第15話 悪役転生だけど、チヤホヤされたい

 翌日。

 学園に着いた俺たちは、自分のクラスに向かう。


「今日からまた一緒に頑張ろうね、アーク」

「ああ、そうだな。だけど、ティアナはAクラスの方に行こうなー」


 そんなこんなで、授業時間がやってきた。 

 教壇に立ったルイス先生は、開口一番に告げる。


「んじゃあ、今日から授業をしていく。ただ、座学はつまらないから……訓練所に行くぞ。お前ら、全員ついてこい!」


 そうして、ルイス先生の後をついていけば、入り口の横に『B』と書かれた建物に着く。


 その扉を開けると……中は、広いグラウンドのようになっていた。

 

 地面は整備され、奥には『武器庫』と書かれた部屋がある。


 Bクラス専用で授業以外もいつでも自由に使えるとか。


 やっぱり、倍率高い学園なだけあるなぁ。


 準備運動してから、再びルイス先生の話を聞く。


「アタシは、頭よりも身体で覚えてもらう指導方針でなぁ。つか、頭がいくら良くとも、いざという時に身体が動かなかったら無意味だ。死なないためにはどうすればいいと思う? そりゃ、身体を鍛えるしかないよなぁ?」


 確かに一理ある。

 いや、一理どころじゃない。 

 悪役転生した俺としては、共感しかない!


 だが、俺は全ては女遊びをするためにやってきたけどな。


「つーわけで……まずは自分の得意魔法を披露してみろ。狙うはあの的だ。あの的に傷をつけてみろ。破壊しても構わない。手本を見せてやる……《バーニング》!!」 


 ルイス先生の手から青白い炎が放たれ、一直線に飛んで的を貫いた。

 中心を撃ち抜いた炎はそのまま的を焼き尽くす。


 周囲から「おおっ!」と驚きの声が上がる。

 もちろん、俺も声を上げた。


 なにあれ、かっこよすぎる! 

 青白い炎とか最高だ。俺、次はあの魔法を取得したい!


「ふっ……まあ、ここいる全員、実技試験でこれをやってきてここにいるんだ。問題はないだろう。せっかくだし……入学試験の成績順にするか。アタシが名前を呼び上げた生徒から前に出てやるようにッ!」

「「「えっ!?」」」


 再び、訓練所がざわつく。

 俺も驚いた。


 首席がティアナというのは知っているが……それ以外の順位は知らされていなかったから。

 もちろん、自分が何位で試験に合格したかも知らない。


 まさかこんな場面で発表されるとは……。


「じゃあ、発表する。1番目は……」


 場が緊張に包まれる中で、名前を呼ばれたのは……。


「――アーク・ノット!」

「え……あ、はいっ!」


 まさかの自分の名前が呼ばれ、返事が遅れる。

 

「まずはアークお前から魔法を披露しろ」


 ルイス先生がニヤリと笑う。


 って……じゃあ俺、入学試験の成績上位だったのか?

 凄くない? いや、凄いよな俺っ!


「さすがです、アーク様。もっとも、この結果は予想しておりましたが」

  

 隣にいたシェフィが微笑む。

 褒められて、内心ガッツポーズ。


 他の女の子たちの反応も気になって、周りに視線を向ける。

  女子たちのひそひそ声が耳に入ってきた。


「男子だもんね。そりゃ、優遇されてるよねー」

「男子の入学試験って、どこの学園でも面接のみだよね?」

「アーク様は見た目からして合格間違いなしだったんでしょ。私だって、即合格にするし」

「てか、成績が均等になるようにクラスが振り分けられていて、Aクラスに首席のティアナ様がいるのなら……Bクラスには、2番目に合格した人がいるんじゃない?」

「つまり、次に呼ばれた女子生徒が入学試験2位通過でBクラス最強ってこと?」

「ナンバー2も結構ヤバいよねえ……」


 あ、あれ……? なんか反応が違うなぁ。

 女子たちは盛り上がるどころか、妙に納得した感じがあった。

 

 そんな空気を吹き飛ばすように、ルイス先生が何やら口を開き……。


「ちなみにアークはなぁ……お前らと同じ試験を受けて合格してる。本人の強い希望でな。急遽、変更したんだ」

「「「えっ!?」」」


 一斉に驚きの声が上がって、みんなの視線が一斉に俺に突き刺さる。


「いや、だって……俺だけ面接のみとかずるいじゃん? みんな頑張ってきているだろうし。だから、みんなと同じ通常の試験を受けたんだよ」


 当たり前のことを言ったつもりだったが……逆にざわめきは大きくなっていく。


「ほ、ほんとに? 冗談とかじゃなくて?」

「じゃあ、アーク様って……純粋な力で私たちよりも成績が良かったってこと?」

「それって、男が女よりも強いってことになるんじゃ……」

「いやいや、そんなのありえる? 今まで聞いたことないよ? だって男は、守られる存在で……」

「ありえたから、アーク様が今ここにいるわけで……」


 うーむ、なんか想像していたのと違うな。


 「規格外!」「とんでもないやつがいる!」「キャー、すごーい!」って……黄色い歓声を浴びる予定だったんだけど?

 

 男は強ければ、それだけでチヤホヤされると思っていたのにぃ!!


「……まあいい。言葉より実際に見せたほうが早いだろ。アーク、お前の魔法を披露してみろ。ここにいる全員に見せてやれ。そんで、全員分からせてやれ」

「!! はいっ!」


 ルイス先生にニヤリと笑みを向けられて、俺はやる気になる。

 

 ついに……披露するんだ。

 

 俺の魔法の使い方を!!


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