スキル【キャンセル】で学園無双!~異世界転生をキャンセルして獲得したスキルは、あまりにも万能すぎて逸般人が通う学園生活も余裕だし、学園島ランキング攻略も余裕なので【世界の覇王】になります~
第24話『見たことあるような気がしなくもない』
第24話『見たことあるような気がしなくもない』
「はぁ~~~~~っ」
盛大な溜息を吐き出す
実際には遠くなっているわけだけど、肩を落として背中を丸めるには別の理由があった。
(学園で
配属されている教室が違うのだから、1日ぐらい顔を合わせないことなど別に不思議じゃない。
顔を見たいのであれば廊下をうろちょろすればいいものの、
そんなネガティブ思考を加速させているのは、
「いい匂い。どこか寄り道でもしちゃおうかな」
代り映えのない日常風景が、今の
一応それだけではなく、元々住んでいた世界では学生らしいことができておらず『興味本位でカラオケや飲食店に入店したい』、という気持ちも背中を押している。
ぽつりぽつりと大人たちとすれ違い、「まさか通報されないよな」とありもしない懸念点を警戒しつつ、とりあえずファストフードのハンバーガー店へ足を進めようとしたときだった。
「ん?」
どこかで見たことあるような気がしなくもない、『キャップを被った赤毛の少女』が視界の端で捉えた。
あまりにも目立っていて、変装しているのかオシャレなのか判断が付きにくい格好は、思考を巡らせなくても該当人物が脳裏によぎる。
(あれ、
さすがに昨日の件がフラッシュバックし、食欲など一瞬で消えてしまい後を追うことに。
すぐに方向転換して足を進めるも、彼女は路地裏に入っていった。
(昨日の時間よりも随分と早いパトロールだな。も、もしかして……俺と話をしながら帰っていたから活動が遅れたとか? え、だったら本当に距離を置かれたってこと? 煙たがられてるってこと?)
あまりのショックに足が止まりそうになるも、危なっかしい姿を忘れられず後を追い続ける。
完全にストーカーと化し、気づかれたら自分が制圧対象になる危険性に怯えながらも足を進める。
(俺みたいな寄り道する学生は居るだろうが、そこまで警戒する区画なのか? 学園が近いから、そうでもないような気がするけど)
通っている学園の生徒で、未だ素行の悪そうな人物を見かけていない経験則から、翔渡はそんな疑問を抱く。
(今朝の経験から、マンション前ぐらいは警戒した方がよさそうではあるけど……ん?)
「あら、こんなところでどうしたの?」
『にゃーん』
なんと、白い毛並みの野良猫と
互いに警戒心がないのか、緋音は膝を曲げて目線の高さを下げ、野良猫はすり寄ってきて頭を撫でられる。
(な、なんてかわいらしい光景が目の前で拡がっているんだっ! カメラ! スマホ! 写真か動画を撮らせてくれぇえええええ!)
幸せな空間から距離を置いている
もはや取り締まられるような不審者となっている翔渡だが、「よしよし、かわいいねぇ~」と優しい声色の
永久保存できない悔しさを噛み締めながら、いざというときは空に逃げようと決心する。
しかし、そんな疲れが飛んでいく至福な時間も長く続かなかった。
(なんだ、あいつら――)
パトロールで自ら事件の匂いを嗅ぎつけて歩き回っているのだから、別に目の前で起きたことは不思議じゃない。
俗に言うところの危ない人たちが緋音の元へ近づいてきて、白い毛並みの猫は驚いて逃げて行ってしまう。
彼女の強さを知っている翔渡は、手助けをするまでもないと思っているも、目を細めるのは必然の相手だった。
なんせ今朝、
「最近ずっと巡回しているようですが、ご用件を窺ってもいいですか?」
「……」
「無視――しているわけではなく、答えるつもりがないということでいいですか?」
意思疎通を図ろうとする親切心を無下する彼らは、無言のまま近接戦闘を始める勢いで、手足を引いて構える。
「何かのお仕事中かと思ったので穏便に済ませるつもりでしたが、そちらがそのつもりなら応えるまで」
「……」
「最初に謝っておきますね、ごめんなさい。私、強いですよ」
(緋音の自信は過信ではなく、積み重ねてきた実戦経験からくるものだということはわかる。それに、俺が介入したらスキル的に状況をややこしくさせてしまうだけだしな)
緋音も臨戦態勢――というには大袈裟だが、右手を前に突き出して手のひら開く。
「想うは紅蓮の景色、咲くのは紅蓮の薔薇――」
「……」
4人の男たちは顔を合わせ、何かを悟ったのか戦闘態勢を解除し踵を返す。
しかし緋音は既に止まらない。
逃走を開始しようとする怪しげな男たちに向かい、スキルを放つ。
「【
手のひらに形成される炎の薔薇は、前方の彼らへ真っすぐ飛んでいく。
「逃がさないわよ!」
「……」
「えっちょ、えぇ?!?!」
(うわマジか)
まさかの、彼らはゲームでしか見たことのない壁から壁へ跳んで――いわゆる『壁ジャンプ』を続けて建物の屋上まで登って行ってしまった。
「危なっ」
その光景に見惚れている暇はなく、緋音は慌ててスキルを消滅させる。
しかし追うことはできず、彼らも高い位置を制したからと言って反撃してくるわけでもなく離れていった。
「本当、なんなのよあの人たち……え」
「あ」
「もしかして、私の独り言聞いちゃってた……?」
「ちょうど今来たところなんだ」
「嘘でしょ、それ」
「はい、ごめんなさい」
「本当は、いつからそこに居たの?」
「えーっと……」
その質問を投げかけてくるということは、気配には気づかれていなかったことになる。
であれば、なんとでも言い訳ができるが……つい先ほどの仲睦まじい幸せ空間を思い出してしまい、正直に答えてしまう。
「実は路地裏に入っていくところから」
「そうだったのね。正直に……話してくれて……ね、ねえ。もしかしてなんだけど、猫ちゃんのところも……?」
「はい、ずっと見ていました」
「……」
「わ、悪気はなかったんだ。あまりにもかわいい感じで、ずっと見ていたくなるほど幸福感をおすそ分けしてもらって、本当にありがとうございますと思っておりまして。可能であったら是非とも写真や映像に残しておきたいほど貴重な状況で――」
「ぷふっ。何を言ってるのかわからないけど、怒っているわけじゃないよ」
あまりにも早口に言い訳を並べながら身振り手振り忙しい翔渡を見て、奏美は噴き出して笑みを浮かべる。
それを見て翔渡は安堵するが、言い訳の途中に感情直球な言葉を並べてしまったことに後悔せずにはいられない。
なぜなら、
「本当に悪気はなかったんだ。ごめん」
「全然いいよ。ちょーっと恥ずかしいけど、誰でもかわいい存在を前にするとああなるからね。気にしてないよー」
「そう言ってもらえると助かる」
「せっかく会ったのも何かの縁だし、また一緒にパトロールする?」
「喜んで同行させていただきます!」
(願ってもない放課後デートの逆お誘い! 絶好のチャンスを逃すはずがなかろう!)
鼻息荒く活気あふれる明るい表情に様変わりした翔渡は、拳を握り締めて喜びを露にする。
もはや無敵の思考回路になっていて、ネガティブ思考など頭の片隅にすら残っていない。
「それじゃあ行こっか」
「はいっ!」
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