手作りカレーと温かい記憶

「よし、今日はみんなの好きなカレーを作ってやる!リリィも手伝ってくれるか?」


レオの提案に、リリィは嬉しそうに手を叩いた。


「はーい!お手伝いするのじゃ!」


キッチンに移動すると、レオとリリィが中心になってカレー作りが始まった。レオが野菜を切り、リリィが小さな手で一生懸命にルーをかき混ぜる。


「リリィ、火加減気をつけろよ〜。焦がしちゃダメだぞ」


「大丈夫なのじゃ!私、お料理覚えたのじゃ!」


リリィは真剣な表情で木べらを動かしている。その姿があまりにも可愛らしくて、みんな思わず微笑んでしまう。


他のメンバーも自然と手伝いに入った。カイロスは皿を並べ、メリサは食材費を計算し、エリカは優雅にテーブルセッティング、リューナは香辛料の調合を手伝う。


「家族みんなでお料理なんて、貴族時代には経験できませんでしたわ」


エリカが感慨深げに呟く。


「計算では測れない価値があるわね、こういう時間」


メリサも手帳を閉じて、料理に集中している。


「俺様も、こんな温かい時間は初めてだ。竜王族は一人で何でもしなければならなかったからな」


カイロスも嬉しそうに皿を並べている。


「族長時代は一人で全部やってたからな...みんなでやると楽しいものだ」


リューナも笑顔で香辛料を調合している。


そんな中、リリィが突然手を止めた。


「あれ?なんだか...」


「どうした?」


レオが心配すると、リリィは首をかしげた。


「なんだかこの感じ、どこかで...でも思い出せないのじゃ」


一時間ほどして、ついにカレーが完成した。【料理スキル】のおかげで、プロ顔負けの美味しそうなカレーができあがった。


「よし!完成だ!みんな、お疲れさん!」


「やったのじゃ〜!美味しそうなカレーができたのじゃ!」


リリィは嬉しそうに飛び跳ねている。


テーブルに着いて、みんなで「いただきます!」の声を合わせた。そして、リリィが最初の一口を食べた瞬間...


「...!」


突然、リリィの目に涙がぽろぽろと流れ始めた。


「リリィ!?どうした、辛すぎたか?」


レオが慌てて立ち上がると、リリィは首を振った。


「違うのじゃ...辛くないのじゃ...でも...でも...」


涙は止まらない。しかし、それは悲しみの涙ではなかった。


「温かい...とっても温かいのじゃ...」


リリィは泣きながら、みんなの顔を見回した。


「お腹が温かいんじゃなくて...心が温かいのじゃ...」


「リリィ...」


カイロスが優しく声をかける。


「記憶は...まだ戻らないけど...でも、これが一番大切なことなのじゃ!」


リリィは涙を拭いながら、笑顔で続けた。


「みんなと一緒にお料理して、一緒に食べて...心がぽかぽかするのじゃ。記憶がなくても、みんながいれば大丈夫なのじゃ!」


その言葉に、一同も胸が熱くなった。


「そうだ。記憶なんて戻らなくても、俺たちはずっと家族だからな」


レオが力強く言うと、他のメンバーも頷いた。


「過去より未来よ。私たちと一緒に新しい思い出を作りましょう」


メリサが優しく微笑む。


「リリィちゃんは、私たちの大切な妹ですわ。それだけで十分ですの」


エリカも涙ぐみながら言った。


「記憶を失っても、お前の優しい心は変わらない。それが一番大切だ」


リューナも温かい眼差しでリリィを見つめる。


「家族に過去は関係ない。今、ここにいることが全てだ」


カイロスも竜王としての威厳を込めて断言した。


リリィは涙を拭いて、みんなを見回した。


「みんな...ありがとうなのじゃ。私、もう不安じゃないのじゃ」


「本当か?」


レオが確認すると、リリィは力強く頷いた。


「うん!記憶がなくても、みんなと一緒にいれば、毎日新しい楽しい思い出ができるのじゃ。過去を探すより、みんなと未来を作る方がずっと楽しいのじゃ!」


その明るい笑顔に、全員が安堵の表情を浮かべた。


「それじゃあ、改めて乾杯だ!『リリィの記憶回復大作戦』は失敗したけど、『リリィの笑顔回復大作戦』は大成功だ!」


レオがコップを掲げると、みんなも続いた。


「乾杯〜!」




温かい夜


夜になり、リリィは満足そうにベッドに向かった。


「今日はとっても楽しかったのじゃ。みんな、ありがとうなのじゃ」


部屋に入る前に振り返り、にっこりと笑った。


「記憶は戻らなかったけど、今日新しい思い出がいっぱいできたのじゃ。記憶より、今の家族が大切なのじゃ!」


「おやすみ、リリィ」


「良い夢見ろよ」


「また明日、一緒に遊びましょうね」


みんなに見送られて、リリィは自分の部屋に入っていった。


リリィが部屋に入った後、廊下でみんなが小声で話している。


「記憶回復作戦は失敗だったけど、なんか成功した気分だな」


レオがしみじみと言う。


「ああ。リリィの笑顔が見れただけで十分だ。それに、俺たちも改めて家族の絆を確認できた」


カイロスも満足そうだ。


「あの子の幸せは計算不可能な価値があるわね。今日の出費は...まあ、プライスレスということで」


メリサも珍しく計算を放棄している。


「記憶なんかより、今の家族が一番ですわ。私も貴族時代には味わえなかった温かさを感じましたの」


エリカも心から言った。


「過去を追うより、未来を作る方が大切だ。リリィはそれを教えてくれた」


リューナも深く頷いた。


「よし、明日からまた借金返済頑張るぞ!リリィのためにも、みんなのためにも!」


レオが拳を握ると、みんなも応えた。


「おー!」


一方、自分の部屋に入ったリリィは、窓から月を見上げていた。


「お月様...私の記憶は戻らなかったけど、今日とっても幸せだったのじゃ」


リリィは小さくつぶやく。


「みんなが私のことを大切に思ってくれて...私も、みんなのことが大好きなのじゃ」


そして、ベッドに入りながら続けた。


「記憶がなくても、みんなと一緒なら毎日が新しい冒険なのじゃ。明日はどんな楽しいことが待ってるかな?」


リリィは幸せそうに目を閉じた。今日という日が、彼女にとって最高の思い出になったことは間違いない。


月明かりに照らされたレオネス荘。今日も借金まみれの異世界転移者たちの、温かい日常が続いていく。


借金総額は相変わらず1000億セルンを超えているが、仲間との絆という、お金では買えない宝物を手に入れた彼らにとって、それはもはや些細な問題に過ぎなかった。


「明日もまた、みんなで頑張ろう」


レオがつぶやくと、レオネス荘は静かな夜の中に包まれていった。


記憶回復大作戦は失敗に終わったが、家族の絆を深める大成功の一日となった。リリィの記憶が戻る日が来るかもしれないし、来ないかもしれない。


しかし、それはもう重要なことではなかった。


大切なのは、今この瞬間を、愛する家族と一緒に過ごすこと。


借金地獄の異世界で見つけた、本当の幸せがそこにはあった。

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