第一章5 橋上での奮戦【前編】

「んで、誰の車で行くんですか?鶴谷団長」


「もちろん、俺のハチロク」


「マジかよ……」


 不安と不満混じりで悪態つく。藍色のジーパンと緑色のジャケットを身にまとっている。緩めのパーマがぼさついてたのか、帽子をかぶってる。鋭くも丸み帯びた目つきしてる。齢二六くらいの中性的な美青年の中野碧なかの あおい


 彼にとっての懸念は、鶴谷修也の運転は荒っぽくて。所々、怖々しいから挙句の果てに事故って死ぬのなんか、もっての他ごめんだったから。できるなら、乗りたくない。


「安心しな。碧、今日は私もいるんだし。荒っぽい運転したら。止めるから」


「なら、いいですけども。」


「信用ないな……」


 当たり前だ。と返す二人に、鶴谷修也はしょんぼりと気を落としながら。運転席に座り、助手席の椅子を下ろし、中野 碧を乗せ、月宮遥を助手席に乗せて発進する




 △▼△▼△▼△




 鶴谷修也は、運転しながら。月宮 遥に、どこの場所に落ち合うか?と聞き出す。月宮遥は、スマホで地図を広げて場所を調べると、月宮遥は思わず「は?」とカナタ・ハリスが指定した場所と住所を調べても。どこも間違いがなかった。


「え、どこなん?何処へ迎えと?」


「……遊園地」


「おけ、遊園地。」


「「遊園地!?」」


 鶴谷修也も中野碧も月宮遥と同じリアクションになる。その遊園地の場所は東京都 文京区 東京ドームシティ アトラクションズという。大人も子供も楽しめるアトラクション揃いの所、休日のカップルや家族連れもいるような非日常を楽しんでる人達のところで?三人は疑問にもなった

 いったいカナタ・ハリスは何を企んでるんだ?となった


「デートしに行くんじゃねぇのに……てか、今日平日?」


「いや、今日は休日よ。他の民間人だっているのに。」


「休日出勤か。そういや、忘れてたわ……トホホ」


「仕方ないですよ。俺らは、LASですよ。いつ、ソナリアンがテロ行為を止めないと行けないんですから」


 その通り、ソナリアンの動きは予想ができない神出鬼没だから。常にアルマスとLASは見張ってなきゃ行けない。もし仮に、目を離してしまえば。その分、関係ない人達が巻き込まれてしまう。


 それだけは、絶対阻止しないといけない。




 △▼△▼△▼△




 多少、渋滞を経験しながらも。ハチロクを駐車場に駐車をすることが出来。そのまま入場をする。


 入場すると結構な人だかりで、迷子になりかけそうになる。もしかしたら、それが狙いでここを選んだのか?と思えた。家族連れやカップル連れや友人らでの旅行とかの大人数の人だかりを利用し目立ちにくくなるのかもしれない。


「そりゃ、目立たないわな。」


「えぇ、こんな人だかりじゃ。私たちの存在を見つけようが無いものね、」


「そういや、団長。どこで合流する感じなんですか?」


「あぁ、そういや、観覧車か?」


「そうらしいね。だって、画像で送られたし」


 月宮 遥はスマホで送られた、東京ドームシティのシンボルである。観覧車の写真を二人に見せる。静止した観覧車の風景の端に、黒のラメ入りネイルでピースしてる手だけ写ってたので。きっといや、絶対ここにいるがわかったから。全員、観覧車の方にむかう。


 ラクーアゾーンに観覧車があり。その場所まで、敵が居ないか注視しながらエスカレーターで目的地に向かう。


「なんだかんだ、初めてなんよな。ここ」


「うん、私も」


「実は、自分も」


 まさかの、ここにいる三人が来たこと無かった。なんともまぁ、初の東京ドームシティアトラクションが任務とは悲しい話だこと。


 鶴谷主役の場合は、そもそも来る機会がなかったのと行こうと思った時に戦争になってしまったという悲しい話。月宮 遥は、フランスで暮らしていたことと。外人部隊で任務とかもあって来れなかった。中野碧も、月宮 遥と似たような理由で来る機会もなければ体験する経験もなかった。


 三人は、理由を思い出して悲しくなって思わずため息が出る。遊園地という明るく楽しむ場所なのに。暗い空気になって、エレベーターに上がっていた。近くに見ていた子供も(なんで、こんな楽しいところでお兄さんとお姉さん達はしょんぼりしてるんだ?)って思われて当是の始末。




