第22話

第22話「夕暮れコンビニ巡り、予想外のハプニング」


──翌日放課後──


教室の時計がチャイムを鳴らすと、俺と夏希は校門前で待ち合わせをしていた。夏希は制服の上にパーカーを羽織り、手には昨日の便箋を大事そうに抱えている。


「ねえ遥、遅いよ」


「ごめん、先生に質問してたら長引いちまって」


「ふーん、先生より私が大事じゃないの?」


からかうように投げキッスをする夏希に、俺は心臓が少し跳ねた。


「それは……まあ、どっちも大切ってことで」


夏希はくすっと笑い、スキップしながら近くのコンビニへ歩き出す。俺も慌てて追いかけた。



店内は放課後の高校生たちで賑わっていた。俺たちはレジ前のイートインでテーブルを確保し、並んで座る。


「じゃあ、改めてお返事書いていい?」


夏希は封筒から新しい便箋を取り出し、真剣な顔でペンを握る。俺はその後ろ姿を見つめながら、本当に嬉しかった。


――だけど、どうしてもふざけた一行を書きたくなる自分がいる。


「……遥くん?」


書きかけの文字を覗かれ、夏希が横目でこちらを見る。


「えっと、その……君のこと、もっと知りたいです、とか?」


「うわ、急にセリフくさくなった!」


夏希が笑いながら頭を振る。俺は慌ててペンを置いた。



そのとき、店員の高校生バイトが駆け寄ってきて、棚の上のパイナップルジュースが俺たちめがけて落ちてきた。


「きゃっ!」


ジュース瓶がテーブルに直撃し、二人とも濡れ鼠に。


「大丈夫?」


俺は濡れた髪を振り払う。夏希は顔を真っ赤にして笑いをこらえていた。


「……ふざけんなよ、本当に青春感満載だな!」


「演出、やりすぎでしょ!」


二人で大笑いしながら、ティッシュで髪や服を拭く。店内の他の客もクスクスと笑っている。



「ごめん、ごめん。私が狙われたみたいだね」


夏希はペンを持ち直して、今度は慎重に書き出した。


「『遥くん、昨日のラブレター、とても嬉しかったです。これからも隣で笑っていてくれたら幸せです』――どう?」


「最高だよ」


俺は彼女の書いた文字を指でなぞり、真剣に頷いた。


「ありがとう、夏希」


夏希は照れくさそうに笑い、俺の頬を軽くつついた。



店を出る頃には、夕焼けが空を朱に染めていた。


「じゃあ、帰ろっか?」


「うん。でも、その前にもう一軒、別のコンビニ寄ってもいい?」


「……またハプニング狙い?」


「違うよ! ただ、お茶飲みたいだけ!」


俺はにやりと笑い、夏希の手を取った。


「いいよ。明日の宿題も一緒にやろうぜ」


「え、宿題……?」


「まあ、コンビニお茶デートのおまけってことで」


夏希は顔を真っ赤にして「もう!」と叫びながらも、俺の腕にぎゅっとしがみついた。


──そんな夕暮れ、二人の距離はキュンと縮まったまま帰路へと続いていく。


──つづく。

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