第16話 悪役転生した俺の魔法の使い方

 あれからクラス全員の順番もとい、Bクラス内の入学試験の成績順が発表された。


 喜びの声を上げたり、がっくりと肩を下げる人もいて……その余韻も束の間。


 ルイス先生が、パンッと両手を叩き鳴らした。


「じゃあ、得意魔法のお披露目といくぞ! まずは一番手――アーク・ノット!」

「はいっ」


 名前を呼ばれた俺は、引かれたラインの手前に立つ。


 視線の先にある的との距離はざっと……100mくらいだな。


 こんだけ離れていると的が小さく見える。

 入学試験の時もこんな感じだった。


 みんな……あの的に正確に当てたり、傷をつけたり、壊していたんだよなぁ。凄いよなー!


 と……深呼吸して、切り替える。


 俺は、拳に魔力を込めた。


 魔力の使い方。


 昔はよく分からなかったけど……今は分かる。

 だって、今までティアナと特訓してきたからな。


 そして、俺が使う……悪役転生した俺の使は――


「《ウィンドショック》!!」


 風魔法を唱え、風を纏った拳を振り抜いた瞬間、その衝撃で的が木っ端みじんに砕け散った。


「っしゃあ!」


 的の破壊に成功して、ガッツポーズを取る。


 やっぱり、俺にはこの魔法の使い方が合っているな。


 俺は基本的に、剣や杖を使わない。

 属性魔法もほとんど使えるが……。


 あくまで素手、生身で戦うスタイルにこだわると決めている。


 ……何故って?


 だって、俺は悪役だ。


 いつ恨みを買ってもおかしくないし、卑怯な罠を仕掛けられることだってある。

 

 だが、生身で強ければ死なずに済む。

 そういうことだと。


 あと、拳や生身で戦った方が……なんか女子受けよさそうじゃない?


 思い返すのは、前世で流行っていたヤンキー漫画。

 女の子にモテるのはいつも素手で喧嘩してる男たち(顔が良い)だった。


 まあ、分かる。男の俺からしても拳でやっていた方が正々堂々勝負していてカッコいいって痺れるよなぁー。


 だから……この世界でもこの方向性は間違ってないはず!


 そう思って、クラスの女子たちをチラッと見てみるが……。


「……」

「……」

「……」


 しーん、と微妙な沈黙。


 あ、あれ? なんか思ってたのと違う。

 もっと「きゃー!」とか黄色い声が飛ぶと思ったんだけど……。


「ふっ……おい、アーク! 今やったことを言葉でも説明して分からせてやれ!」


 わ、分からせ……?


「え……あ、はいっ。拳に風魔法を纏わせて、その拳を振った時の風圧で的を壊しました!」

「そうか。アーク、お前は近接戦が得意と言っていたが、拳で戦う派だな。いいじゃないかぁ」

「あ、ありがとうございます!」

 

 ルイス先生に褒められた! 嬉しい!

 

 だけど、さすがに先生に手を出すわけにもいけない。


 俺は同年代の可愛い女の子たちにチヤホヤされたくて……。


「……は、はい? 今なんて言った?」

「いや、何をしたのか意味は分かったけれど……なんでそんなことができるのか意味が分からないんだけど」

「というか……脳筋すぎない?」

「なるほど……元騎士団長であったルイス先生が好きそうな戦い方ねぇ」

「てか、拳に風魔法なんて纏ったら、普通は拳の方が吹っ飛ぶよね? 身体にダメージがなく魔法を使うために剣や杖の武器が存在するのに……。耐えられる肉体の方を持っているってこと?」

「それなら、女子よりも強い可能性があるわぁ……」

「普通の男子の定義が分からなくなってきた……」


 場の空気はざわめきへと変わってきたが……そこでルイス先生が口を開いた。


「じゃあ次にいくぞ! 二番手――シェフィ・エイム!」

「はい」


 俺の次に名前を呼ばれたのは、シェフィである。


 シェフィも成績上位なんて凄いよなぁ!


