3 暴食スキルの真価
「なんだと……?」
チンピラ貴族のリーダー格が、俺の言葉に眉をひそめた。
「豚のくせに、俺たちに勝てるとでも思っているのか?」
「くくく……お前たちがこれから味わうのは、圧倒的な敗北の味だ。せいぜいしっかり噛みしめるんだな」
俺は不敵に笑ってみせた。
……まあ、半分くらいはハッタリだけど。
「この豚が……!」
リーダー格の男子生徒が俺をにらんだ。
「身の程ってモンを教えてやるよ! 【ディーファイア】!」
こいつはゲーム本編でも登場する中級火炎魔法だ。
ちなみに『ディー』は『破壊(Desutoroi)』の頭文字から命名されたらしい。
これ豆知識な。
「うおっ!?」
俺は思わず身をひるがえして避けようとした。
が、デブの体はとにかく動きが鈍い。
避けきれずに肩をかすめられた。
「あっちぃぃぃぃっ!」
苦鳴を上げる俺。
「はははっ、どうした豚伯爵! 全然だめじゃねーか!」
「さっきのデカい口はどうした! そら、【ディーサンダー】!」
今度は中級雷撃魔法だ。
またまた避けきれずに、俺は痺れるような苦痛を味わう羽目になった。
「うううう……」
ダメージで地面を這いつくばる俺。
もう立ち上がれない――ほぼ瞬殺といってよかった。
ステータスが少し上がったくらいでは、どうにもならない差があるってことか……。
俺は打ちひしがれた。
元のガロンは、魔法学園に通っているくせに初級魔法しか使えない劣等生だった。
対して、彼らが今放ったのは中級魔法。
威力が段違いだ。
勝てるわけがない。
「なんだよ、こいつ! はははは、口だけかよ!」
「豚はしょせん豚だな。餌だけ食ってりゃいいんだよ!」
彼らがニヤニヤ笑いながら、俺を取り囲む。
「とどめだ、豚。これに懲りて二度と俺たちに逆らうなよ――【サンダーランス】!」
別の男が手をかざし、雷撃魔法を放った。
中級魔法【サンダーランス】。
生み出された雷の槍がまっすぐ向かって来る。
避けられないし、これ以上食らったら無様に気絶するだけだろう。
駄目だ、一方的にやられるのか。
悔しいな。
前世でも今世でも、俺はこんな役回りなのかよ――。
負けて、虐げられて。
虐げられて、負けて。
そんな底辺の人生。
生まれ変わっても、結局俺はまた――。
「――違うっっっっ!」
俺はキッと顔を上げて叫んだ。
まだだ。
まだ、終わりじゃない。
何かまだ――手はあるはずだ。
そう、俺にはスキルがある。
『食う』ことでステータスが上がる【
もし……もしも、このスキルが食べ物以外にも適用されるとしたら?
例えば――。
魔法、そのものを。
「……食えるんじゃないか?」
根拠はない。
ただの直感だ。
けれど、今の俺はそれに賭けてみるしかない。
「――いただきますっ!」
俺は迫りくる雷の槍に向かって、大きく口を開けた。
衝撃や痛みはなかった。
ちゅるんっ。
そんな感じで雷撃が俺の口の中を通り、体内に吸収される。
ぴろりーん!
脳内に効果音が響き、目の前におなじみのウィンドウが現れた。
『スキル【
『中級攻撃魔法【サンダーランス】を食したことで、これを獲得しました』
『魔力値が0.05上昇しました』
「なっ……!?」
チンピラ貴族たちは信じられないといった様子で固まっている。
「なんだこいつ……」
「魔法を食った、だと……!?」
「ふふ、ごちそうさま」
俺は口の端をペロリと舐めた。
「なかなかスパイシーで刺激的な味だったぞ」
「き、貴様……いったい何を――!?」
「何って……お前たちの魔法を、ちょっと味見させてもらっただけだが?」
俺はニヤリと笑い、チンピラの一人に向かって右手を突き出した。
俺が獲得したという魔法攻撃を、さっそく試してみるか。
「【サンダーランス】!」
先ほどの雷の槍を放つ。
本来なら俺には使えないはずの中級魔法だ。
しかも、おそらくその威力はさっき『食った』ものと同威力――。
「ぐあっ……!」
不意を突かれた男は避けきれず、雷撃によってダウンした。
「な、なんでこいつが中級魔法を――!?」
「いきなり強くなった……!?」
他の男子生徒たちがうろたえている。
俺の魔力自体は、こいつらよりかなり下だ。
その俺が彼らと同じ威力の魔法を撃つことができた。
これは推測だけど、魔法を『食った』場合、その魔法をそのまま撃ち出せるんじゃないだろうか。
一発だけ撃てるのか、それとも何発でも撃てるのかは分からない。
ただ、ここはハッタリを利かせて優位に立っておこう。
「さあ、いくらでも撃ってこい。俺も同じようなやつを撃たせてもらう――何発でもな」
「ぐっ……」
残った男子生徒たちは明らかにうろたえていた。
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