第3話 出現

 「はじめまして。当店に異動になった。小倉 駿(しゅん)と申します。よろしくお願いします。」

 副店長として新しい男性社員が北友の店にやってきた。社員やパート、アルバイトの勤怠管理や出納を担当になった。

 レジや商品の補充等を行う緑とは直接をすることはなかったが、勤務の変更等で話をすることがあった。

「あの~。来週、子どもの3者面談があるので、12時であがりたいですけど。」

「いいですよ。お子さんいくつですか。」

「中3なんです。」

「あなたに似て美人の娘さんなんでしょうね。」

「そ、そんなぁことありません。」

これをきっかけに、小倉は、しょっちゅう話しかけてくるようになった。


「今度、飲みに行きませんか。」

「子どもがいるので無理です。」

「残念だなあ、水野さんみたいにきれいな人とお酒飲めたら幸せなのになぁ。また誘いますね。」

 既婚者だと分かっていて誘ってくる小倉に、はっきり断りたいが、子どもの都合等で休みをもらう相手とあってなかなか無下にも断りにくかった。

 それをいいことに、小倉は、しつこく話しかけてきたり、飲みに誘ってきたりすることをやめなかった。

「もう、店の新しく来た副店長、しつこくなんか話しかけたきたり、冗談だと思うけど飲みに行きませんか~。なんて言うのよ。」

雄二に相談すると

「そういうのセクハラになるから、店長に言うとか、俺が店に言ってもいいぞ。」

「分かった。その時は言うわ。」

と言ってくれたが、あまり事を荒立てなくて、断った。


 そんな時、店の職員の飲み会が開かれた。

 また、小倉に絡まれたらどうしようと思って雄二に相談した。

「店の慰労の飲み会、どうしようか。参加しなくてもいいんだけど。」

「参加してもいいんじゃない。他のパートさんも出るんでしょ。仲良くなるチャンスじゃない。」

「そっか。ありがとう。そうする。」

結局、参加することになった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る