第8話 鉄壁の城と史上最悪のドワーフ娘
朝の陽射しが草原を金色に照らしていた。風は涼しく、遠くで鳥がさえずっている。
俺様は小高い丘の上で両手を広げ、完成間近の巨大なビル――いや、俺様たちの“城”を見上げていた。
「ふはははっ! ついに……! 我が王国の礎ができたぞっ!」
ティータが耳をひくつかせながら、俺様の足元をぴょんと飛び跳ねる。
「まだ途中にゃ、浮かれすぎにゃ。木材と石材のバランスがおかしいにゃ」
「細かいことは気にするな。あとは“あれ”で仕上げるからな」
俺様は手をかざし、建設スキルを発動する。
【スキル:建設】
【スキル:積み上げ】
思考と連動して、空間に浮かび上がる設計図。その形に木材と石材が自動的に組み上がっていく。
しかしそれでも、限界はある。
「ベレナ、頼む!」
「ええ。私の“領域魔法”で支援するわ」
ベレナが手を前に突き出すと、青白い魔法陣が足元に広がった。空気が震え、城壁の材料が光に包まれたかと思うと、一気に組み上がり始めた。
「あれ、俺様の作業より速くないか?」
「当然よ。私は魔族の巫女、領域内では物理法則も捻じ曲げられるの」
「こわっ!」
おかげで、俺様がイメージしていたビル型の城と刑務所型の壁は、想像以上の精度で完成した。夕焼けに染まった鉄壁の国まだ国民は3人しかいないけどな。
「よし。これで拠点の防衛は問題なし。次は食料の確保だな」
というわけで俺様たちは、拠点の北に広がる深い森へと足を踏み入れた。
森はひんやりとした空気に包まれていた。木漏れ日がまばらに降り注ぎ、足元にはふかふかの苔が敷き詰められている。
「この辺りに野生の果実や野生動物がいると思うにゃ。あと、伝説級の凶暴ドワーフが住んでるって噂もあるにゃ」
「いや、それ最後に言うな!」
グリドリーが周囲を警戒しながら前を歩き、ベレナは杖で魔力の流れを探る。
すると、突然、地面が爆ぜた。
「おっとぉ!? トラップかっ!?」
跳ねた土の中から飛び出してきたのは、鋭いツルハシを構えた小柄な影――ドワーフの少女だった。
「やっぱり来やがったな、資源泥棒どもめェェェェェ!」
「いや誤解だーーっ!」
少女は高速で飛びかかってくる。避ける間もなく、俺様の額ギリギリにツルハシが突き刺さる――かと思いきや。
ピタリと止まった。
「あんた、本当に盗掘者じゃないのか?」
「違う! 俺様たちはこの島で平和な国を作ってるだけだ! 食料を探しに来ただけだ!」
少女はしばらくじっとこちらを睨みつけたあと、ふっと肩の力を抜いた。
「疑ってすまねえ。名乗るのが遅れたな。あたしはマルルカ。この森と鉱脈を管理してるドワーフだ」
「マルルカ? もしかして“詐欺ドワーフ”って言われてるやつかにゃ?」
ティータが耳をぴくぴく動かしながら警戒する。
「それ、誤解だから! 資源の見積もりがちょっと大げさだっただけだし!」
「完全に詐欺にゃ……」
だが、俺様の目はマルルカの腰にある鉱石に釘付けだった。
「その枝みたいな鉱石……もしや珍しそうだな?」
「よくわかったな。加工すれば、木より軽くて鉄より硬くなる。けど、使いこなせるやつは少ないぞ」
その時、マルルカの隣から巨大なハエが飛来してきた。
アギトは思わず足でけり潰していたのだが、その時に。
【レベル5→6】に上昇して。
【スキル:付与】を習得しました。
「……よし、やってみるか」
アギトはこれも何かの運命だと感じつつも、
俺様は落ちていた木の枝を拾い、【付与】を発動。スキルを通じて珍しそうな枝みたいな鉱石の素材特性を模倣し、枝に転写する。
枝が青白く光り、硬質化する。
「なっ!? まさか“付与”スキルをこの短時間で使いこなすなんて……!」
「マルルカ。俺様たちは、君の知識と素材が必要だ。国造りに協力してくれないか?」
「ふふっ、面白い奴らだな。いいだろう。あたしも一枚かませてもらうぜ」
こうして、史上最悪(誤解)と呼ばれたドワーフ娘・マルルカが仲間に加わった。
国はまた一歩、混沌と平和の狭間を前に進んでいく。
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