第2話

 違約、これは明白な違約とケイが冷厳に言い詰める。


「ツタ、いえ、触手は壁から垂れ下がってなかった、床から、しかも襲い掛かって来た。聞いてないわ」


「えーと、そう、だったんですか」

 ゼニスは眼を彷徨わせるが、頼みの主任は打ち合わせ外出中。


 隣のメグは無言の圧。



 もーやだ触りたくもない! おうちにかえる! あとはおねーちゃんなんとかしてよね!。

 言い捨てずかずか歩み去る妹。


 その背を見送りまあ是非も無し、と姉、メグは一つ息をつき。


 作業中、溢れ出る粘液、体液を携行バッグに詰め込んでいると、凶悪な触手は見る間にしおしおにょろにょろの、提示されたサンプル、ツタに変じた。

 体に巻き付けバッグを背負い引きずり出口を目指す。


 ダンジョンから少し離れて駐機した、住居兼のキャリアでケイが待っていた。

 近くの小川に身を浸してきたのか。半裸で、肩に届く青髪に雫を垂らしたまま、到着した姉に駆け寄りごめんね、と小声でささやき積み込みを手伝う。


 支部までは半日、夕方には戻れるだろう。


「まあでもラクっちゃラクだったかなぁ 私一発も撃ってないし」


 変容メタモ、ハンドガン、サブマシンガン、ショットガン、ライフル、くるカチャ右手融合、愛銃をメンテしながらナビシートのケイは機嫌を直すセリフ。


「だぁら クロスもしろ」

「やー」


 あーうん、そろそろ足も使うか。

 ケイはダッシュボードに持ち上げた右つま先にサイドアームを差し込み操作してみた。ふんふん。エイムはともかくパニックファイアはよゆうかね。


 夕刻、会の駐機場はそれなり混雑。予約もないので業者ヤード空きに小半刻待ち、ケイは舟漕ぎメグはコム弄りで潰す。

 納品積み下ろしに立ち会いで、のこのこ現れたゼニス向こうにたんたん、質実にバチ切れてみせているハンター姉妹今ココ。


「不備については謝罪しますごめんなさいでも、補償のどうのはじぶんの一存ではえーと責任者に計らないと、なんらかのカタチにははい」


 ……ガキの遣い、追い打ちの槍をケイは自ら呑み戻す。

 メグも無言で頷く。


「主任の裁定ね、な・ん・ら・かの」

「は、はい、なんらかの」


 ジルカの帰任待ちでゼニスはなけなしの権限を振り絞り、姉妹に最上級宿舎での供応を用意した。

 ケイは喜んでシャワーに浸かり、メグは特上ディナーに舌鼓を打つ。川魚のサシミ、蟹のフライ、サラダ。オンでは味わえない、産地直送出来立てあつあつアクティヴデジットレシピ。



「やーなんかめんどう掛けたみたいだね」


 いいぐあいに毒気ホネ抜きされた契機にジルカが来訪。

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