第2話 義兄の1日

「兄さんは私に勉強を教えるか、私を癒すかしてください」


「勉強を、教えさせてもらおう。範囲は?」


「生物の予習で…、ここの酸素解離曲線に関する計算を教えてください」


「わかった」


自らのベッドという名の聖域から降りて机の前にちょこんの正座している美亜の教科書を指さしながら説明していった。


飲み込みが超早かったので結局20分もかからずに理解してしまった。


「やっぱり義兄さんは頭がいいですね…、これからも教えてください」


「頭は良くないよ…。でも出来る限り教えるよ」


実際のところテストは毎回したから60番程度。360人中だから全然下から数えた方が早い。そんな自分を賢いと褒めてくれ、そして頭がいいという発言に対して否定されて頰を少しだけ膨らませてる美亜に対して少し苦笑いしてしまった。


「ところで義兄さん…、今日、来てましたよね?」


「あちゃ…バレたか」


「はい、見えてました。そして勝手にどこか行くのも見てました」


「それは申し訳ない…。入学おめでと、美亜」


「…!ありがとうございます」


おめでとうの言葉に目を輝かせている美亜を見て、しっぽをブンブンと降る犬と少し重なって見えた。


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翌日の始業式、長い校長の話を寝ないように必死に耐え教室で戻る途中。


「おはよ、春休みはどうだった?」


声をかけてきたメガネの男子。学校で一番仲の良い友人、親友の西井春馬だ。真面目だけどトーク力がかなり高い。ちなみにお互いにお互い以外のまともな友人は存在しない。


「いやあ…、寝て起きてゲームのループ。もうね、逆に疲れた」


「この後余計に疲れるのに大丈夫なの?」


「ニヤニヤしながらいうなよ。なんで始業式の日に授業あるんだよ、他にもやることあるだろ」


「仕方ないよ、来年には受験。それに今年は文化祭に加えて修学旅行。もう頑張るしかないでしょ!」


「がんばりたくね〜…」


「前も言ってたし…、それに英語赤点でギリギリ進級できたくらいなんだし少しは頑張りなよ…」


「だってさ〜、ゲームとは言わないけど寝たり自分のしたいことしたいじゃん」


「後々困るよ…。ていうかさっきから廊下、正確には下の階うるさい気がするんだけど」


「後で見に行くか〜」


「だね〜、先生来るまでに一戦しとく?」


「やるか〜」


西井は真面目なタイプではある。だがそれ以上に何事も楽しむタイプ。一番無駄を嫌うタイプなのでこうして待ち時間、授業の時間外遊ぶのは日常だ。

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