∅
藤咲 あんず
【一部復元】野外学習 : 404 Not Found
記録データ : 野外学習 : 404
ステータス:破損
再生しますか?
> はい
→ > はい
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日常
... .- ..-. .
高校の野外学習、バスに乗り込む子どもたち。
遊びや屋台、宿泊施設や食事の話に花を咲かせ、バス内には明るく元気な声が響いていた。
「コテージってどんなところだろうね」
「どんなとこだろう!楽しみ〜!!」
「俺もう腹減ったー お昼まであと何時間?」
「腹減るのはやすぎだろまだ11時前だぞ笑」
「それなー笑 あと2時間くらいじゃねぇの?」
みんな他愛もない話で笑いあい、この何気ない日常がずっと続くと信じて疑わなかった。
異変
--- -- . -.
降車した途端、生暖かい風が肌を撫で、じわりと汗が滲む。
だが、真夏とは思えない程に涼しかった。
空は一面の雲に覆われ、太陽の気配はまるでなく、海も息を殺すかのように沈黙していた。
だが、これからの楽しみに心奪われた子どもたちは、その異様な静けさに気付かなかった。
元々貸切にしているため、他の人の気配は感じないが、先生が下見の時には沢山通っていた車も、ほとんど見当たらない。
「まぁ、平日の11時ならこんなもんか。」
先生の口から紡がれた声は、風に乗って消えた。
気を取り直して先生達は子どもたちに男女別室の待合室に荷物を置くように指示した。
欠壊
-... .-. . .- -.-. ....
「今から着替えて泳ぐぞ 」と言う時だった。
男子の待合室に、2匹のムカデが現れた。
まだ潜んでいる危険性を考慮し、着替えを中断。
男子を女子の待合室に集め、男子待合室に危険がないかを確認する。
着替えの前に御手洗を済ませ、待合室に戻る私。
例に漏れず心躍る私は、後方から音もなく迫ってくる1人の女に気が付く訳がなかった。
自分のスペースに戻ると、後方からのクラスメイトの悲鳴が聞こえた。
何事かと振り返ると、海側の扉から不気味にくすんだ肌をした1人の女が、扉を開けようとしていた。
皆口々に悲鳴をあげ、腰を抜かす。
程なくして扉は破壊され、生暖かい風が部屋を駆ける。
クラスメイトのひとりが掴まれそうになった時、震えながらも男の先生が女ゾンビを引き付け、部屋から離れていく。
安心したのもつかの間。
今度は反対側、扉の10メートル先のトラロープ
のさらに奥、崩れた壁の穴から、2体の男のゾンビが迫ってきていた。
「全員、すぐに動けるようにしておけ。」
体育の先生が、低く唸るような声で、トラロープの奥を睨みながら言う。
その間にも着実に迫るゾンビに、先生は近くにあったボロボロのビニール傘を掴み、何度も何度も傘を振り下ろす。
だが、ゾンビは呻き声すらあげず、無言で腕を伸ばしてくる。
「逃げろっ!!!」 誰かが叫んだ。
誰が叫んだかなと、どうでもよかった。
パニックになったクラスメイトたちが、我先に部屋から飛び出していく。
私は先生に応戦し、持っていたノートの角でゾンビの頭を目掛けて渾身の力で殴りつける。
鈍い音とともに、ゾンビが一瞬動きを止めた。
だが、それだけだった。
ふらつきながらこちらに手を伸ばしてくる。
(なに…なんなの?!この生き物は何?なんで倒れないの!? )
怖い。
力が足りない。
でも止まれない。
止まったら自分が自分で無くなる気がする。
そう思った。
だから、何も考えずにただただ殴り続けた。
断絶
. -.. .. ... -.-. --- -. -. . -.-. - .. --- -.
幾度も殴るが、ノート1冊で太刀打ちなんてできるわけがなかった。
ボロボロになったノートを投げ捨て、バインダーを手に取る。
殴りつける度に痛みが襲うが、歯を食いしばって力任せに殴り続ける。
やっとのことでバリケードを作り一息ついた瞬間、背後に不穏な気配を感じた。
「っ…!」息を飲み、バインダーを構えなおすと、女のクラスメイトと目が合った。
彼女は、冷たい声で
「あんたのおかげで生き残れそう あとはひとりで頑張って」と吐き捨て、走り去っていった。
私は彼女に底知れぬ恐怖を感じ、先生は唖然としていた。
どのくらい時間が経ったのだろう。
ついにバリケードが壊され、ハッと我に返る。
バインダーを構えた私に、先生が怒鳴った。
「みんな逃げたぞ!こいつらが増える前に、水とスマホ持って逃げろ!今すぐ!」
私は、自分の非力さと未知への恐怖、何より助けられないことの悔しさに、泣きながら携帯と財布、飴やグミ、タオルや水を入れた水色の圧縮袋を掴んだ。
走り出そうとした後方で、先生の短い悲鳴と最後のバリケードが破壊される音が聞こえた。
振り返って応戦したい気持ちを、血のにじむ拳を握りしめて抑え、静かに泣きながらあてもなく海辺を走る。
残響
. -.-. .... ---
あてもなく海辺を走って、どのくらいだろう。
遠くに小さな小屋を見つけた。
もしかしたら、
まだ生きてる人がいるかもしれない。
そんな淡い期待を抱いて、足早に向かう。
小屋に着く頃には太陽は沈みかけていた。
朝とはうって変わり、雲ひとつない空に真っ赤に染まる太陽と、光を反射してキラキラと輝く海が、この上ないほどに美しかった。
小屋には誰も居なかった。
安全を確認して扉の鍵を閉め、窓はカーテンを締切る。
私はクラスメイトにすら気づかれないように、電気を付けなかった。
スマホのライトを最小で付け、光が漏れないように小屋を物色する。
幸いなことに持っていたモバイルバッテリーと、小屋に残されていたアダプターの端子が一致したので、充電をしながら小屋の角に腰掛ける。
そのまま水色の圧縮袋を手に取り、野外学習前に友達と買ったお菓子を取り出す。
暗い中、それがグミなのか飴なのも分からないまま口に放り込む。
(あ〜あ、こんな時でもお腹空くんだ…。人間ってめんどくさいなぁ。みんな無事かな どこにいるんだろう。)
そう思った矢先、携帯が震えた。
これだけ時間が経ったのにも関わらず、誰一人として連絡を取りあっていないクラスラインのグループトークに、見知らぬ名前「UNKNOWN」が追加されていることに気付いて、無意識に背筋が伸びる。
震える指先で画面を開くと、そこには───。
-. . .- .-.
意味がわかった瞬間、背筋に氷が走った。
∅ 藤咲 あんず @Miha_03
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