 △▼△▼△▼△




 観覧車はゆっくりと回転しながら、訪れる人々に都会を見下ろす視点を与えていた。昼間はガラス越しに広がる街並みを映し、夜にはネオンや車の灯りが星のように広がるような光景が拝見できる。


 そして、観覧車の背景に似合うような人が休憩スペースの小さな噴水近くでベンチに腰をかけながら、時計で時間の確認をしながら誰かを待っている。


 ベンチを下ろした彼は、ただ静かに観覧車を見上げていた。特別に目立つ仕草をしてる訳ではないのに、その整った顔立ちと落ち着いた雰囲気で、カップル連れとかの男女も思わず視線を引き寄せられていた。


「もう、そろそろね。」


 彼は、三人の姿を認識し。ベンチから立ち上がり3人の名前を呼び、笑顔で手を振って呼び寄せる


「あっ、修くん〜ハルちゃーん〜葵くん〜。こっちこっち〜」


 背丈が一七七とまあまあ高いからか。結構目立ち、名前を呼ばれた三人も小っ恥ずかしので、そそくさと彼の元へ向かう。彼は、ニコニコしながら。キタキタと笑顔で迎える。


「やめてくれ、カナタさん。流石に恥ずかしいわ」


「あら、ごめんごめん。居たから着い呼んじゃったのよ」


 彼が、カナタ・ハリスというLASの唯一の諜報員。色白で男性であるにも女性よりで綺麗な顔立ち特に目元も優しげな水色のタレ目で中性的な印象で長めの髪を後ろで結び肩にかけている。淡い色のブラウスに細身のパンツを着こなしているため、男性なのに、女性っぽい。


 

 月宮 遥は、カナタ・ハリスの脚元にキャリーケースが置かれているのを気づき。聞き出す、ベンチの側に置かれているスーツケースはあまりにも大きかった。約:九六L以上の大きさだった。この大きさだと小柄な人なら入れそうなくらいの大きさだった。とはいえ、流石に人は入ってないだろうと。思ったため、キャリーケースの中身はあえて触れないようにする


「とりあえず、カナタさん。採用したい子って何処にいるの?」


「あぁ、それは。基地でのお楽しみ。」


「なんじゃ、そりゃ」


 カナタはウインクしながら。小さく笑って唇に人差し指を当てる。


「それはそうと。このスーツケース大事に扱って頂戴ね。これが、きっかけの一つだから」


「へいへい。」

 キャリーケースを持ち運ぶと。鶴谷も思わず、鈍い声で「おっも……」って口に出して言ってしまう。


「何が、入ってんだよ……。スパコンか?いや、にしては小さいか」


「まぁ、結構頑丈に作られてるしね。ライフル弾も簡単に通らないわよ!」


「すげぇ……」


 観覧車やジェットコースターとかのアトラクションで盛り上がっている人達を影に彼らの動きに視線を追ってる者が、休憩スペースで置かれてる噴水の後ろににいた。


「ターゲット確認……人数…です」


『了解…動向を監視し。我々が、対処する。動向を頼む』


「了解」


 しかし、四人は気づかない。何せ、自分も一般人として紛れてるのに対し、相手も同じく一般人として紛れてたから。顔も格好も分からないのだから。




 △▼△▼△▼△




 レイボーブリッジ、東京湾にかかる大きな白い吊り橋。昼は白い橋として、夜はイルミネーションとして七色の光に輝く橋に変わる。


 四人は、基地への帰りとしてレインボーブリッジを公道として利用してた。


「……任務じゃなかったら。遊んでたな」


「そうね…。任務じゃなかったら……」


「任務……」


「「「はぁ……」」」


 三人は、東京ドームシティアトラクションの初めてがまさかの任務の合流地点として利用だったため。そそくさとアトラクションを利用することなく。基地へと帰る感じになり。三人は、少しはアトラクションを楽しみたかったなと寂しいと感じ、ついため息が出てしまった


「まぁまぁ、次は休みの時にメンバーで行きましょ。ね?」


「いつ休みが来るのやら……」


 渋滞にハマってしまい。基地に戻るのにも時間がかかりそうと思い。運転してる側からしたら、早くどうにかして欲しいからか。イライラしながら、渋滞にハマる


「チッ……、前どうなってんだよ……」


「イライラしないの」


「分かってるけども」


 渋滞にハマってる最中、レインボーブリッジ上空から低くうねるようなローター音が上空を飛んでいた。鶴谷修也は、車のルームミラーでその正体が見えた。黒いヘリが上空で飛んでいたのだ。



