鯨ポケット

萩野うづら

鯨ポケット

みずうみの古い岸辺でウサギらが干すラベンダーふくいくとして


それほどにむかしでもないそのむかし祖母がたぬきを化かしたとやら


こんなにも小さいおきつねさまですがちゃんと祀ってしっかりご利益


夏の日の古家ふるやの軒の下陰したかげに封印された緑の獣


水昏いお池に尿ゆまりする夜はふくろうの声じつににぎやか


猫は水 こぼせばこぼすほど増えるどんどん増えて部屋中が猫


ただ白い、白い手帳をもてあますあなたのための鯨ポケット


あの雲の下には雨の森があるリスがウサギが目をしばたかす


黙々とまいまいつぶりのまぐわいを一重まぶたで見つめるいもと


つぶつぶのタピオカを飲んで弟は「どうえん」と言いまちがえる

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鯨ポケット 萩野うづら @Uzura168

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