22 豚伯爵は学園生活を楽しむ

「おはよう、ガロンくん」


 ミリエラは俺の側に立つと、そっと耳打ちした。


「あたしの初めてを奪った責任、忘れてないよね?」

「……あれは治療行為だろ」

「ふふ。あたしにとっては大切な思い出よ。だから、他の女にうつつを抜かさないでね?」


 ミリエラの瞳が妖しく光る。


「なんか【魔眼】使ってないか?」

「まさか」


 微笑むミリエラ。


「でも体がゾワゾワするんだが……ちゅるんっ」


 試しに『食って』みた。


 ぴろりーん!


「やっぱり使ってるじゃねーか!」


 俺は思わず大声でツッコんだ。


「あら、君にはそれがあったわね。簡単にバレちゃうか」


 ミリエラがペロリと舌を出す。


「……ミリエラ先輩、さっきからガロン様にべったりですね」


 ラフィーナが反対側から体を寄せてきた。


「そう? あたしにとっては普通の距離感よ」

「そうは見えませんけど」


 マナハがずいっと身を乗り出した。


「まさか、ガロン様が好き……とか?」


 ラフィーナが顔を赤らめながら、俺とミリエラを交互に見た。


「あら、気になる?」


 ミリエラが微笑む。


「いや、そこは否定しないのかよ」


 思わずツッコむ俺。


「否定してほしかったの? つれないわね」


 ミリエラはクスクスと笑っている。


 まったく……どこまでが本心なんだか、読めない女だ。


「むむ……ガロン様、やっぱりモテモテですね」


 ラフィーナが妙に険しい表情になった。


「君こそ、ガロンくんが好きなの? ヤキモチ焼いてるわけ?」


 今度はミリエラがラフィーナにたずねる。


「わ、私は……っ」


 たちまちラフィーナの顔が赤らんだ。


「その……親善試合では、素敵でした……」

「そりゃ、どうも」


 恥ずかしそうに言ったラフィーナに、俺は軽く礼を言った。


「それと……その、ミリエラ先輩とガロン様が、く、口づけをしたとき……なんだか胸がざわざわして……」

「それヤキモチじゃん」


 マナハが即座に言った。


「……ったく」


 言いながら、マナハがチラチラと俺を見る。


「……あたしだって、胸がざわざわしてるからなぁ……」


 などと、つぶやくのを俺は聞き逃さなかった。


 もしかして、これはハーレムの萌芽……なのか?


 いや、さすがにそれは都合がよすぎるか。


 ただ、俺の周囲の状況が急激に好転しているのは確かだろう。


 このまま誰からも好かれるバラ色の学園生活になってくれれば、万々歳だった。


 ともあれ、破滅エンドを回避し、その先にある幸せな学園生活を目指して――俺は邁進することを誓った。


 これからも食べて、食べて、食べまくりながら――。






●読んでくださった方へ、応援のお願いです


現在GAコンテストに参加中です! 読者選考を突破するためには『作品のフォロー』や★の数が非常に重要になります。

作品のトップページからフォローやページ下部の☆☆☆をポチっと押して★★★にしていただけると、とても嬉しいです。


※スマホアプリの場合、小説のトップページの『レビュー』タブを押すと、☆☆☆が出てくるので、これをポチッと押して★★★にしてもらえると嬉しいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る