間装 『ステータスってなんじゃらhoy?』

無事五層へと降りたコハクとアルマ、そして後ろから興味本位で着いてくる男たち。


「多分だがアイツら、オーク狙いだ。感じるオーラから、そう推測するぜ?」

「やっぱわかるのか、流石ロウタ。魔力探知が上手いなほんとに。」


(丸聞こえなんじゃがな、お主らの会話。魔力探知なぞ、ワシは常日頃発動してるからのォ!)


アルマは背後を伺いながらも、危険性の無い男たちの様子が気になるようだ。




「きっとレアスキルとか持ってるんだろうな、っていうか威名アマラはなんなんだろう!気になるよ。」

「アマ……ラ?なんだっけそれ。」

「はァ?お……お前中学校の時習っただろ?」

「やっべど忘れした!別に普段見ねえからわかんねえよ!」


アフロの男はにへへ〜と笑って鉄剣持ちの男の肩を叩く。見る限りかなり能天気な性格…………コハクみたいに。


やれやれと言った感じで腰に手を当てると、シャキッとした顔立ちでアフロ男の前を歩きステータス画面を見せる。



「ならっばァ仕方ないなァ?俺がステータスについて1から説明してあげようではないかァァァ!!!」

「出たよ…………リューゼンの解説癖。別に聞いてねえs……」

「ではまず上の欄から行ってみようゥ!!!」


どこからか取り出した赤いメガネをすちゃっとかけ、解説者のような姿に変身する。



(な……なんじゃこいつら…………声がデカすぎるじゃろて…………

まあワシもステータスについては調べてなかったし、せっかくじゃ。盗聴してやるの!)


アルマは魔力探知と同時に粘体変化を活かして腕の後ろ側にこっそり耳を生成、リューゼンとロウタの話を聞くことにした。




「そもそもだ、ステータス魔法を作ったのは誰か!答えろロウタァ!」

「え!?……っと、バ……バチカン市国であります!!!」

「よろシィィィ!正解ダァ。では初めてスキルを使ったのは誰だァ!!!」

「えーっと……えー…………三元星オリオンです!!!」

「そーうだそうだ、正解だァ!今から60年前ェ、世界各地に同時にダンジョンが出現。第一次大魔大戦と呼ばれ、世界中で10億人の死者が出ることになった忌々しい戦い。その際我が日本國の三人の学生がスキルを発現、世界初民間で魔物を倒した実績を叩き出したのだァァァ!!!」



もはやコハクも耳を塞ぐほどに後ろで騒ぎ立てるリューゼンとロウタ、ものすごい熱意で解説するので耳をそばだてずとも理解させられてしまう。



(しかし、そんなに恐ろしい事件が起こったのにも関わらずその元凶を産業利用し逆にものにしてしまうとは…………なんとも強い生き物だな、ニンゲンは。)


アルマは意外にも興味が湧き、さらに解説を聞くことにした。



「まあ歴史の内容はこの辺にして、本題!ステータスについて解説してやろうゥゥゥ!まずは名前ネーム、文字通り名を表している。俺たち人間のように戸籍登録されている奴はその名前が出されるが、それ以外の動物……そして魔物は個体名が出るんだ。」


リューゼンによるとこの名前ネームは改ざんが可能らしく、国際スパイ……中国やソ連などの工作員がよく偽るのだとか。


とはいえだいたいの者はステータス魔法を弄ることは不可能に近い。己の魔力を偽り、情報を乱すほどの魔力制御術が必要になるのだとか。だから各国の秘密諜報機関で若いころから『育成』され、探索者ネザランナー企業コーポの中に潜入する訓練を受けている。


(なんとも哀れじゃのう、国のために己の身分を偽るなんて。とても正気の人間の思考ではない。)



「お次に威名アマラ、これは要するにである!」

「異名~?ってことはニックネームってことか!『スーパーヒーロー』とか『剣士』とか?」


ロウタは納得したように首を縦に振りながら見解を話す。

が、リューゼンはキィっと引っぱたき肩をぐっと持つ!



「違ァう!これはそんな簡単なものではないィ!」

「え?でも異名って……」

「この威名アマラはなァ、人々からの『無意識的客観評価』……いわゆる印象を読み取り自動的に決められるんだ。そう、まさに『真名』ッ!!!」

「あ……あぇ???…………って待てよ。ていうことはさ俺の威名アマラの『能天気』って、皆が俺の事そう思ってるからってことか!?」



ロウタはがっくしと膝を付き悲しみのオーラがどわっと体から溢れる。なんとも可哀そうな奴だ、流石に同情してやらねばならない。


まあそういうことなら、コハクの『武装者』という威名アマラの説明は…………



「まあ印象以外にも、持ってるスキルやランク。社会的に認められてたり偉業を成し遂げたりしても威名アマラは書き換えられるそうだッ。お前のそのバカな威名アマラも、いつかカッコよくなるかもな!」