「なんだ?」


「ん?……黒いヘリ?」


「いや、にしては結構低く飛んでるな?」


「碧くん、装備を……」


 あまりにも、不審な動きをする。ヘリコプターに警戒し。中野碧は鶴谷修也がいざっと言う時に後部座席に置いておいた。前にいる、二人に装備を渡す。


 ヘリが、少し近付いてきた。そして、機種がわかるくらいに見えてきた。ミサイルとかの武装は付いてなかったが機銃だけは付いていた。そして、左右に搭乗してる武装してる定員がいた。二人は、軍用ヘリ【リトルバード】とわかった。そして、それを扱ってる輩も含めて理解した。ソナリアンの襲撃だとーー


ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ


 リトルバードの搭載してる機銃が止まってる車を無差別に乱射する。フロントガラスが砕け、車が炎を上げて横転し、破片が歩行者の間を飛びかかる。


 機銃の射撃音と空薬莢が落ちる金属が落ちていく。車の大破や炎上で橋上は絶叫と轟音、炎と金属の破片が渦巻く戦場と化した。

 民間人が阿鼻叫喚で逃げていく姿が、敵にとっての合図となる。


 戦闘となった橋上で、停車してる大型トラックの荷台から。出てくるのが見えた、顔をフルフェイスのマスクで覆って正体が分からないが、ソナリアンの私兵部隊だろう。

 手にはカスタムされたAR、腰にはグロック。防弾ベストにマガジンポーチ、無線機と小型のバックパック。と潤沢された装備をした。敵兵士達がゾロゾロ出てくる。ざっと数えて三〇人以上だろう。そして、ヘリから、登場してた。定員も合流し、総勢34人と大人数で橋を占拠し。戦場で混乱してる民間人たちを無差別に攻撃をし始めた。


「まずい!!降りるぞ!!」


「私は、民間人の避難誘導する。」


「私も手伝うわ。この中で、戦闘は上手く役に立てないから」


「わかった。碧は、俺と戦闘頼む。あと、LAS本部に連絡とアルマスの警備兵に連絡を!」


「了解!!」


 四人は、車から降り。月宮遥とカナタ・ハリスは、混乱した民間人達の避難誘導を優先させる。鶴谷と碧は、ソナリアンの対処をする。

「おっと!忘れ物」

 九六L以上のキャリーケースを滑らせてカナタ・ハリスに渡そうと思ったが、ここは今や激戦区。銃弾が飛び交うからか。鶴谷修也は咄嗟に、キャリーケースを盾に使ってしまう。キャリーケースに被弾はしたが、中身までの貫通はしなかったのが何より頑丈な証拠である。


「ちょっと!!、それ大事なもの入ってるのよ!」


「わりぃ、わりぃここは任せた!!」

 鶴谷修也は、キャリーケースを滑らせて渡し。カナタ・ハリスは、急いで遥の避難誘導に加担する。

 とはいえ。はっきり言って、無謀に近い。月宮 遥と無事合流できても三対三四という多勢に無勢なのだから。


 鶴谷修也は、フロントタイヤに隠れながら。中野 碧がLASに緊急要請とアルマス直属の警備兵への派遣を要請を任せたため。敵の攻撃を守るために、援護をする。敵が近づいてたところ。顔を隠しながら、ライフルだけを向けて、連射する。いわゆる、ゲリラ撃ちで牽制を測る。


「一…二の三!!!」


 近づいてきた敵にグレネードを投げ込んだり。弾が無くなればリロードをと。敵を制圧に至らなかった。いや、それでいいのだ。元々それが狙いなのだから、敵を近づかせなければ良いのだから。


 中野 碧は、車のリアタイヤに隠れながら。万が一の時に備えて置いた緊急要請の発信器を押し込む。遠く離れたLAS本部基地に、けたたましいブザーが鳴り響く。同時に、橋上の鶴谷たちの正確なGPS位置が自動で送信されるようになってるため。迷いなく、出動が可能になった。


 そして、中野碧はアルマスに連絡を入れる。警備兵の派遣を要請をする。


「こちら、アルマス戦闘部隊LASの中野碧。いま、レインボーブリッジにてソナリアンとの交戦中!直ちに、警備兵を求む!!。繰り返す!!レインボーブリッジにて交戦中。直ちに、警備兵を求む!」


