第6話 ノイエ・サンスる

 おれごんは達観していますよ。どうせ文章なんて上手にならないって。だから今のままで、このままでいいって。


 どんなに勉強しても結局はセンスだと思うんです。その人がもともと持つ感性。地の力。

 どこにどんな表現をもってくるか、過不足なく、驚きを内包し。それを10万字も続けて書いて、最後はきちんとまとめる。付け焼き刃でどうこうなる物量じゃないですもん。

 上手下手は別として、これってもう、その人がもつ個性って言いきっていいんじゃないでしょうか。



 ノイエ・サンスーシってすごくないですか? おれごんじゃ3度くらい人生をやり直してもノイエ・サンスーシは内から出てきっこない。

 これって学んでどうこうなるレベルじゃないと思うんです。そのひととなりが名詞を、文章を、物語全体を包んでいる。


 おれごんがちょっとノイエ・サンスーシをひとつ借りてきたとして、それでどうなります?

 大して変わりませんよ、だってレンタルなんですから。


 じゃあってんで、全編でノイエ・サンスーしたら?

 もうそれは私の作品じゃない、かの巨匠の作品です。


 違うんですよ。

 私という書き手は、内なる物語の湧出を文章に起こしているだけ。だから有名な先生方と比較しなくていい。変に自分を貶めなくていい。


 だったらおれごんはノイエ・サンスーしなくていい。ノイエ・サンスらなくていいんです。ノイエ・ジールも、α・アジールもいらない。よそはよそ、うちはうち。


 ノイエ・サンスー山はもうかの巨匠が登頂したあと。私は私で、自分の山を登ればいいんですよ。8000メートル級どころか、100メートルにも満たなくていい。日本一低い山、弁天山でいい。

 人のマネっこをして途中まで登るくらいなら、それより低い標高でも自分の山の頂上でいい。そう思います。

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