お人形
猫月蘭夢@とあるお嬢様の元飼い猫ショコラ
小さな部屋
いつからか、ぼくの部屋に光は入ってこなくなった。
ぼくの姉を名乗る人物が、ありとあらゆる光を遮ったからだ。
最初の方は、光が見えなくなって混乱した。
涙が溢れて止まらなくなった。
そんな時彼女は毎回同じ言葉を囁く。
「ねぇ……どうしてそんなに泣くの?大丈夫よ。これで、もう誰にもあなたを奪わせないから──永遠に、私だけのもの」
囁くように言って、最後にはニコリと笑う彼女。ぼくは彼女が怖くてたまらなかった。
いつも、いつも彼女は笑顔だ。
でもその笑顔はいつもどこか歪んで見えた。
今となってはぼくの暇つぶしは睡眠か思考で遊ぶことくらいしかない。
昔は暇つぶしが他にもあった気がするけど……それらは彼女が全て奪っていった。
彼女の監視下であれば他の暇つぶしをすることもできるようだけどやりたくはない。ことあるごとに手を入れてくるのが非常に嫌だ。
ある時ドミノ倒ししようとしたら勝手に参加した挙句倒したあの事件はぜーったいに忘れない。
しかも、彼女が去るタイミングでやり直そうとしていたドミノを全て回収していった。最悪の事件として脳内に刻まれている。
……他にもあの姉を名乗る人物はぼくの力作折り紙を破壊したりするし……。思い出せば、キリがない。なぜだかたった一度だけ「ありがとう」と言ってきた気がするけどそんなもの忘れたから意味がない。
……入り口の方から足音が聞こえる。
「ただいまー」
……帰ってきた。
「ねぇ、良い子にして待ってた?私の可愛い可愛い弟」
はぁ。今日もお人形としてのお役目こなしますか。
静かに、無表情に、動かずに、体を硬直させて、言いつけを守って。
……お母さん。
これで、良いんだよね?
お人形 猫月蘭夢@とあるお嬢様の元飼い猫ショコラ @NekotukiRmune
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