スキル【キャンセル】で学園無双!~異世界転生をキャンセルして獲得したスキルは、あまりにも万能すぎて逸般人が通う学園生活も余裕だし、学園島ランキング攻略も余裕なので【世界の覇王】になります~
第25話『裏でコソコソ悪事をするものじゃない』
第25話『裏でコソコソ悪事をするものじゃない』
「それで、さっきの人は初見ではないと?」
「うん。ここ最近、目立った悪さをしているわけじゃないけど……明らかに怪しいから」
「なるほど」
裏路地から表通り、そしてまた裏路地へ。
その移動最中、再び彼らと遭遇することはなかったものの生態や行動パターンを
まだまだ日は高いため、
「しかし、あんなボディーガードみたいな人たちが怪し気に出没しているって、何かの撮影か誰かを探しているようにしか思えないな」
「なるほど。撮影……その視点はなかった。今回の件は違うようだけど」
「確認は取った方がいいけど、言葉を理解できないのではなく発しないというのは、あまりにも怪しいと思う」
(確認せずに攻撃を仕掛けるって、それはそれでだいぶヤバいとも思うけど)
つい昨日の、喧嘩を止める際の行動と重なる点を危険視せずにはいられない。
しかし好感度を意識している翔渡は、警告するまでもないと判断して言葉には出さなかった。
だがさすがに、自身だけが情報を得ている罪悪感に一部を隠して伝えることに決める。
「実はあの人たちを知ってるというか見たことがあるんだ」
「え、どこで?」
「今朝の登校中。偶然だけど、クラスメイトの
「あの人たち、もしかして誘拐犯なの?」
緋音は足を止めて眉間に皺を寄せ、キリッとした表情で疑いのまなざしを向けられた翔渡も足を止めた。
始めて見る表情に緊張感を覚え、翔渡は話を続ける。
「一部そうで、全体的には違う、が正解のようだ」
「どういうこと?」
「家庭の事情みたいで。
「それ、ただの悪質なストーカーじゃん」
「本人曰く、まさに悪質なストーカーのようだ。以前、スキルで攻撃を受けたこともあるらしいが、そのときは相手がちゃんと謝罪したらしいけど」
「実害が出ているのなら、取り締まられるべき対象ということじゃない」
「この島だと、スキルによる攻撃は犯罪行為にならないのか?」
「厳密にはならないね。ランキングバトルでさえ互いの承認制だし、録音したとしてもスキル関連で言い訳できちゃったりするから」
「じゃあ無法地帯ってこと?」
「さすがにそうじゃないわ。検挙、取り締まり、いろんな言い方はあるけど悪質性が認められたらさすがに厳重注意や逮捕されるよ」
「ですよねー」
であれば、奏美の件はどちらに該当するのか。
やり口だけで判断すれば、どう考えても悪質性を主張が可能。
しかし実害が出ても被害を申告しないということは、それなりの理由があるのか奏美なりに優しさを示しているのか。
判断がつかない状況であるが、翔渡は1つの理由を思い出す。
「そういえば、結婚自体は両親が賛成していて見方が居ない、と言っていたかな」
「それはかわいそうね」
「だから、俺を信じてくれたのか巻き込んだ償いなのか、それとも気まぐれなのかわからないけど――少しでも力になってあげたいと思うんだ」
「じゃあ私も手伝ってもいいかな」
「え?」
あまりの想像もしていない言葉を返してきた緋音が歩き始めても、少しの間だけ足を前に出せなかった。
「なんか、その子と重なり合うところがあったから。それに、私がやりたいことの経験になると思ったし、何より1人の女の子を寄って集って数人で追い回すなんて許せない」
「なるほどからのなるほど」
「でも驚いたな。翔渡が他の女の子と仲良くしていたなんて」
「え」
(なななななんですか、それ!? どういう意味ですか!?)
