第2話 出会い
私は、雄二とは、会社の研修で出会った。
彼は、大手百貨店の新入社員。私は、中堅デパートの同じく新入社員だった。小売業界合同の接客担当研修に参加して、同じグループになった。
グループは、全部で4日間の研修があって、講義を聞いたり、模擬接客をしたりする内容だった。
模擬接客では、少人数の班に分かれて、いろいろなシチュエーションの接客対応の
練習をする。いろんな要望を言ってくるお客様、無理な返品を要求するお客様、値引き交渉をしてくるお客様などへの対応を班のメンバーで考えて、他の班の前でうやってみる。初めてなので難しかったが、班をずっとリードしてくれたのが、雄二だった。
私は、その優秀な姿に、すっかり魅せられた。研修が終わったら会えなくなるって
私からアタックした。
「水野さん、研修が終わってからもいろいろ情報交換させてもらいたいので、よかったら連絡先交換してもらえませんか。」
「坂井さん。僕も会社で聞いてもらいたいこともあるかもしれませんね。」
とオッケーをもらった。やった。
それから、何かと口実を作って、雄二に連絡をした。飲みにも誘った。
「水野さん、彼女とかいないんですか。」
「ああ、いたんですけどねえ。大学卒業を機会にふられました。ハハ。」
こんな優良物件を振るなんて信じられない。
「どうして、ふられたんですか?もし、よろしかったら。」
「僕は、北海道出身なんです。彼女とは、北海大学で同期でした。彼女は医学部。僕は法学部の大学院。就職で、僕は今のスーパーに就職が決まったんですが、彼女は、北海道の僻地で医者になることを選んだんです。僕は、百貨店や不動産の北部グループで仕事をしたかった。結局、僕たちはそれぞれの夢に向かって生きることにして、別れたんです。」
「私、水野さんの彼女に立候補してもいいですか。」
「え?坂井さん。」
「お友達からでいいんです。だめですか?」
「分りました。ではお友達から。」
その後、順調に交際を続け、雄二からプロポーズしてもらった。
優秀で、やさしくて、細やかな心遣いのできる理想の夫だった。
ただ、欠点ではないが、雄二はとても真面目だった。女性も別れた彼女しか知らなかったようで、スキンシップやセックスより、会話やデートを大事する人だった。
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