第9話
七月中旬。夏休みを目前に控えたある日、俺は華蓮を花火大会に誘った。
「え、花火大会!?行く行く!陽介と一緒に行きたい!」
俺の誘いに、華蓮は満面の笑みで答えた。その屈託のない笑顔に、俺の心は温かくなる。だが、その笑顔の奥に、どこか甘い期待が隠されていることを、俺は知っていた。
そして花火大会当日。浴衣姿の華蓮は、いつもとは違う、どこか艶っぽい雰囲気を纏っていた。茶色のボブヘアはアップにまとめられ、うなじが露わになっている。C65のバストを包む浴衣は、彼女の健康的な色気を感じさせた。
「どう?陽介。この浴衣、似合うかな?」
そう言って、はにかむように俺に微笑みかける華蓮に、俺は思わず息をのんだ。
「ああ、すごく似合ってる。綺麗だ」
俺の言葉に、華蓮は顔を赤くして俯いた。
俺たちは、たくさんの人で賑わう会場を歩いた。屋台から漂ってくる香ばしい匂い、行き交う人々の熱気、そして、華蓮の甘いシャンプーの香りが、俺の五感を刺激する。
人混みの中、俺は華蓮が他の男子に目を奪われるのではないかと、少し不安になった。だが、華蓮は、ずっと俺の隣を離れなかった。人混みに紛れ、俺の腕に絡みつく華蓮の手が、俺の心を温かくする。
打ち上げ花火が始まり、空に色とりどりの花が咲き乱れる。大輪の花火が打ち上げられるたび、華蓮は、無邪気な笑顔で俺を見上げる。その瞳は、花火の光を映して、キラキラと輝いている。
「ねえ、陽介。あのね……」
華蓮の声が、俺の耳元で囁かれる。
「陽介と、もっと一緒にいたいな。二人きりで」
その言葉に、俺の心臓がドクリと大きく脈打った。華蓮の純粋な恋心が、今、俺に、もっと深い関係を求めている。
花火大会が終わり、帰りの電車の中。
人混みはまだ続いていたが、俺たちの周りだけ、時間が止まっているかのように静かだった。華蓮は、俺の腕にしがみつくようにして、俺に寄り添っている。
「ねえ、陽介。あのね……私、陽介のこと、大好き」
華蓮の声が、俺の耳元で囁かれる。俺は、華蓮の頭を、優しく撫でた。
「ああ。俺も、華蓮が大好きだ」
俺の言葉に、華蓮は、俺の腕の中で、もっと強く、俺の身体を抱きしめた。
俺の決意が、今、華蓮の心を、どう揺さぶっていくのか。
そして、俺の心は、どこへと向かっていくのか。
夏休み直前の夜が、俺と華蓮の、新しい関係の始まりとなる。
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