第24話 専属メイドは悪役(勘違い)を守りたい
その日の夜。
俺はいつも通り、トレーニングルームに篭っていた。
「ふぅ……今日の筋トレは、このくらいにしておくか」
気がつけば、着ていた服が汗でぐっしょりと濡れていた。
考え事をしながら動いていると、自分でも知らぬ間にいつも以上に運動している時ってあるよなー。
考えていたのは、もちろんペアでの試験のことだ。
『そして、この試験に合格できなかった者は――退学とする』
ルイス先生のあの言葉がずっと頭に残っていた。
なんの前触れもなく、いきなりだったし、言われた時は驚いた。
周りの慌て方を見て、少し動揺もしたけれど……。
冷静に振り返ると、色々と予想ができる。
合格できなかった者は、退学とする。
つまり、この試験は勝ち残り戦やバトルロワイアルでない可能性が高い。
入学試験のように合格者数がある程度、決まっているわけでもない。
あの言い方から予想すると……出された課題に対して合格水準を満たせばいいのだ。
いいのだというか……それが1番難しいんだけどな。
でも、最初の試験ということもあって、難易度は高くはないだろう。
落ち着いて自分の実力をちゃんと出せば、乗り越えられるはず。
俺とシェフィのペアなら大丈夫だ!
「せっかくの学園生活……ここで退学なんてごめんだ! 頑張るぞー! おおー!!」
声に出して自分を鼓舞する。
それに、この試験は俺にとってもチャンスだ。
ここでいい感じに目立つことができれば……女遊びに一歩に近づくかもしれないからな。
女遊び……つまりは、モテるためにはまず、実力を披露して目立つのが第一条件。
数々の作品の主人公たちが通ってきた道だ。
俺は悪役だけど、活躍することに主人公も悪役も関係ないよな!
まだまだ本気は出してないし、やるぞー!
「っと……あっつ……ほんと汗かきすぎたなぁ」
自分で自分を鼓舞し続けていたら、ますます暑くなった。
大量の汗で服が肌にべったり張りついて、気持ち悪い……。
「……脱ぐか」
Tシャツを脱いで上半身裸になると、涼しい空気が肌を撫でて気持ちが良い。
あとは、冷たい水とふかふかのタオルがあれば最高なんだけど……。
そんな時、ちょうどいいタイミングで扉がノックされた。
「アーク様。メイドのシェフィでございます。トレーニングがお済みの頃かと思いまして……中に入ってもよろしいでしょうか?」
「ああ、いいぞ」
俺の返しを聞いてから、扉を開けて入ってきたシェフィ。
持ってきたカートの上には、容器に入た氷入りの水とふかふかのタオルがあった。
さすがシェフィ。気が効く。
「アーク様。本日もトレーニングお疲れ様……です」
一礼し、顔を上げた時。シェフィの視線が俺の裸の上半身で止まった。
「……」
ぱちぱちと瞬きを繰り返していて……。
「……落ち着いて、わたし。アーク様は、きっと汗をかいたから服を脱いでいらっしゃるだけ。決して、無防備に喰われようとしているわけでは……」
「シェフィ?」
何やら口をもごもごと動かしている。
「アーク様」
「お、おう?」
何故か、真剣な目で見つめられる。
「アーク様は、押し倒されたいのですか?」
「へっ?」
唐突な言葉に思わず声が裏返った。
「失礼いたしました。本音と建前が……んんっ」
慌てて咳払いをするシェフィ。
どうやら間違えだったようだ。
って……本音と建前?
「では改めて……アーク様は何故、上半裸になられているのでしょうか?」
「汗をかいたから。あと、暑かったしな。水とタオルもらっていい?」
「どうぞ」
シェフィから受け取る。
タオルで身体を拭きつつ、冷たい水をごくごく飲めば……。
「ぷはー! 生き返る〜」
この爽快感がたまらない!
「……ますますエッチな気が」
「ん? シェフィ、なんか言った?」
「なんでもありません。アーク様、汗を拭き終わったら服を着てくださいね」
「はーい」
汗で湿った服をまた着るのは正直、嫌だけど……すぐお風呂入るし、それまでの辛抱だな。
「やはり、アーク様はわたしがお守りしないとですね……」
「ん? 俺もシェフィのことを守るぞ。特にペアでの試験の時は任せておけ!」
シェフィは回復魔法が得意で、しかも特殊な使い方までできる。
応用の幅は広いが……それでも前線を任せるわけにはいかない。
そこは俺の役目だ。
俺が前に立って守り、派手に活躍して、あばよくば、女の子たちからキャーキャー言われたい!
「試験のことはさほど心配しておりません。アーク様が傍にいますから。試験では、わたしはアーク様が動きやすいようにサポートするつもりです」
「そうなのか。ありがとう!」
なんと、シェフィは俺の活躍を後押ししてくれるらしい。
悪役転生といえば、専属メイドが味方になってくれるけど……シェフィもそうみたい。
うん、頼もしいな!!
「ただ、その他のことに関しては、わたしがお守りできればと思います。アーク様はこうして……無防備ですから」
「お、おう?」
試験以外で守ってもらうことってあるかな?
それに、無防備って……。
日々鍛錬を積んでるし、魔力操作の精度だって以前より格段に上がっている。
そう簡単に、不意を突かれてやられることはないと思うが……。
「俺、そんなに無防備?」
「はい」
シェフィに即答された。
なら、まだまだ鍛錬が足りないのかも。
まあシェフィがそう言っているのなら任せるか。
「じゃあ任せた」
「かしこまりました」
シェフィは妙に真剣な顔つきで頷いたのだった。
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