く、世龍乱が内包しているブラックホールが活性化している影響だった
「お母様、やはり人間の傲慢さは看過出来ません!神罰を与えて然るべきですわ!!」
雷禅が拳を握り立ち上がると、外で激しい落雷が有り、一瞬電気が消えた
ドドオォーーーーーンッッ!!
「きゃあっ!?」
突然の落雷に驚いた諏訪子が蹲ると、ヤトが背中を抱き寄せ護る体勢をとる
「夜刀は相当その人間が気に入った様ね」
「うん、私の初めての信徒だから …… 」
「貴女の信徒に害は与えないけど、ちょっと行って来る!!」
そう言うと、雷禅の姿は雷光と為り、視認する
パシッッ!バリバリバリバリッッ!!
凄まじい雷を伴い、あっという間に視界から消え去った
雷禅が外へ出ると同時に、全ての電気が止まった
駐屯地の発電機も作動しない
そして、2分と経たない内に雷禅が戻って来た
「地球を200周回って全世界を停電させてやったわ!発電所だろうと通信機器だろうと、
電気とは、物質を構成する電子と言う粒子の移動に依り発生するエネルギーの事であり、導体と絶縁体とで流れを制御出来る
雷禅は一瞬で地球全体を回り、電気が発生する仕組みをどうにかしてしまったらしい
「電気運動を止めた …… ?発電も出来ないと言う事ですか?」
「人間は火を起こすところから、やり直せば良いのよ!そうしたら、自然のありがたみが如何に大切か思い出すでしょ?」
人間たちの傲慢に対する神罰――それは、現代社会の命脈である電気を一瞬で断ち切る、残酷なまでの効率性を持っていた
雷禅は腰に手を当て、フフン♪とドヤ顔である
諏訪子はヤトを抱き寄せ膝に乗せる
「雷禅様、そんなに怒らないで下さいませ、人間たちは、ただ怖がっているだけよ。ヤマトの国が急に方針転換しようとして、世界は混乱しているの、戦争の火種は互いの恐怖から生まれるものだわ」
「電子機器が使えないと戦争は出来んな」
「最新の兵器は全て電子制御ですから … 核兵器も、最初の頃の機械式時限信管しか使えませんが、そもそも飛行機が飛ばないでしょうね」
「おい、潜水艦部隊は大丈夫なのか!?」
電気エネルギーが発生する仕組みそのものを停めてしまった為に、全ての電気機器は使用不能と為り、発電所もエンジンも停止、飛行中だった航空機は墜ち、艦船は漂流し、潜水艦は沈むしか無かった
地上から「炎」以外の光が消えた
世龍乱がふぅ、と溜息を吐く
「この期に及んでも、未だ己の都合しか考えられぬか … 貴様等人間は天照大御神様の御力を真似して電気を得ておるな」
「もしかして、原子力発電所の事でしょうか?」
「夜刀がヤマトへ降りて直ぐ、原子炉も反応を得られなく為ったであろう、あれは私の力である」
世龍乱様がとんでも発言を為さってくれる
「核反応を止めたと言うのか?」
「原子炉の原因不明の停止は貴女の仕業か!」
「私の力など、天照大御神様に比べたら微々たる物 …… 天照大御神様がへそを曲げてお隠れに為られたら何とする?」
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