第4回 接近

飲み会当日。

「ここにしようかなぁ~。」

 隣の席に、抜け目なく小倉は座ってくる。最初の方の話題は、普通の日常会話や店の仕事の話だったが、だんだんお酒が入って、他の人の会話の内容もきこえなくなってくる。

「いやあ。水野さんの旦那さんがうらやましい。毎日、毎晩、水野さんとラブラブになれるんしょう。」

「え、え」

答えらないような話に、他のパートさんが助け舟を出してくれる。

「副店長、そういうのセクハラですよ~。」

「いやあ、ゴメンなさい。だって、水野さん美しくて、私独身でしょ。もううらやましくて、水野さんみたいなきれいな人と毎日・・・あ!みなさんももちろん美しい!」

「副店長!!とってつけるみたいなのやめてください。」

みんなが笑う。仕方がないので、つられて笑ってしまう。

「笑顔もいいなぁ~。」

もうほんとに口が止まらない人だ。


「2次会行く人~」

幹事さんが、声を挙げる。

ああ、また副店長から誘われたらどうしよう。

「水野さん、2次会どうしますか。}

ああ、やっぱ聞かれた。

「か、家族が待っているので、こ、これで・・・・。」

「そうですよね。送りたいですけど、立場もあるんで、気を付けておかえりください。」

え、そ、そうなんだ。すると小倉は、顔を少し寄せて小声で言った。

「今日はみなさんの前で美しいとか言ってすみません。でも、僕の本当の気持ちなんです。それだけはお伝えしておきます。」

そう言って、小倉は笑顔で手を振って2次会の人たちを追いかけて行った。


思ったより、感じの悪い人じゃないのかな・・・。

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