「あの子、アーク様の従者の……」

「従者といえば、男子を守るポジションで……あの子も規格外なんじゃない?」

「いや、でも自己紹介の時は『回復魔法が得意』って言ってたよね?」

「じゃあ使うのは回復魔法ってこと? 回復魔法じゃ的なんて絶対破壊できなくない?」

「だけど、今ここにいるってことはなんらかの方法で的に傷をつけたってことで……」

「いや、でもあの的って一定の衝撃を超えないと傷つかない特殊な代物でしょ……? かすり傷さえ付けられなかった受験生は即座に不合格だし……」

「回復魔法でどうやって衝撃を……?」


 クラス全員の視線がシェフィに集まる。

 

 妙な緊張がに包まれている中で……シェフィは手を挙げ、落ち着いた声で尋ねた。


「ルイス先生。武器の使用は可能でしょうか?」

「ああ、構わんぞ。どんな武器がいい?」

「剣でお願いします」

「了解だ」

 

 ルイス先生が武器庫から剣を取り出し、シェフィへ渡す。


 シェフィは剣を構え……回復魔法を唱えた。


「――《7倍回復》」


 次の瞬間、剣が淡い光に包まれた。

 

 シェフィは迷いなく、その剣を振る……いや、


 ひゅん、と音を立てて飛んでいった剣は一直線に的の方へ。


 的の中心を貫いたかと思えば……的は、真っ二つに裂け落ちた。

 ちなみに、剣は壁に刺さったまま。


「「「……は?」」」


 クラスの女子たちが揃って、声を漏らした。

 

 いい反応だなぁ。見ている側はおもろいなー。


「ふっ……いい魔法だな。シェフィ! 今やったことを言葉でも説明してやれ!」

「はい。剣の切れ味を7倍にいたしました」

  

 場がしん……と静まり返る。


 うんうん……サラッと意味わかんないこと言っているよなー。

 剣の切れ味回復とは訳わからないだろ。


「今のはなにぃ……? あんなのありぃ……?」

「いや、何をしたのか意味は分かったけれど……なんでそんなことができるのか意味が分からないんだけど」

「武器の切れ味を回復ってなに? 私の知ってる回復魔法じゃないんだけど……」

「回復魔法ってもっとこう、お淑やかなイメージだっだだけど……」


 段々と騒ぎ立つ女子たちをよそに、シェフィは俺の隣へと移動した。


「アーク様、先程の魔法お見事でした」

「シェフィこそ、最高だったぞ! 改めて見るとやっぱりすごいなぁ〜」


 シェフィの回復魔法は、格別なのだ。


 傷を癒やすだけじゃなく、武器や防具にまで応用が効く――まさに規格外の魔法。


「これもシェフィが頑張ったからだな!」


 そう言って俺がはにかめば、シェフィも笑みを深めた。


「どんな時も褒めてくださるなんて……。アーク様は、いつまでもそのままでいてくださいね」

「ん? おう、俺はシェフィには優しいからなっ」


 元々のアークであったら、いじめていたかもしれないが、俺はシェフィのことを大事にするって決めているからな!

 

 もちろん、手も出さない意味でのな!


「……ふふ。わたし、アーク様の隣は譲る気はないので……」


 シェフィが何やら呟いていたが、聞き取れなかった。


「ふふっ……今年の新入生は面白いのばかりだなぁ! よし、次ッ! どんどんいくぞ!!」

「ええ、こんなの見せられた後にやるの……」

「私、自分の得意魔法が本当に得意なのか分からなくなってきたわ……」

「この1年間はなんだかたくさん驚かされるような気がする……」


 場がどんよりした雰囲気になったものの……みんな自分の得意魔法でちゃんと的に当てたり、傷つけたりしていた。


 Bクラスはみんな優秀だな!

 

 だけど……なんでこのクラスに男1人なのか分からない!

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