第7話 俺様ゼノンは高3になる

俺様は球場外でスバルを待った。

「帰るぞ。スバル。」

「ほんとに俺と住む気か。ゼノン。」

「そうだ。俺様が決めた。

俺様が決めたことは現実になる。

言っただろう。

俺様はこの地球上では神だ。」

「そうだったな。」

スバルの鋭い目が俺様を見る。

2人の間に激しい電磁波が。

スバルが、おれる

「まあいい。

夏の地区予選敗退。

俺の夏の野球は終わった。

明日からはただの高3。受験生だ。」

「スバル。その野球というのはおまえにとって

そんなに大切だったものなのか?」

「まあーな。ゼノン、お前にはわからないさ。

お前は地球人じゃない。

ブラックホール星人だろう。」

俺様は嫌な気持ちになった。

常に優等生。全宇宙のどの星も一目おく。

劣等感など感じたことがなかった。

胸の中に黒モヤモヤが。なんだこれは。」

「ゼノン。その顔。それがお前にとっては、

はじめましての経験だ。

2者選択。勝つものがいれば負ける者がいる。

それとは別にもう一つの感情。それがさっきの野球の試合で負けた時の涙だ。

ゼノン、俺と一緒に住んでそのもう一つの感情をお前は持つことができるのか。楽しみだな。」

「スバル。お前は本当に生意気だ。

この地球はすべてこのゼノン様の手の中にある。

つぶすのは簡単だが。スバル、お前の挑発に乗ってやろう。」

「そっか。じゃ、行くぞ。」

そして俺様はスバルと電車に乗り、歩きスバルの自宅についた。

典型的な古い家の造りだ。日本家屋だ。

玄関前で俺様はスバルに関する記憶と時間を書き換えた。

ただ一つ弾かれた。「なんだ。」

設定はこうだ。

スバルとは、いとこ同士。親の仕事の都合でスバルの家に住むことになった。

今は夏休み。あと1週間後には高校新学期が始まる。そのタイミングに合わせて転校生として学校に行く。

すべてのプランは俺様が立てた。完璧だ。

「ゼノン。着いたぞ。」

「ああ。」

「ただいま。」

「お帰り。スバル。」

スバルの祖母だろうか。玄関で声をかける。

「その子は?」

「今日から一緒に住むことになった。

ゼノンだ。頼んだ。紫。」

「あい、承知した。」

「そこの地球外生命体の少年。」

「ゼノンだ。」

「こら、目上の女性にはもっと丁寧にあいさつしなければいかんぞ。ゼノン。」

『さっきの魔法で弾かれたのはこのことか。』

「そうだ。」

「しまった。脳内を読まれた。スバルと同じだ。何者だ。」

「ハハハ。ただの美しき地球人の老婆だよ。

ハハハ。

名前は紫。スバルの祖母さ。

スバルに両親はいない。

ブラックホール星人のゼノン。

ようこそわが家へ。」

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