多様性を認めて社会は優しくなった。でもそれって優しい人が増えたのかな?

橘こはるは、田舎から都会の高校へ転校しました。
新しいクラスメイト。そのうちの何人かは、一風変わっていたのです。

そんなクラスメイトのひとり、こめかみ辺りから金属棒が生えている綿貫ルカと言葉を交わすようになったこはる。
彼女は、ルカと仲良くなりたいと思いながらも自身との関係のあり方を思い悩む。
そんな物語です。

この物語は。そのまま読んでも特異でコミカルな状況のファンタジーとして楽しめます。

この物語は。象徴性を内包した純文学としても、堪能できます。

なによりこの物語は。言葉選びの秀逸な思春期の少女の心の変遷と成長のビルディングスロマンなのです。 

冒頭近く。

〝田舎の匂いがまだ背中にくっついているような気がして、足元がどうにもおぼつかない〟

この文章だけで、もう巧い。
作者である、つきかげさんは言葉を用いる際の感覚が、とびきり優れています。

本作を読む者は、釈然としない奇異な物語世界を戸惑うかもしれません。
でも心配はいりません。
物語を読み進めるうち、知らず知らずながら主人公のこはると供に、この物語の中を逍遥していることでしょう。

さて。
次は誰がこの物語を開くのでしょうか。
楽しみでなりません。