第7話 猫とほろ酔いの空

明るく白い建物であるホテルに比べて、寮として案内された建物は、すこし日陰のアパートだった。外観はくすんだベージュ色、あちこちに蔦がのびており、仮住まいなのだからあまり手入れがされていない様子。しかし、建物の中はところどころ木造で、清潔感があった。


私の部屋は相部屋だった。数日後に19歳の女の子がやってくるらしい。そしてその子と一緒に寝泊まりをすると聞いた。

相部屋ってはじめて。

もともと人見知りをする性格なので、普段からあまりパーソナルスペースに他人を入れることがなかった。

でも、個室か相部屋かを選ぶことはできない。だから、そこは割り切らないと。

私よりも若い子が来るのだから、親切な自分でいられるといいな。


寮の外は、湿った石垣が多い。

そして石垣の周辺には、猫が・・・いま見えるだけで3匹も佇んでいる。

茶とらの猫、白と黒の猫、そして白だけの猫。

どの子も、近寄るとさっと逃げてゆくけれど、適度な距離のところで歩みを止めてこちらを見ている。

猫たちは、私とそういう距離をとる。そして猫同士でもそういう距離をとる。

他者との距離感を、ちゃんとわきまえているんだな。

時々、人との距離が分からなくなる私より、猫たちの方がはるかに賢いわけ。


荷物を置いた後、外へ。共有スペースであるロビーには、自動販売機がひとつ。

中にはお茶2種、ジュース1種、ビール2種、あとは様々な種類の缶チューハイばかりが目立つ。

ウォッカベースで果物風味の、アルコール度数が10パーセント以上のやつ。

ほんのり甘いが、度数が高いのですぐに酔っぱらうやつ。

これらの需要が多いというのは、どういうことだろう?

お酒が好きな若い子が多い、ということかな。


猫を追いかけ、缶の緑茶を片手に外へでると、空は綺麗な夕焼けが見えていた。

まばゆい茜色、華やかな薄紫色、そして山の端に沈む金色の太陽。

金色に大きく染まる海・・・これは、お酒など無くたってほろ酔いになれる。

毎日、これを見て過ごせるなんて、幸せな日々となるに違いない。

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