第14話 土曜の夜だぞ!
「いらっしゃいませ!
「いらっしゃいませ」
今日はお客様が多い、然も皆さま購入される品数も多い。
「お預かりします!」
「お待たせしました!」
全力で対応してるがレジの前にお客様が並ばれる、前に並ばれたお客様に奴は対応が追い付か無い。
「お待ちの方此方へ!」
「先輩すんません」
「気にするな、お待たせしました!」
「お待たせしました!」
此のシフト終わらせたらお楽しみが待ってる、自ずと気合も入りヤル気も沸いて来る!。
怒涛の時間を過ぎやっと一息付けたが、如何して此奴は其処から離れられんのだ?。
「今夜もお姉さん来ませんでしたね?」
「だから言ってんだろ、土曜の夜だぞ彼氏の処だって!」
「やっぱりそうなんですか…」
(´;ω;`)ウゥゥ
「まぁそう言う事だな、俺らにゃ高嶺の華だ諦めろ!」
隣で何かブツブツ言ってるが聞き流した、今此の店の深夜のバイトは俺と二人で廻してる、土曜日以外はシフトが被らぬ為俺が休みの日には奴も対応してお顔を見てる、俺は何時も疲れた顔で来店した頃を知っているから判るが、此奴は微笑まれて俺らみたいな底辺バイトの者にも丁寧に接して居られる、そうなってから来店される頃からしか知らないから無理もないよな…。
バイト明ければ俺の第一歩を踏み出せる、先は長いのかもしれないが先ずは第一歩を…。
今日は大安吉日、天気は雲一つ無い快晴、絶好のバイク日和。
奴を後ケツに乗せVF400Fを転がしている、解体屋に行った時にも思ったがバンクする時、ブレーキングする時奴の動きは俺と全く違う、先が読めて居ないのか…、そんな野郎が運転するバイクの後ケツなど死んでも御免被る、俺も命は惜しい…。
程無くショップに到着、今日は愈々待望の納車の日、さてドンナ性格なのかな?。
えっ、どんな性格だって?、今更何言ってんだって?、実は試乗もしてません見た直感だけで決めました、お前試乗もしないでバイクを買ったのかって?、此れ事実です。
惹かれるものが在る、一目見た時に目が離せなく為るそう言う出会い有りませんか?、この時もそうでした、<こいつは俺と相性が良い筈>そう感じたんですが…。
俺の新しい相棒は展示車とは違う場所に置いて在り、磨かれ新車の様に輝いて見えた。
「あれ?」
何でセンタースタンドが無いのにGPマシンの様に直立してるんだ?、不思議に思い近付くと専用スタンドで立たせて有った。
「それもセットだよ、後で取りに来ると良い」
社長さんの声が掛かる。
「自分でメンテするんだろ?、君には御誂え向きだね!」
有難い是ならメンテの幅が広がる!。
「さあ手続きしよう。乗るのはその後だ!」
「ハイッ!」
ショップに入り引き渡し書類にサインと捺印、後補償内容確認して手続きは全て完了。
専用スタンドから下ろし何時もの様にタンクに手を置く。
「今日から宜しくな、俺の夢を叶えてくれ!」
此処から第一歩が始まる瞬間…、緊張してるのか俺?。
「行こう!」
その緊張を振り払うようにキック一発で目覚めるエンジン。
「今から、お前の声を覚えに行くぞ!」
線路に向かう道にフロントを向ける、何時もの場所へ、調子を見る為に何度も通ったあの道へ。
目的地に到着し入念に最終チェックする、白井駅から小室駅の間に邪魔者は居ない、ゆっくり流して一往復す、正直第一印象は余り良くない、此処迄来る間にも感じたのだが…。
<コイツ何だか落ち着きが無い…>
フラフラしてる様な第一印象を受ける、もう一往復する間にも邪魔者は居ない。
三往復目、徐々に速度を上げるがシフトは3速の侭スロットルを開けて行く、エンジン音からもう直ぐ美味しい所に入ると教えてくれる。
躊躇わずフルスロットルを呉れた、線路に沿って掘り込まれた擁壁に劈く此奴の声が響く。
並走していた奴のVFを置き去りにし加速して行く、4速、5速とシフトアップしても加速力が止まらない!、コイツは凄まじい!、奴が言っていた社長さんと此奴を下取りに出した御客との会話で過激なのからって言ってた事に嘘は無い、是なら750とだってタイマン張れる!。
「あの黒いCBX750Fにだって付いて行ける!」
其の時にふと気付く、第一印象と違い嘘の様に落ち着いた手応え、俺の意思通りにまるで路面に張り付いた様に路面をトレースして行く。
「そうか…、御前駆けたくてウズウズしてたんだな・・・」
ただ、ホントに気持ち良く駆け抜けた大きな代償も有った…。
「ほんとにお前大喰らいだな!」
GASスタンドでエアプレーンキャップを開け給油のノズルをタンクに差し入れ燃料入れ乍そう思う、ホントに大喰らいだと…。
俺が購入したのは排気デバイス無しの初期型<RG250Γ>モロに2stの性格そのまんま!、110㎏程の軽い車重が2stのパワーバンド入った時の強烈な加速力、軽さが生む爽快なコーナリングは何時まで経っても忘れられませんね…。
後日専用スタンドを取りに行ったんですが…。
「ほんとに其れで帰るの?」
そう言われたんですが、勿論車を持ってませんのでΓの専用スタンドを背負って帰ったんです、其れもΓに乗って、其れは恥ずかしいったらありゃしない、大食いで貧乏人苛め、タコが振れない範囲ではフラフラし安定性に欠けて乗り手がチョコチョコ世話を焼く、でも回した時には驚く程素直に言う事と聞くんです、ツンデレな性格と言いうか、ジキルとハイドと言ったら良いのか余りに違う二重性格。
でも其れが<Γ>、デバイスが無いので出力の出方が是ぞ2stって感じを身体全身で感じる、面白くて愉しめるバイクでした…。
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