3話 概要説明回
六年目。
この二年間ずっと隣に居たアイテール君が居なくて、落ち着かない。
プリン
お休みになっても、何処かに出掛ける事は無いのだろうな、とアイテール君に貰った首飾りを握り締めた。
胸が痛くなって、これが寂しいってことかな?と思った。
去年はアイテール君と海に行ったりしたお休み。
今回は、ちょっと変わった場所でお手伝いをすることにした。
小さい子たちが集まって過ごしてるところで、お父さんやお母さんがいない子もいる施設。
赤ちゃんもいたけど、私がお世話できるのはおむつ替えくらい。
おチビさん達のごはんを用意したり、お漏らしを片づけたり、遊んだりしてると、思ってたよりずっと可愛い。
五才のラトレースという男の子が懐いてくれている。
七日目、ラトレースのお迎えに来たブルーナ君と云う男の子に会った。
私より四つ年上で、ラトレースのお兄さん。
………この人、ガラスの板にいた。
濃い茶色の髪に亜麻色の瞳。
お休み中毎日施設に通っていたら、ブルーナ君も毎日お迎えに来た。
最後の日に、
「何で学校なんて行ってるの?」
と訊かれた。
ブルーナ君は初等義務の一年だけしか学校に行っておらず、お家の煙突掃除屋さんを手伝っている。
「お勉強したいからだよ」
て言ったら、
「明日から会えないじゃん…」
と亜麻色の石をくれた。
「川で拾って綺麗だったから」
って。
「どうして、私にくれるの?」
「いつか、大人になったらお嫁さんになって欲しい」
って。
あれ?でも、私。
「でも、私ね、婚約者がいるよ。これ、貰えない」
て、石を返そうとしたら、
「いいから持ってて」
て、受け取ってくれなかった。
「婚約者がいるのに何で休み中ずっと施設で働いていたの?」
「消えちゃったの。どっかいっちゃった」
「え?えっー…と。その人の事、好きなの?」
ブルーナ君が狼狽してる。
「分かんない。でも、お姫様にしてくれるって言ってくれたから」
「……そう」
そう言って、別れた。
亜麻色の石は小さな巾着を作ってお財布に入れた。
明日からソメロ
いっぱい勉強した所為か、『経済』と、『行儀』『作法』てお勉強が増えてた。
『経済』は他に三人の男の子と一緒だけど、『行儀』と『作法』は私だけだ。
『行儀』と『作法』はイリィン先生て女性の先生。
女性の先生が居たんだなって思った。
いっぱい勉強した。
次のお休みでは、ラクワトロさんの食堂を手伝った。
寮での食事当番より本格的だ。
ラクワトロさんが『料理』を教えてくれた。
学校じゃなくても、何かを教えて貰えるのだと思った。
七日目、お客さんのフラウヴァさんという大人の人に会った。
緑っぽい黒髪で、琥珀色の瞳。
出会ってから毎日お店に来てくれた。
仲良くなったけど、特に何もなかった。
また会えると良いねって別れた。
ビント
『経済』と『行儀』を勉強したからですよ、イリィン先生に言われた。
学校のお祭りなのに、フラウヴァさんが来た。
次の期間から『歴史』を教える先生になるんだって。
私には『歴史』のお勉強はないので、少しがっかりしたら、教えますよと言ってくれた。
次のお休みには、変わったことがやりたいなと思って大工さんのお手伝いをした。
釘を打ったり、鋸を挽いたりとかは出来ないけど、片付けとお掃除を頑張った。
棟梁のラシンコさんから、うちに働きに来いって言って貰えた。
七年目、修学の年になった。
あれ?修学したら何かなかったっけ?
プリン
本当は六年目のビント
『芸術』のお勉強が増えて忙しいかな?と思ったけど、折角なので生徒会に入ることにした。
なので、プリン
お勉強の数が増えたし、生徒会の事も覚えなきゃだしで、毎日遅くまで学校に居た。
遅くなるとフラウヴァ先生が寮まで送ってくれる。
他の子も一緒の時が多いけど、時々二人きりの時もある。
『歴史』を教えてくれたり、星空を教えてくれたりした。
寮の当番が免除になっていた。
今度のお休みには何をしようかなーと思っていたら、フラウヴァ先生から海に行きませんか?と誘われた。
海!
海?何かあったっけ?
首飾りの蒼い石が熱を持って、ちりっと胸を刺した。
ああ、そうだ。
アイテール君。
どこにいるんだろう?
