エリカの優雅音楽作戦

「今度は私の番ですわね。高貴な音楽なら、記憶を呼び起こせるかもしれませんわ」


エリカはレオの【神器創造】で作られた美しいグランドピアノの前に座った。没落前の貴族時代に培った音楽の才能を披露する時が来たのだ。


「これは私が貴族時代に習得した『天界のセレナーデ』ですわ。古い伝説の楽曲で、記憶を呼び起こす力があると言われていますの」


エリカの指がピアノの鍵盤に触れると、美しいメロディーがレオネス荘に響き渡った。それは天使の歌声にも似た、神々しい音色だった。


「うわぁ...すげぇ...エリカの演奏、マジで天使みたいだ」


レオが感動でうっとりしている。


「5000年生きてきたが、これほど美しい音楽は初めてだ」


カイロスも竜王としての威厳を忘れて聞き入っている。


「音響効果、5万セルンのコンサート並みね」


メリサも計算を忘れて音楽に集中している。


「心が洗われるような音色だ...族長時代の苦しい記憶も、この音楽で癒されるようだ」


リューナも目を閉じて音楽を楽しんでいる。


エリカの演奏は30分近く続いた。『天界のセレナーデ』は確かに神秘的な力を持っているようで、聞いている者の心を深く癒していく。


「これで記憶が戻れば...」


エリカが演奏を終えて振り返ると、そこには...


「zzz...zzz...」


リリィが心地よい音楽に包まれて、すやすやと眠ってしまっていた。


「あら...私の演奏で眠ってしまいましたの...」


エリカがショックを受けていると、レオが慌ててフォローした。


「いや、これはこれで...リリィ、めっちゃ気持ちよさそうに寝てるじゃん」


確かに、リリィは天使のような幸せそうな寝顔で、小さく寝言を言っている。


「んー...温かい...みんな...大好き...zzz」


その寝言に、一同の心が温かくなった。


「まあ、可愛らしい寝顔ですわね。でも記憶回復にはなりませんでしたわ...」


エリカは少し落ち込んでいたが、リリィの安らかな寝顔を見て微笑んだ。


「でも、リリィちゃんが安心して眠れるなら、それだけでも価値がありますわ」


10分ほどして、リリィが目を覚ました。


「あれ?私、寝ちゃったのじゃ?」


「エリカの子守唄が気持ちよすぎたんだよ」


レオが笑うと、リリィは嬉しそうに言った。


「エリカお姉ちゃんの音楽、とっても綺麗だったのじゃ!夢の中でも聞こえてて、とっても幸せな気分だったのじゃ!」


「ありがとうございます、リリィちゃん。でも記憶は...」


「うーん、やっぱり思い出せないのじゃ。でも、エリカお姉ちゃんの音楽、大好きなのじゃ!」


エリカは複雑な表情を浮かべたが、リリィの笑顔に救われた気持ちになった。


「私の番だな」


リューナが立ち上がった。




リューナの自然回帰作戦


「記憶を失った人には、自然の中で心を落ち着かせることが効果的だと聞いたことがある。森の力で記憶を呼び起こそう」


リューナはリリィの手を取って、レオネス荘の裏庭の日本庭園に案内した。レオの趣味で作られた庭園には、小さな池と竹林、そして美しい季節の花々が植えられている。


「リリィ、目を閉じて。風の音、鳥の声、木々のささやき...自然の声に耳を傾けるんだ」


リリィは素直に目を閉じて、リューナの隣に座った。


「うん...風が気持ちいいのじゃ...鳥さんたちが歌ってる...お花の匂いも優しいのじゃ...」


「そうだ。自然は記憶よりも古いものだ。もしかしたら、お前の深い記憶に触れることができるかもしれない」


リューナはダークエルフとしての自然との親和性を活かして、そっと魔法をかける。風が優しく吹き、鳥たちがより美しく歌い、花の香りがより豊かになった。


しばらくすると、リリィの表情が穏やかになった。


「なんだか...懐かしい感じがするのじゃ...」


一同が期待に胸を膨らませる。


「どんな感じだ?何か思い出したか?」


「うーん...はっきりしないのじゃ。でも、とっても温かくて、安心する感じなのじゃ。まるで...まるで...」


リリィが何かを思い出しそうになった時、突然風が止んだ。


「あれ?なくなっちゃったのじゃ...」


「無理をする必要はない。記憶は戻らなくても、お前は今ここにいる。それで十分だ」


リューナは優しくリリィの頭を撫でた。


「リューナお姉ちゃん、ありがとうなのじゃ。自然の中にいると、心が落ち着くのじゃ」


リリィは微笑んで立ち上がった。


「でも、やっぱり思い出せないのじゃ。みんなが一生懸命してくれてるのに...」


リリィの表情が少し曇ったのを見て、レオが慌てて言った。


「おい、謝るなよ。俺たちは記憶を取り戻すために頑張ってるんじゃない。リリィが不安に思わないようにって思ってやってるんだ」


「そうそう。結果なんてどうでもいいのよ」


メリサも珍しく感情的な口調で言った。


「我々が望むのは、リリィの笑顔だ」


カイロスも頷く。


「過去より未来ですわ。リリィちゃんと一緒に新しい思い出を作る方が大切ですの」


エリカも優しく微笑んだ。


その時、レオのお腹がグーと鳴った。


「あ...そういえば、作戦に夢中で昼飯食うの忘れてた」


一同を見回すと、みんなお腹を鳴らしている。


「俺様も腹が減った...」


「お腹すいたわね...」


「確かに、朝から何も食べてませんわね」


「つい食事を忘れてしまう」


そんな時、リリィが明るく言った。


「じゃあ、みんなでお料理するのじゃ!」

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