「エー。」

「まあそうがっかりするな、お前ももしかすればあの六人のS級のようにかっこいいヤツが貰えるかもしれんぞッ。」



(S級……確かランクの最上位、世界に十数人しかいないとされる探索者ネザランナーの頂点に立つ者達か。)


ロウタはハッと閃いた顔になり、ポーチの中を漁り出す。



「俺さ俺さ、お守りで持ってるんだよ。探索者ネザランナーマジックメモリ!」

「お前ッ!…………実は俺も持ってるんだ。」


少し照れるリューゼンとニコニコ笑うロウタ、それぞれカードをステータス画面に写し出し大きく表示する。


探索者ネザランナーマジックメモリとはどうやら、コレクションアイテムの一種類らしい。テレビで見たことある顔や武器、アイテムが描かれている。二人の様子を見ると今の流行らしい。



「おお~、赫星パックか。フーリンにキザシ……メイデンのキラ(虹色に輝くレアなカード)!?」

「ああ、俺はファイブロ推しなんだ。特に最近入ったあの…………ああそうだ!せっかく威名アマラの話をしてたんだッ、我が日本を支える六人の英雄について話してやろうッ!」


リューゼンは表示されたカードを絞り、六つのパネルを映し出す。

顔の見える者や見えない者、いろいろ入り混じっている。が、画面が小さくてあまり顔が見えない。



「おいコハク、S級じゃぞS級!ワシらがこれから先超えるべき壁じゃ!!!」

「あー……そうだな。」


やけにそっけない態度を取るコハクに首をかしげるが聞き逃すまいと耳に意識を向ける。



「まずは『二枚刃』、藍野瀬ミサ。赫星所属の期待の。つい三か月前に高校を卒業したばっかの18歳の女の子だァ。」

「あれだろ?の名人で超回転しながら火と水、の行術を使う。さらに他人を『治療』できるスキル持ってんだろ?攻撃アタック治癒ヒール、もう何でもありだな!」



二人はあっぱれと言いたくなるほど笑いながらその『二枚刃』の能力を嬉しそうに話す。まるで歴史上の偉人の伝説を話すかのように、先輩の武勇伝を語る後輩たちの様に。


敵わない相手と理解した上での笑い、既に格の違いが丸見えであった。



(…………え、つっよ!つんんんんんよォォォ!?!?!?いきなりなんじゃそのバケモノ!!!二刀流の二種属性のダブルラウンダーじゃと!??その転生してチート貰った異世界人みたいな設定はガチか、ガチなのか!??)



「ココココハクゥ…………一人目からやばいのォ、ヤバすぎるのォ!!!」

「ああ……確かにやべえよアイツは。運動神経も抜群に良いし、コミュ力も高い。何よりおpppp…………ス、スタイルが良い。今じゃテレビでニュースにならない日がないぐらいの売れっ子探索者ネザランナーだよ。」


何やら少々怒っているようだ。やはり格上の話題は一般peopleにとっては毒になってしまうらしい。


やけに詳しい情報に怪しむアルマだったが、話の続きが気になってしまう。



「あとは…………ってお前!コモンカードしか無いじゃないかッ!顔が見えないッ!!!」

「しゃーねえだろ、S級って全員プレミア付くぐらいレアだし高いんだよ!ミサちゃんのカードだって朝イチで箱買いしてようやくだぜ?」

「ンン……まあいい。後は簡単に説明すると…………


天邪鬼な若き風神、その捩れは悪を討つ。『いろはかざみ』


冷酷なる孤高の女傑、その目に映るは狂気か闘志か。『霙帝クライオジェニカ


豪快、そしてド派手なダイ・オオサカの頭領。『ナンバの雷神』


悪竜をも断ち、天変地異を斬った隻腕の武人。『竜断ち』」



顔は黒塗りでイメージ画像しか出ていない。

能力も語られず、ましてや一行程度の紹介。


にも関わらず。



〝圧倒的な力量〟〝絶対的な覇者の器〟〝王のように溢れ出すオーラ〟



「そして…………世界最初のS級にして、この國の魔物侵攻に終止符を討った男。

『剛腕』────己の拳一つで頂点へ上り詰めた、史上最強の探索者ネザランナーだ。」



ガクガク震えるアルマを引き離すように、やけに速足で下へと降りていくコハク。

その顔は少し強張り焦りが見えるが…………


「へぇ……剛腕か…………」

「ん、知っておるのか?」



アルマは上ずった声でコハクに聞くが、首を横に振る。

その顔はどこか恐れと憧れが混じったような奇妙な雰囲気であったが────



「俺も……いつか…………」


ほんのちょっぴりだけ、笑みが溢れていたのだった。

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