~迷い猫と迷子の僕たち~

部長が差し出した紙には──

猫……っぽい、猫とは言いきれない“不気味な何か” が描かれていた。

「沙羅ちゃん、これって……!?」

ふふん、と沙羅は胸を張る。


「私が描いたの! 上手でしょ! 飼い主探すならイメージが大事でしょ?」

(いや、普通に写真でいいのでは!? 絶対ただ描きたかっただけだよね!?)


陽太がすぐさま絶賛モードに突入する。

「沙羅ちゃん、天才的だよ。ほんとに猫に見える!」

(いや……“猫っぽい不気味な生き物”にしか見えないけど!?てか陽太、それ褒めてるの?)


沙羅はさらに得意げに髪を揺らして続ける。

「中学の時は“白麗のピカソ”って呼ばれてたのよ! 芸術は爆発なのだ〜!」

「でた! ピカソの名言だ! さすが沙羅ちゃん!」

(いやそれピカソだっけ? しかもなにがどう“さすが”なの?)


陽太が目を輝かせながら言った。

「沙羅ちゃん、白麗中にいたんだ! あそこってお嬢様しか入れないって有名なのに」

「そうよ。私みたいな高貴なお嬢様じゃないとね〜」

(それ自分で言う!?)


「やっぱオーラが違うと思った!」

「でしょ! 陽太くん、さすがわかってる〜」


沙羅は嬉しそうに陽太へ近づく。

その直後、ふと表情が陰り──


「でもね……私を“あんな女”呼ばわりした身の程知らずがいたのよ!」

「えっ、そんなヤツいるわけないだろ! こんな高貴な姫に向かって!」

「だよね〜? 気のせいだよね……ねっ、ユウキくん?」


優しそうな笑顔。だが目は笑っていない。

恐ろしい悪魔のような笑顔。

「き、気のせいだよ……聞き間違いだよ、きっと」


笑顔で返したつもりが、たぶんひきつっていた。

(なんかやっぱり根に持ってる!?)


じわじわと頭痛がしてきた。

早くも迷子になりつつある僕たちを、迷い猫も不安そうに見つめていた。

「みんながいて、きみも心強いよね。目がすごく嬉しそうだよ〜」

そう言って猫の頭を無邪気になでる沙羅。

どうやら猫の飼い主探しは、最初の一歩から暗雲が立ちこめているらしい。

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