第13話  さて此処から・・・

『コンビニで手に入るんですか?、これ!』

の続きとなります。

m(_ _)m



 北上した日から未だ二ヵ月と経ってないのだが、俺の周りの環境は大きく変わって仕舞ってる、良しに着け悪しきに着け…。


「飯奢りますんで!」

 その一言でファミレスへ、例の新人さんに飯を奢って貰う事に成る、奴が学校とバイトに乗ってる原付の修理の御礼、バイク屋に出せば聖徳太子数枚掛かる内容だが、今回解体屋で部品調達して俺が組み掛った費用は子供の小遣い程度、只、奴がアホな事をしなけりゃもっと安上がりで済んだ筈だと思うんだが。


 嗚呼日本語って難しい…。

 (¯―¯٥)…


 そんな訳で誘いに乗った、此処の処碌な物喰って無いから有難い、少し前迄はシッカリと食事出来てたんで落差が激しい、如何に恵まれた日々だったか良く解る、一期一会で失うと二度と戻っては来ないのに…。


 後悔後に立たずと先人は良く言った物だもう何度目だろう、あの日晴れてりゃ結果も違ったのかもしれないと思って…。


 運ばれて来たハンバーグセット、奴もバイトしてる学生だ奢りとは言え高い物は頼め無いよ、今の俺には十分に御馳走だ、でも俺の眼の前でニヤニヤ笑う奴が居て気味が悪くて飯の味も分からん!。

 普段バイトの時間ギリギリでやって来るのに待合せの時間前に奴は待機してた、俺も遅れぬ様に時間前に到着したんだが、それからずっとニヤニヤしてやがる、料理が運ばれてやっと話し始めたのだが奴の言葉に小躍りしたくなる。


「それ本当か?、車種は判るか?」

「残念ですが既に仕舞われてたんで車種迄は…、乗り出して行く方はデカくてフルカウルの紅い外車だったんですが。」

「其れじゃ何も判らんだろ?」

「そうなんですが社長さんとお客さんの話が聞こえて、下取りに出したのが250の2stらしく過激なのから更に過激なのに替えたなって笑ってたんですよ!」

「嘘だろ?、冗談じゃ無いよな?」

「ホントです!、だからふっ飛んで来たんですよ!」

「判った明日直ぐに見に行こう!」

「判りました、明日先輩のバイト終わったら俺も行きますよ!」

 さてどんなバイクが待っているんだろうか?。


 翌日開店時間に合わせウイングに訪問、だが見渡しても昨日見た時と変わりが無い。

 唯一2st250はMVXで新車何で手が出ない…。


 奥から押し出されて来たのは…

 <ドカッティ900MHR>何でだ?、此はウィングだろ?、HONDA車ならわかるが?。

 (・・?


「あれ社長のバイクです!」

 奴が教えてくれる、社長さんて別のメーカーのバイクに乗ってるんだ。

「昨日の人も同じのに乗って帰りましたけどね…」

 社長さんが奥からもう一台押し出してきた。

 (@_@;)ウソ!


 別のメーカーからはアレと競合するタイプは未だ出たばかり、まさか奴が言ってたのはコレの事か?、そう思いつつ社長さんに声を掛けてみる。

「すいません、此方のバイク売りに出すのですか?」

「良い所に来たね、此昨日入って来たばかりでコレから売りに出す準備をする処だよ!」

 不躾ながら幾らで出す予定なのか聞いてみた。

「32と言いたい処なんだが…」

「32か…」

 厳しいな…、怪我で物入りと寮は賄い付きだったし割高な家賃、貯金切り崩したんで25以内で探してたんだよね、バイトでもう少し貯められた良かったんだが、でもな実際にコレを眼の前にしたんじゃ無理してでも…、其の時少し離れた所に居る奴を社長さんが手招きする。


「友達かい?」

「はい!」

 奴は答えてくれた。

「約束通り友達紹介してくれたんだ!、昨日のバイク探してるって友達かい?」

「そうです!」

 奴は満面の笑顔で答えてくれた、社長さんは俺の後ろに停めたRZを見て…。

「RZを出すのかい?」

「大事なバイク何で増車です!」

 此方を見て問われたが首を振る。

「見せてくれるかな?」

「良いですよ!」

 そう答えると社長さんはRZへ歩み寄る。


 社長さんは優しい顔だが厳しい眼をしてる、俺にバイクの事を教えた呉れた親父さんの様だ、RZの周りを一周しながら暫く見ていたが。

「どこの店で診て貰ってるの?」

「自分で整備してます!」

「ほぅ!自分で?」

 暫く考えて口を開く。

「判った一寸待てってね」

 電卓を弾いて。

「此れでどう?」

 予想していた予算をオーバーしてる、如何しよう…。


「コレ以上金額は下げられないけど、コレに其のメットじゃ似合わないだろ?、其処に出てる中から好きなの付けてあげるよ、約束してくれた通り友達を紹介してくれたからオマケだ!」

 決めた!(๑•̀ㅂ•́)و✧

「解かりました、此れにします!」

「支払いは分割にするかい?」

「現金で!、今手付で10万置いてきますので明日残りを持ってきます!」

「親御さんには相談しなくていいのかい?」

 そう問われた、一人暮らしで故郷は遠い事、バイクに乗る事も賛成して貰ってる事、其れを伝えると必ず連絡して置く事を念押された。

「そうか、心配掛けない様に乗りなさいね!」

 と笑ってくれた。


 翌日残金を清算し登録手続きの書類にサイン、納車は一週間後の大安だ、信じている訳じゃないが良い事は幾つ重なっても良いだろう、悪い事じゃないよね。奴と知り合わなかったら此奴を手に入れる事は出来なかっただろう、店頭に並べば俺が目にする間も無く買い手が付く、この縁もあの人が呼び寄せて呉れたのかも知れないな…。


 不思議な縁が在り此処迄来た、偶々知り合った縁と更に不思議な縁が繋がったからか…、此れから俺はどんな縁と繋がっていくのだろうな…。


 一期一会コンビニで出会い失った縁、新たに繋がった縁、失った時の最後の言葉と表情が脳裏に浮かぶ。


「マー坊!、早くバイク見つかると良いねッ!」

 グズグズに涙で崩れた満面の笑み、俺に向けられた中で一番良い笑顔で気丈に残した最後の言葉…。

 あの時俺は受け止めて呉れる者が居るからそうするのが良いと思った、其れと引換えに繋がった新しいバイクとの出会い、あの人の思いが届いたのだろうか…、そうだと良いな…。


 本当に最後の最後迄弟扱いだったな…。

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