第10話:パワードスーツVSコスプレヒーロー!究極の決戦

 ちょいわるだーのパワードスーツ部隊の前に、七瀬くるみはまさに窮地に立たされていた。アルファのコスプレでは、パワードスーツの硬い装甲を打ち破ることができない。強力なレーザーやミサイルが、くるみを容赦なく追い詰める。周囲の建物は破壊され、粉塵が舞い上がる。爆炎と閃光が、くるみの視界を遮る。くるみは、このままでは本当にやられてしまうと直感した。身体中が悲鳴を上げ、喉はカラカラに乾いていた。爆風で飛ばされた瓦礫が、くるみの頬をかすめる。この状況では、いかにアルファの機動性を持ってしても、突破口は見えなかった。彼女の頭の中には、データスの冷徹な笑みが浮かび、心に重くのしかかる。


「このままじゃダメだ……切り札を出すしかない!」


 くるみは、自身の肌面積と能力の相関関係を思い出した。これまでの戦闘で得た経験、特にガトリングとの戦いでの「肌面積の増加による能力向上」という発見が、くるみの脳裏をよぎる。それは、まさにこの絶体絶命の状況を打開するための、唯一の希望だった。そして、次に選んだのは、その特性を最大限に活かせるコスプレだった。それは、大人気アクションRPGアニメ『鋼鉄の戦乙女ヴァルキリー』の主人公、「ヴァルキリー」だ。ヴァルキリーは、その装甲が破壊されるほどに力が湧き上がり、より強力になるという特殊な能力を持つ。肌の露出面積が増えるほど能力が向上するくるみの特性と、まさに合致するコスプレだった。くるみは、この一発逆転の可能性に賭けた。ヴァルキリーのコスプレは、強靭な金属製の装甲と、所々にデザインされた露出部分が特徴だ。巨大な剣と盾を携え、まさに戦場の女神と呼ぶにふさわしい。


「ヴァルキリー、変身!」


 くるみは、瞬時にアルファの衣装を脱ぎ捨て、予め用意しておいたヴァルキリーの衣装を身につけた。わずかな時間で、くるみの身体を銀色の装甲が覆い、その隙間から健康的な肌が覗く。ヴァルキリーの衣装は、そのデザイン自体が防御力と攻撃力のバランスを極限まで追求しており、胸元や脚など、随所に肌が露出する部分が意図的に設けられていた。くるみの身体が、まばゆい光に包まれる。光が収まると、そこに立っていたのは、銀色の装甲に身を包んだ、凛々しい戦乙女の姿だった。くるみの顔は、以前マミカのコスプレをした時と同様に、ヴァルキリーそのものへと変貌していた。瞳には、静かなる闘志が宿る。


「な、なんだ!?また変身しただと!?馬鹿な!」パワードスーツ部隊は驚愕した。彼らは、くるみの変身能力をデータスから聞いていたが、まさか戦闘中に衣装を切り替えるとは予測していなかった。彼らの脳内には、くるみのデータが再構築され、混乱が生じていた。


 ヴァルキリーのコスプレに切り替えたくるみは、あえてパワードスーツの攻撃を受け止めた。最初のパワードスーツが放った強力なパンチが、ヴァルキリーの胸部の装甲に命中し、大きな音を立てて砕け散る。しかし、装甲が破壊されるたびに、くるみの身体からまばゆい光が放たれ、力が爆発的に増大していくのだ。彼女の瞳には、以前とは異なる、力強い光が宿っていた。痛みは最早感じない。肉体の限界を超えた力が、くるみの全身を支配していた。


「ぐっ……だが、この程度で終わりだ!いくら耐久力が上がろうとも、所詮は人間だ!」パワードスーツのパイロットは、さらなる攻撃を仕掛ける。レーザー、ミサイル、パンチ、キック。ありとあらゆる攻撃がくるみに集中する。


 しかし、装甲が破壊され、肌が露わになるほどに、くるみの肉体は超人的な耐久力と攻撃力を得ていく。彼女は、もはや痛みすら感じていないかのようだった。受けた攻撃の衝撃を、そのまま自身のパワーへと変換しているのだ。ヴァルキリーの装甲は、まるで生命体のように、破壊されるほどにその内部から光を放ち、くるみの力を増幅させる。くるみの呼吸は荒くなっていたが、その表情には揺るぎない決意が刻まれていた。彼女の周囲には、光の粒子が舞い、まるで彼女自身が輝く星になったかのようだった。


「馬鹿な!?攻撃が効かないだと!?」パワードスーツ部隊は恐れをなした。彼らの攻撃は、くるみに傷一つつけられないどころか、逆にくるみを強化している。これまで絶対的な優位を保っていた彼らの自信が、音を立てて崩れていく。データスの計算も、この予想外の能力の前には意味をなさなかった。


 くるみは、破壊された装甲の隙間から溢れる光を纏いながら、パワードスーツ部隊に反撃を開始した。その一撃一撃は、まるで巨大なハンマーのように重く、パワードスーツの装甲をいとも簡単に破壊していく。ヴァルキリーの持つ巨大な剣は、レーザーすら切り裂き、パワードスーツの機体を両断する。くるみが剣を振るうたびに、空間が震えるほどの衝撃波が発生する。瓦礫が吹き飛び、工場内の構造物が次々と破壊されていく。くるみ自身の足元から、力が地面に伝わり、ひび割れが走る。


「これが、私の全力だ!」


 くるみは、自身が攻撃を受けるほどに強くなるという、ヴァルキリーの能力を最大限に引き出し、次々とパワードスーツを撃破していく。激しい爆発音と金属の軋む音が響き渡る中、くるみは満身創痍になりながらも、最後のパワードスーツを破壊した。その場に崩れ落ちたくるみの身体は、ほとんどの装甲が剥がれ落ち、生身の肌が露わになっていた。額から一筋の汗が流れ落ちるが、彼女の瞳には確かな勝利の光が宿っていた。死力を尽くした戦いに、くるみは深く息を吐いた。彼女は、自身の能力の真髄を垣間見たのだった。そして、この戦いの先に、ちょいわるだーの本当の首謀者がいることを確信した。彼女の心には、疲労と達成感が混じり合い、しかし何よりも、この困難を乗り越えたという強い自信が漲っていた。

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