 アルマスからの連絡内容は芳しくなかった。その内容があまりにも酷いものだったから。その内容に、碧も怒りで無線機を握り潰しそうになり。通信を切る


「団長!!。警備兵四〇名が来ます!」


「そして、時間は?」


「……四五分です!」


「……こんなところ、五分も持たねぇ!!!二分行けていい具合だ!!」


「……団長!RPG!!!」


 敵が、RPG-7ロケットランチャーを肩に担ぎ、鶴谷達に狙いを定め、ロケットが一直線に飛びかう。中野碧が、RPGの存在に気づいた事が項をなし。さらに、後ろへ後退し車体の影で身を隠していた車が爆発と轟音で浮き横転してしまう。


「ちくしょう、うちのハチロクを傷つけやがって。」


「団長、マガジンの方は?」


「あと、次でラストだ。」


「芳しくないですね。」


「日本の警察組織は何してんだよ!」


 LASの二人がかりという。微力ながら必死で守るさなか。遠く橋の入口付近に黒塗りの輸送車が止まる。日本の警察組織特殊部隊【S.A.B.T】が遅れて参る。総勢一○名程度であるが。居ないより良い


「来るのに遅れた!!私は、S.A.B.Tの隊長だ。あんたらは、アルマスの人間だな?」


「あぁ、そんなもんだ!とりあえず、避難誘導はできたか?」


「バッチリだ。とりあえず、反撃だ。」


 橋上での厳しい戦いが、なんとか僅かながらの変化が見えた。遠くから駆けつけてきた【S.A.B.T】と誘導を終えた遥と合流に成功する。これにより、一三対三四。それでも、数では劣勢の中であったが。流石と言わんばかりの特殊部隊の精鋭、動きに無駄が無く着々と制圧に成功していく。斜辺物からの射撃、グレネードでの応戦していく。


【S.A.B.T】の隊員の大半は、最前線での戦闘経験者がぞろぞろ居た。それが、皮肉にもこの戦闘に役に立っている。


 しかし、ソナリアンも無策ではなかった。ヘリの応戦もあるのだから、機銃で隊員を一掃をかかり。装備の差も有り、警察側の六名が次々と倒れていく。

 運良く、ヘリの機銃の弾が切れたのか戦場から引いていく。


 安堵したのも束の間、橋上の戦闘が膠着していく中、空から低い轟音が近づいた。夕暮れになっていく空を切り裂く影ーー敵側の航空機がこちらへ接近していく。


 地上での、戦闘だけでも圧倒的な数差、その上に空からのヘリが終えたかと思えば。航空機という、一難去ってまた一難という。


 鶴谷は、絶望と怒りが混み合う。ここは、日本なのだ。戦闘ヘリを民間で持ち込むなんて持っての他、増しては、航空機だ。こんなの、警察側の監視の甘さが出て怒りが勝る。鶴谷修也は激情し【S.A.B.T】の隊長の胸倉を掴みだす。


「なんで、お前ら警察組織がいながら。あんなの許した!!!」


「そんなの、知るわけが無いだろ!」


「知らねぇとはなんだ!!あんな航空機で自分で自分の首を締めてるんだぞ!!!また、日本を戦争に巻き込むのか!!!」


「違う!!我らとて、管理してる。ただ、視察した上の人間は、『問題無し』と報告されたんだぞ!」


「は?」


「団長!航空機が!!」


 鶴谷修也が隊長と仲間割れになりそうな所で、航空機が近づいてきた。機種がわかった。軽攻撃機【OV-10】だ。

 今度こそは、「死ぬ……」いや、死にたくない。終わりたくない、まだ終われない。

「来るな、来るな、来るな!!」

 心の叫びが思わず、口に出てしまった。しかし、その葛藤の声も爆音でかき消される。


 ここで、鶴谷達の命運が尽きる…と思った矢先、しかし運命は鶴谷達に味方した。


 近づいてきた。航空機が爆発したのだ。爆発音で、鶴谷達は、反射的に屈み身を守る。奇跡と思った、機銃で痛みなく殺されると思った。だが、生きている。

 あまりにも、幸運であった。その幸運を与えた人物が声を発する


『待たせたな!ヒヨッコども!!』


 空のさらに上空に、輸送機のようなプロペラ機のような見た目のガンシップが空を占拠していた。そして、LASのシンボルである"狼"のマークがついてる。

 声の正体もわかった。LASのメカニックを担当してる。"赤羽 隼人"であった。


「本当に、美味しいとこ持っていくよ……」


『今、悪い子いたな』


「いや、ありがとう。助かったよ!!」


 赤羽隼人の助け舟により。航空機の脅威が去っていた瞬間、全身の緊張が一気に抜けていき。鶴谷修也は膝から崩れる。まだ戦ってるのに、ほんの一瞬ーー生き延びた実感が、彼を地面に押し付けた。

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