放課後の落台生

第12話 本当の落第生は…

こうして鈴野明里は警察に自首し、事件は幕（まく）を閉じたと思われたが警察の捜査（そうさ）と豊川さんの出歯亀（でばがめ）（もとい調査）で思わぬ事件が発覚（はっかく）したのだった。

それはクラス担任の月崎先生が今田美海に進級する為に必要な成績をつけることを条件に身体を要求していたという事だ。

この件が発覚した時、もう1つ発覚した事がある。それは音楽教師の姫路先生が月崎先生と付き合っていた事だ。

この件が問題になり月崎は懲戒免職、姫路先生は転勤となった。

そして、今田美海は成績不振（ふしん）で落第した。

その時のクラスの賑わいは転落死事件の比（ひ）では無かった。

私は思い出す度にため息がでる。

やはり鈴野さんは葛西くんが部屋から転落した時点で救急車を呼ぶべきだったと。

思わぬスキャンダルが発覚した為に、鈴野さんが捕まったことはそこまで広まらなかったのは個人的に良かったと思っている。

ちなみに、鈴野さんの報道を聞いた裕太はまだ未練（みれん）たらたらといった様子だった。

この分だと私が鈴野さんの犯行を暴（あば）いたことは黙（だま）っていた方が良さそうだ。

ふと気が付けば、私は裕太に対して隠（かく）し事ばかりが増えていく。

そういった面で見ると私も鈴野さんや今田さんとそう変わらないのかもしれない。

今回の事件も犯人が鈴野さんでなければあんなに大胆（だいたん）に探偵じみたことはできなかったと思う。

自分は恋愛に消極的（しょうきょくてき）なのに恋敵（こいがたき）には積極的（せっきょくてき）になってしまうなんておかしな話だけれど、実際私がそうだったのだから本当に恋というものはままならない。

こう振り返ってみると、どうやら私は恋愛において落第しているみたいだった。