第4話 戦闘準備

 アヤさんが強すぎて、あっという間にゴブリンのスケルトンが十体に増えた。

 そして……。


「イタタ! 頭の上のスケルトンが落ちそうになって髪の毛引っ張ってるんですが」

「いやぁ、想定外でしたね! 小さすぎて歩くスピードについて来れないとは思いませんでした」


 チョコチョコと一生懸命に走って着いてくるチビスケルトンは可愛いんだけど、いかんせん歩幅が小さい。


 ステータスも低いから、おっそいおっそい。

 結果、両方に二体、頭に一体を二人とも乗せて移動する事になった。


〈コレ、明日からどうすんの?〉


「大丈夫です! 対策はもう考えてます! 明日までには用意出来ます!」

 おーさすがプロだ。


「でも、こんなんで本当にやっていけるのかな……」

「大丈夫ですよ! 次は武器揃えましょ! アルケミストとクラフトマンを組み合わせるとダンジョン内でモンスター素材にして色々作成出来るようになります! 便利なのに何でみんなしないんでしょうね」


〈意味ないからだよ! ダンジョンの外で専用の工房で作った方が同じ素材でも良いもの作れるのに、わざわざ劣化版作る必要ねぇだろ〉

〈そんな事より、アルケミストとクラフトマンまで修得させたのか?〉

〈おいおい、レベル上げさせる気ねぇだろ〉


「アルケミストもクラフトマンも戦闘ジョブじゃないんで、必要経験値少なくて済むんですぅ!」


〈少ないっていったって、戦闘職の半分以上はかかるだろ、それを二個だから、余裕でレベルあげるのに倍の経験値必要だぞ?〉


「いっぱいモンスター居たら、いっぱい武器必要になるんだから、自分で作れた方が良いでしょうが!」


〈言われてみればそうか、今でもクリエイトモンスターの制限数一体に対して十体だから、この先増えると、どんどん武器必要になるもんな〉

〈それでも、ネクロマンサーは他のクリエイト系と違ってレベル五まで制限数増えないぞ〉

〈しょせんビジネスよ、あの女は金儲けの権化〉

〈それより、どんな装備持たせる気だ? ステータスオール1じゃゴブリンだって倒せないだろ〉


「ふっふっふ、じゃじゃーん! どーくーやーくー」

 なんか、アヤさんが青い未来のロボットみたいな口調になった。

 あ、そういえば外見も……いや、何でもない。


〈おいおいおい、採算が合わないどころじゃねぇじゃねぇか!〉

〈ゴブリンに毒薬使うとか、どこの金持ちの道楽だよ!〉


「レベルが上がるまでよ! レベルが上がって普通にダメージ通るようになったらもう使わないわよ!」


〈毒薬使うにしたって、相手にダメージ与えるくらい傷つけないと体内に毒薬入らないだろ?〉


「そこも考えてるわよ! あ、ちょうどゴブリン居た! アレ使って武器作りましょ」

「は、はい」

 相変わらずアヤさんは、ササっと移動して一撃でゴブリンを倒してくる。


「ここで作るのは『クレインクインクロスボウ』です!」

「???」


〈オッサンフリーズしてるじゃねぁかwww〉

〈巻き上げ装置付きクロスボウの事だよ〉

〈考えたな! クロスボウならステータスとか関係ないし、巻き上げ式なら最低値の1のクロスボウでも充分ダメージ与えられるな〉

〈ざっくり四倍だったか、ダメージ〉


 珍しくアヤさんの案が褒められてる。


〈作るならコンパウンド型にした方が良いな〉


「コンパウンド?」


〈滑車付きクロスボウだな〉

〈滑車の原理でさらにダメージ上がるぞ〉

〈てか、知識無しで作るの無理だから、今は普通の作って原理だけでも勉強してから作り直した方が良いな〉


 なるほど、タメになるなぁ。

 早速、クレインクインクロスボウを作……。


「あのう……サイズってこれに合わせる事出来るんですかね?」

 チビスケルトンを見ながら質問する。


〈やってみないと誰も分からないよ〉

〈デカくするのには追加素材いるけど、小さくする分には問題なかったはず〉


「じゃあ、作ってみます」

 ……

 ……

 ……

「出来た!」


〈オモチャ感が凄いな……〉

〈もう、こういうシリーズのオモチャの人形にしか見えん〉

〈アクションフィギュア・骨骨ボーン〉

〈全部骨じゃねーか〉


「とりあえず、通用するか試しましょう」

 しばらく探索してゴブリンを発見する。


「よし! あのゴブリンで試しましょ!」

「あのう……矢が無いんですが……」


「あ!」

 アヤさんも、すっかり忘れてたらしい。

 俺も今の今まで気づかなかったんだから、責められないけど。

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