龍神無双
第1話
「ふーんこのへん、だよね」
妹に同意を求めるでなし、いつもの通り、独り言にも似て
「どのへん?」
と、
姉妹はいつもの通り、依頼によりダンジョンを探索していた。
依頼は、「一抱えぶん」
「ツタ、判る? にょろにょろしててこう」
踊るようなしぐさ、手つき身振りでゼニス、商工会の仕入れ担当、の見習い、から毎度の、あー。
「こ・れ・だ」
主任のジルカが、ぶん、商談の隣から現物を放り込んできた。
「うんこれこれ」
なるほど。にょろにょろした、しなびたひも状の、これが、ツタか。
これの自生地を見つけ、二人で抱えられるだけ運んで持って帰って来てくれればいい、とのこと、取り敢えず初回は。
ブッ。
サンプルを片手で掴み撫でたり握ったりしていたメグが無言で次の挙動、ツタの端を、ナイフに
吹けば飛ぶ羽毛の薄さ軽さに切り取ったそれを、くるくると掲げ持ち眺め、ケイと数回目線を交わして口を開く。
「よし、引き受けた」
で。
前回は、この穴のこの辺で採取したらしい、ということ。
「スゴ腕ハンター姉妹」の二人だが、ここサイタマのイナカでは覇を競う商売相手が居ないので。といって、たいていの用事であれば、河向こうから呼び付けるまでも無く近隣ではこの二人に依頼が廻り、それ大過なく稼業を過ごして来たのだ。少なくともベテラン、熟練という評価、称号であれば誰もへっ、などとハナで返しはしない、実際地元貢献便利姉妹なので、そのくらいは御愛嬌。
ひょえ?!。
姉にならい辺りを眺めふりふりしていたケイが先に声を上げ。
「どうした妹」
「なんか?! なんかおしりなでたさわった?!」
姉は小首を傾げ、再び辺りを見渡し、私じゃないぞと。
壁じゃない! と再びケイ。
「足もと! いる!! なんか!!!」
弾かれるようにメグの手元でライトが発光。
初めて、二人の足もと、ダンジョンの闇が祓われそれは。
にょろにょろと蠢き波打つ、ああ、支部工房で確認したそいつは。
「ツタ……??」
「これがツタなの?!」
んー。
姉は額をトントン叩きながら暫し瞑目。
「ちがう、こいつは」
開眼し、満面の笑顔で。
「触手だ!」
「どっちでもいいよぉ!! わぁ!!」
ケイの足もとからにょろにょろ群生して来たツタだか
「いー!! やー!!」
「おお、これがウワサにきく “触手ぷれい?” 」
「感心してないでぇ!! たすけてぇ!!」
「んー。でもなあ」
依頼がある。
切り刻んでしまってよいものか。
先と同じ、額を叩く片手指、とは別の効き手が躊躇なく背後に伸び、抜き放った一閃は群生中、もっとも図太い一枝を過たず絶ち切った。
ばらり。
直後、ケイを呑み込みもみしだいていた一群は花が咲くかに開き頽れ、ダンジョンの床に倒れ伏す。
「こいつが、幹」
指示棒に
「ね~!! ちゃん~!! 」
「おーよしよし、デコイ苦労」
「やーん ぐちょくちょ! 」
「あ、捨てるな、それも回収しろ」
取り敢えず、これで半分は済んだか。
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