もしかしたら妬いてくれている可能性に心を躍らせるも、残念ながら別のニュアンスだったことがすぐに明かされる。
「私なんて、全然友達ができないのに」
「そうなんだ?」
(くっ……
淡い期待が一瞬にして打ち砕かれてしまう
しかしどう考えても自身より友人ができそうな、整ったかわいらしい容姿や優等生気質が通用しない厳しい世界だというのか、という疑問を抱かずにはいられない。
「もっといろんな人と話をしたいけどね。でも、学園島ランキングに乗っちゃうと周りの人は怖がっちゃうから」
「あー、なるほど。怒らせたらフルボッコにされる的な感じでか」
「本音を訊いたことはないから正確なことは言えないけど、大体その通りだと思うよ」
「良くも悪くも実力至上主義ではあっても、そこに人間としての格差なんてないと思うけどな」
「そう言ってもらえると嬉しいけど、現実はそう上手くはいかないのよね」
「まあでも、良くも悪くも俺が居るから。とりあえずは大丈夫だって」
「――……ありがとう。本当、翔渡が居てくれてよかった」
そんな恥ずかしいセリフとサラッと言ってしまった翔渡は、時間差で羞恥心が込み上げて体に熱が帯び始めるのを感じる。
沸騰しそうなほど熱くなってきたせいで、緋音が気恥ずかしくも嬉しそうにしている、という翔渡的には絶対見逃せない光景を視界に捉えることができなかった。
このまま何事もなくパトロールが終わるはずもなく。
「いい加減にしてください!」
路地裏の先に奥、進行方向から女性の怒号が響き渡ってくる。
パッと顔を合わせた2人は頷き、走り出す。
「本当に迷惑なんです!」
少しずつ近づいてくる声に、翔渡は眉をピクリと動かす。
(この声って……)
確定ではないものの聞き馴染みのある声に思え心が逸る。
現場に到着するには時間がかからず、到着したと思えば
「何をしているの!」
そして、黒いスーツ姿の男たちに囲まれていたのは……。
「
「え!?」
「大丈夫か!」
「う、うん!」
「噂の彼女ね――今すぐに助けるから!」
「……」
「ちょっ、またぁ!?」
今度は緋音が行動を起こす前に、スーツ姿の男たちは足早に散って行ってしまった。
ぽつんと取り残される奏美は、去っていく彼らへ目線を向けることはなく翔渡たちの元へ足を進める。
「本当に大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。助けに来てくれてありがとう」
「偶然の偶然だけど、間に合ってよかったよ」
「初めまして、私は――」
「知ってるよ。学園島ランキング上位者の緋音さんだよね」
「え、ええ」
「わたしは奏美。真っ先に大声を出してくれてありがとう」
「怪我がないならよかった」
翔渡は緋音の認知度が高いことに改めて感心するも、それどころではない。
「こんなところで絡まれてるなんて――寄り道でもしたのか聞こうとしたけど、その恰好だと違うようだな」
「ちゃんと帰った後、買い物したかったから外出したんだけど……さっきの通り」
「不用心すぎるだろ、と言いたいところだけど、そんな簡単な話でもなさそうだな」
「そうなの。これまでも放課後に外出したことはあったけど、足には自身もあるし捕まらなかったんだけど――」
「追手の数が増えたことによる誤算、ということかしら」
「うん……」
緋音の推察が鋭いことに「さすがだ」と感心するも、翔渡も思い当たる節に行き着く。
「ああ、さっきのやつらと今のやつらは別なのか」
「あまり外見に差がないから判定しにくいけど、たぶん別人でしょうね」
「しっかし、これだとストーカーの域を超えて包囲網だな」
「理に適っている話ではあるわよ。詮索はしないけど、奏美さんはさっき『足に自信がある』と言っていたから移動系のスキルなのだろうし。1グループだけで追いかけ続けるのは苦労すると思うから」
「それは確かにそうか。で、これからどうするんだ?」
「このまま買い物を続けたいけど……」
「じゃあ付き合うよ」
「え? いいの?」
「俺は時間が沢山余ってるからな。道とかはわからないけど」
翔渡は、奏美から緋音へ目線を移動させる。
「だったら私も同行するわ。目的地への道は奏美さんが居たら大丈夫だろうけど、もしもときのために私が居た方が好都合だろうから」
「それは心強い。あいつら全員がスキル使用者だろうに、戦闘する意志すら示さずに逃走していっちゃうし」
「そうと決まったら移動開始しましょう。奏美さん、どこに行きたいの?」
「スーパー」
「もっと大事な用かと思ってたから肩透かしを食らった気分だ」
「だ、だってグミとかジュースが欲しいなって思ったから……」
「随分とかわいらしい理由だこと」
翔渡は、『そんな理由で危険な目に遇っていたら元も子もないだろ』という責めるような言葉をできるだけオブラートに包んだ。
「目的地もはっきりしたわけだし、行きましょう」
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