カーシニゼーション(一)
カニの身を食べたぼくは、海に行きたくなった。時刻は午後十一時。明日から仕事であった。
しかし、そんなことはもうどうでもよかった。ぼくは胃の当たりから発する衝動に任せて、スマホと財布だけを手に取り、鍵もかけずに外へ出た。
大きな通りに出ると、ちょうどよくタクシーが走っていた。
ぼくはタクシーに乗り込むと、あの海辺へ連れて行ってくれるように告げた。
タクシーの運転手はけげんな顔をしながら、「お客さん、大丈夫ですか」と言ってきたので、ぼくはひとつうなづいてから、自信を込めて、「大丈夫」と言葉を返した。
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