マルドのデツンブロの町の海に行った。
海のある町は、何処の街でもデツンブロの町だ。
今回は、メルクリオス商会が運営している鉄道で移動した。
もくもくと煙を出して走る、初めて乗る汽車の大きさに圧倒される。
メルクリオスさん
汽車から見える景色が、車から見る景色とは一味違って楽しかった。
フラウヴァ先生が、琥珀色の石の髪飾りをくれた。
その髪飾りをつけてデツンブロの町をフラウヴァさんと探索してたら、港の漁師さんの中に、アイテール君がいた。
私を見て酷く驚いていたけれど、声を掛けずにはいられなかった。
「どうしていなくなっちゃったの?」
って訊き乍ら泣いてた。
「ごめんね。でも、きっと迎えに行くから」
と、言ってくれた。
私は何も答えられなかった。
帰りの汽車の中で、フラウヴァ先生は何だかご機嫌斜め。
「あの子は誰?」
と訊かれたので、
「婚約者のアイテール君です」
と答えた。
「……そう」
って言ったっきり、何も話してくれなくなった。
帰りの汽車は楽しくなかった。
アウツ
ルウザ君は橙の髪に石榴色の瞳。
装飾をしたり、使うものを準備したり、校庭のお掃除をして運動の会を迎えた。
運動は好きじゃ無かったら、アウツ
フラウヴァ先生の代わりに、ルウザ君と生徒会の皆で一緒に帰るようになった。
同じ寮だし。
そのまま、皆で夕飯を取って生徒会のお話をしたり、お友達のお話をしたり、お勉強のお話をしたりした。
「お休みの時三日だけお時間を貰えませんか?」
と、ルウザ君から訊かれた。
う~ん。三日か。
お仕事をするなら三十日しなきゃ駄目なんだけどな。
けど、まあ色々お世話になったし、たまにはお休みの時にお休みするのもいいかなあと思って、
「いいですよ、何をするんですか?」
と訊いた。
「テルルの町に行きたいんだ」
テルルは、まあるい地表の真ん中の町だ。
どの街にも属していない。
マルトロの町の三つ隣の町。
テルルの町には自動車で行く。
六時間位掛かるって。
この間は端っこの町で、今度は真ん中の町に行くんだなーと思った。
テルルの町は新しい建物がいっぱいだ。
何でも、十年ほど前嵐に見舞われたらしい。
「その嵐の時、町中の建物は壊れてしまって、メルクリオスさんの援助で新しい建物が建ったんだ」
メルクリオスさん
「でも、嵐って?絵本の中の出来事じゃないの?」
「そうだよね。当時も誰も知らないことで大変だったらしいよ」
………絵本の中だけの事が、起こることがあるんだ……何かが引っ掛かる。
「で、この町で何をするの?」
「ここはね、ボクの産まれた町。君に見せたかったんだ」
と、町を抜けた広い丘に連れて来られた。
マルトロの町と違って、少し背の高い建物が並ぶ町並み。
石榴色の石の付いた腕輪を貰った。
「でもね…」
「知ってるよ。アイテール君だろう?君たちはとても仲が良かったからね」
そうか、ルウザ君はずっと同じ級だった。
私の目に入っていなかっだけ。
貰った腕輪を着け、胸の前で抱き締めたら、首飾りが熱をもち胸を刺す。
「どうすればいいのか、私には分からない」
ルウザ君は頭を撫で、髪飾りを直してくれた。
「ゆっくり考えるといいよ。急がなくていい」
でも、これくらいは許してねと、瞼に口付けた。
残りのお休みは、お家の事をした。
久し振りのお手伝いに母さんが喜んでくれた。
「お料理が上手になったわね」
と言われて嬉しかった。
ビント
いろんな事があったなー。
今回のお祭りの会はお休みして、ルウザ君と学校を見て回った。
フラウヴァ先生はイリィン先生と仲良くしてた。
ルウザ君はテルルの町に帰って行った。
「一緒に来てくれないかな?」
って訊かれたけど母さんたちと離れたくないって言った。
「……そう」
って言われてお別れした。
学校が終わった。
『芸術』のお勉強をしたので、美術館に勤める事が出来た。
責任者のプルプゥラさんは、金髪で菫色の瞳。
ああ。
……コノヒトモミタキガスル………
……マタ……
何だか面倒臭くなっていた。
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