第二十話「村の食堂で、再びの出会い」

 クルーア・ダンジョンからスターレットの村に戻ったナオ、シエル、フィオの三人は、その足でギルドへ向かい、依頼達成の報告し報酬を受け取った。ナオとシエルは得た報酬の半分をフィオに渡そうとしたが、フィオは首を横に振って三分の一に留めた。


「さて、話のついでだが、あんたたちは宿を取っているんだよな?」


 フィオは受け取った硬貨を軽やかにポケットへ仕舞いつつ問うた。


「まぁ、そうだが?」

「あと何日分支払っているか知らないが、もし……その、なんだ。引き上げてうちに泊まらないか?」

「おぉ、それはありがたい申し出だな」

「そうですね。せっかく同じパーティなんですから、拠点を一つにするのがいいですよね」

「なら続きは夕飯を食いながら話すか」


 ナオはそう言って二人とともに食堂へ向かいだした。食堂の扉を開けると、そこには見覚えのある三つの姿があった。


「あれ、ナオさんたちじゃないですか」


 ラディが元気よく声を上げ、クレスとリンジーもこちらに気づき、笑顔で手を振った。


「ナオさん、よくご無事で。我々も無事に戻ってこられました」


 クレスがホッとした表情でそう言った。


「もちろんだ。俺を誰だと思ってる?」


 ナオが冗談めかして胸を張ると、リンジーがクスクスと笑う。


「ポーションのおかげで、クレス兄の怪我もすっかり良くなったんです。本当にありがとうございました」


 リンジーがそう言って深々と頭を下げると、クレスも慌てて頭を下げてきた。


「そういえば、約束してたろ? 飯でも今度行こうって。よかったら、俺たちと一緒にどうだ?」


 ナオの提案に、三人は顔を見合わせ、満面の笑みで頷いた。


「はい、ぜひ!」


 クレスが答えると、ナオは食事を注文するため、食堂の主人に声をかける。

 やがて、テーブルには焼きたてのパンと、肉と野菜がたっぷりと入ったシチュー、そして大きなパイが並べられた。クレスたちが目を輝かせながら食事に手を伸ばす。その光景は、ナオがかつて見た、深夜のオフィスでカップ麺を啜る自分とはあまりにかけ離れていた。


「……ナオさんって、本当に錬金術師なんですね。すごいなぁ」


 シチューを口に運びながら、クレスがぽつりと呟いた。錬金術が自分の努力によるものではないため、気恥ずかしくなったナオは話題を変えた。


「そうだ。ところで、俺たちもこれから三層に挑もうと思ってるんだが、お前たちはどうするんだ?」


 ナオの言葉に、クレスたちは互いに顔を見合わせた。そして、クレスが真剣な眼差しでナオに語り始めた。


「僕たち、この村から出発する隊商の護衛任務を受けようと思ってて、ダンジョンとは違って、慣れない道でも危険がいっぱいですけど、僕たちだけで挑戦してみようって」

「それはいいな。頑張れよ」


 ナオの言葉に、クレスは少しだけ不安そうな表情を見せた。


「でも、僕たちだけじゃ不安で……。ナオさんたちの力も借りたいです。無理を承知でお願いします!一緒に商人の護衛をやってくれませんか?」


 ナオは、クレスの真剣な表情をじっと見つめると、隣に座るシエルとフィオを交互に見た。


「あ、あの……行先はどの方面ですか?」

「ここから南にあるイストの町です」


 行先を尋ねたシエルにリンジーが答える。イストの町までおおよそ四日、予備日として一日を含めて五日の旅程だ。シエルは肯定的な反応を示しつつ、フィオは判断をナオに委ねる。


「どうする? リーダー」


 リーダーと呼ばれてつい目を見開くナオだったが、


「この依頼、受けるぜ」


 そう言ってクレスに手を差し出す。二人が握手を交わし、二つのパーティの協力体制が決まった。

 出立は明後日、食事を終えた彼らはそれぞれの寝床へと戻っていった。

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