第7話 遺跡に眠る魔族と共存の契約

 朝露が降りた草原を抜け、アギトたちは新たな探索に向かっていた。  空には薄い雲が流れ、青と白が混ざる幻想的なグラデーションを描いている。風は心地よく、遠くで鳥の囀りと木々のざわめきが重なる。

 案内役のティータがぴょんぴょんと跳ねながら先導する。


「この辺りに古い遺跡があるにゃ。昔の魔族が住んでいた場所らしいにゃ」

「魔族……か。大丈夫なのか?」

「まぁ、今は誰もいないって噂だったけどにゃ」


 グリドリーが大きな体を揺らして歩くたびに、枝がざくざくと折れていく。

 しばらくして、彼らは森の奥にひっそりと佇む石造りの建物跡に辿り着いた。ツタに覆われた柱、崩れた屋根、魔力を感じさせる薄青い光が漂っている。

 アギトはその場に立ち止まり、空気を感じ取った。


「ここ、何か……眠ってるな」

「気をつけてにゃ、封印系の魔力を感じるにゃ」


 その瞬間、遺跡の中心にある祭壇が鈍く光り、風が逆巻くように周囲の空気が震えた。

 祭壇の前に現れたのは、一本角を持つ銀髪の魔族の女性だった。肌は白く、目は赤く、妖しくも凛とした佇まい。


「……ここは……もう滅びたはずでは……? あなたたちは、誰?」


 ティータが飛び退き、アギトの肩に飛び乗る。


「で、でたにゃ……生き残りの魔族かにゃ!?」


 アギトは前に出て、手を広げて示す。


「俺たちはこの島で国を作ろうとしている者だ。争うつもりはない」


 女性はアギトをじっと見つめる。 「その言葉、信じていいのかしら?」


「もちろん。俺たちは、種族や過去に囚われない国を作りたい。名を聞いてもいいか?」

「ベレナ。私はこの遺跡を守る者。そして、滅んだ魔族の最後の巫女」


 その瞬間、遺跡の奥から黒い霧が吹き出し、影の獣たちが姿を現した。


「これは私の封印が、完全に解けてしまった!」


 獣たちが一斉にアギトたちに襲いかかる。

 グリドリーが前に出て、鋭い爪で影を引き裂く。ティータも魔法弾を放ち、アギトは【話術】を使い、敵の動揺を誘った。


「その怒りはわかる! だが、もう過去に囚われる必要はない!」


 その言葉に、一瞬だけ影が動きを止める。その隙を逃さず、ベレナが魔法の杖を振るい、封印の呪文を紡いだ。

 やがて、霧が晴れ、影は再び石と化して静かになった。


「ふぅ助かったわ。あなたたちがいなければ、私は」


 アギトは手を差し出す。


「この国で、共に生きてくれないか?」


 ベレナは一瞬戸惑ったように目を見開く。


「私は……人間に追われ続けてきた存在。それでも、いいの?」

「俺は人間だけど、それ以上に“国造りをしたい者”だ。仲間が必要なんだ」


 ベレナは小さく笑みを浮かべ、その手を取る。


「なら、もう一度信じてみる。共に、この地を変えていきましょう」


 こうして、魔族の巫女・ベレナがアギトの仲間に加わった。

 遺跡を出たとき、空は夕焼けに染まり、朱に照らされた森はどこか祝福を帯びた雰囲気に包まれていた。

 国造りは、また一歩進んでいく。

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