第二十一話「旅支度」
クルーア・ダンジョンを脱し、クレスたちと食事を取りながら護衛依頼を共同して受託する話になった翌日。
ナオとシエルは宿を引き上げ、フィオの自宅を訪ねた。
「おう、上がってくれ」
冒険者ギルドで待ち合わせをし、ナオとシエルがやってきたのは木と石で作られた長屋の一室。間取りで言えば1DKといった感じか。
「護衛依頼でしばらくスターレットの村を離れるとして、ここはどうするんだ?」
「ここはギルドに斡旋してもらった部屋だからな。私物はそんなにないし、鍵を返してそれっきりだ。満室であることがほとんどだから確実に借りられるとは限らないがな」
冒険者には一つの拠点に留まるタイプと護衛依頼を受けつつ放浪するタイプとに大別される。これまでフィオはスターレットの村を拠点に、時折違う村まで遠征していたが、大半を生まれ故郷でもあるスターレットの村で過ごしてきた。
「いつでも出かけられるように荷物はある程度この背嚢にまとめてある。護衛任務は明日からだろう? あんたたちは準備大丈夫なのか?」
「まぁ、俺たちの荷物は収納スキルにまとめてあるからな。そうだ、その背嚢もこっちで預かるか?」
「……頼む。その方が効率的だからな」
荷物を預けたフィオに、今度はナオからマントを手渡す。
「これは?」
「ファイバースパイダーの繊維から錬成したマントだ。服は採寸の手間があるし、嫌がるだろうと思ってな」
「あ、あぁ。なるほど、これはいいな。軽い」
ファイバースパイダーの繊維に植物繊維や骨系素材を組み合わせ、シンプルながら森での活動を想定したグリーンに染め上げたマントが出来上がった。
一方、ナオが自分のために錬成した防具はシンプルな胸当てと脛当てだ。骨や毛皮を組み合わせ仕上げたそれは、両手に槍ないし、それぞれに剣と盾を持っても動きを阻害しないように籠手は避け、常に装備していられるだけの軽さも意識した。
「これだけ装備をしっかりしていれば、いっぱしの冒険者って感じするか?」
「まぁ、そうだな。シエルも籠手を新調したし、服は素材を加えて強化しているんだ」
「あぁ、既製品の服に素材を加えて強化錬金するなら採寸の手間はないのか……だが、うーん……」
仲間としての信頼は少し芽生えているものの、出会ったばかりの男にあれこれ任せ委ねるというのは難しい。フィオとしては、パーティの方針を委ねることはできても、プライベートとは切り離しておきたい。
私物を入れた背嚢だって渡すことに若干の抵抗があったものの、そこは効率を優先してなんとか渡したくらいだ。
「まぁ、ナオの錬金術師としての腕は認める。ここから先、冒険者としての腕前も認められるくらいには成長してほしいものだな」
「おう、任せとけ。矢の追加も作ってあるから、必要な時には言ってくれ。そんじゃ、俺はこれからポーションを作るぞ。行きがけに小瓶が買えたのがよかった。これで管理も楽になるってもんだ」
そう言ってポーション作りを始めたナオをシエルとフィオは思い思いに過ごしながら眺めていた。
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