「読む」のではなく、「体験」するホラー

何でもいいからホラーが読みたい、と検索画面からたまたま出会ったこの小説。
ラストまで読んでこれは「出会い」ではなく「遭遇」であったと思わされました。
1人の男子学生の夏の描写から始まるストーリー。
所々に仕込まれた不穏の種がラスト2話で一気に芽を出します。
読みながら、人物たちのセリフの書き分けが少ないことや、主人公の目線がやたらと達観していて彼個人に関する描写が省かれていたりと言った部分が引っ掛かりとなっていました。
それすらもラストに向けての大きな伏線となるとは、思いませんでした。夢と現実の狭間で揺れる『名状しがたいもの』それ自体が物語の大きなキーワードとなっている。圧巻の構成です。
分かりやすくライトな物語ではなく、ゾクリとした寒気と共に解釈の余地をたくさん残してくれる贅沢な作品でした。
面白かったです。