33 ひさかたの 光のどけき 春の日に 静心なく 花の散るらむ


ひさかたの 光のどけき 春の日に 静心(しずこころ)なく 花の散るらむ

紀友則(きのとものり) (平安時代の歌人。三十六歌仙)



若者訳

春の陽ざしポカポカで、世界ぜんぶが「平和〜」って感じなのに、

なんで桜だけ、そんなに急いで散ってんの?

——落ち着け、人生まだ昼だぞ。

っていうか、自分も落ち着け!?



現代語訳

あの空からふりそそぐ光がやわらかで穏やかな春の日に、

どうして桜の花は、あんなにも落ち着くことなく散っていくのだろう。


この歌は、春ののどかな情景と、散りゆく桜への無常感をうたったもの。

「ひさかたの」は“光”にかかる枕詞(決まり文句)で、

“のどけき春の日”という穏やかで平和な情景を描きながら、

その中で「静心なく花の散る」という対比が見事。

つまり、春の穏やかさと、命のはかなさの同居――

それがこの歌の美しさであり、

後世の「花は散るもの」という日本的美意識の原点にもなったといわれている。


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