第6話:肌面積の逆転劇!破れた衣装が勝利を呼ぶ
重装銃士ガトリングの猛攻は、容赦なく七瀬くるみに降り注いでいた。バルドのコスプレ衣装は、もはや原型を留めないほどにボロボロに破れ、くるみの肌が露出する面積は増え続けていた。巨大なガトリング砲から放たれる金属の弾丸は、まるで猛り狂う嵐のようだった。ガトリングの容赦ない砲撃が、さらにくるみの鎧を砕き、肘当てや膝当てが吹き飛ぶ。金属片が飛び散り、火花が散り、熱気がくるみの肌を焼く。くるみの身体には、鎧の破片による擦り傷や打撲痕が刻まれていく。痛みは限界を超え、くるみの意識は遠のきそうになった。全身の細胞が悲鳴を上げ、視界がチカチカと点滅する。しかし、その苦痛の奥底で、くるみはかすかな光を感じていた。それは、ティアナのコスプレで経験した、あの制御不能な力の兆候、そして「肌面積が多いほど、本家以上の力が出る」という噂が現実となる予感だった。
「もう終わりだ、コスプレヒーロー!お前の敗北は決定した!」ガトリングは勝利を確信し、冷酷な笑みを上げた。彼の巨大なガトリング砲からは、熱気を帯びた煙が上がり続けている。彼は、くるみがもはや戦闘不能だと確信していた。パワードスーツのコックピットの中で、ガトリングは自らの勝利に酔いしれていた。データスの正確な分析と、自身の圧倒的な火力が、くるみを完全に打ち砕いたと信じていたのだ。
その時、くるみの脳裏に、かつてティアナのコスプレで経験したあの「暴走」の記憶が鮮明に蘇った。あの時も、肌の露出が増えるほど能力が異常に向上した。あの時感じた恐怖とは異なり、今、くるみの心に湧き上がったのは、この絶体絶命の状況を覆すための、唯一の希望だった。くるみは、その記憶を頼りに、自らの意志でその力を引き出そうと試みた。破れた鎧の隙間から、意識的に力を解放するように、心の奥底にあるリミッターを外す。ガトリングの砲撃で、再び肩から二の腕にかけての生地が大きく破れ、くるみの素肌が広範囲に露わになった。冷たい風が、肌に直接当たる感覚が、くるみの神経を刺激する。痛みよりも、新たな力が全身を駆け巡る興奮が、くるみの思考をクリアにしていく。それは、単なる身体能力の向上ではなかった。まるで、周囲の空間からエネルギーを吸収しているかのような、超常的な感覚だった。
その瞬間、くるみの身体からまばゆい光が放たれ、バルドの防御力が飛躍的に向上したのだ。これまで、ガトリングの砲弾を受けるたびに激しい衝撃を受けていたくるみが、まるで何事もなかったかのようにその衝撃を吸収し始めた。彼女の身体を覆うオーラが、物理的な衝撃を無効化しているかのようだ。光の膜が、くるみを完全に包み込み、銃弾を弾き飛ばす。手にした盾は、さらに輝きを増し、まるで生きているかのようにくるみの意志に反応し、ガトリングの砲撃をすべて受け流し始めた。盾に命中した砲弾は、まるで紙くずのように弾かれ、あらぬ方向へと飛んでいく。くるみの顔には、驚きと同時に、確かな手応えが浮かび上がっていた。これは、ティアナの時の暴走とは違う。制御できる。いや、制御できるようになったのだ。
「な、なんだと!?バリアを展開しただと!?ふざけるな!」ガトリングは驚愕の声を上げた。これまでの攻撃が全く通じないことに、彼は動揺を隠せない。彼の顔に、初めて焦りの色が浮かんだ。データスの情報とは違う。この状況は、彼の計算外だった。彼のパワードスーツの照準が、くるみを捉えきれずに揺れている。
くるみは好機とばかりに、ガトリングに向かって猛然と突進した。破れた鎧から溢れ出す力は、くるみの身体能力を限界まで引き上げ、瞬く間にガトリングとの距離を詰める。足元のコンクリートが、くるみの踏み込みによってひび割れる。彼女のスピードは、これまでガトリングが把握していたくるみのデータとは全く異なるものだった。まるで、時空を歪ませるかのような加速だった。ガトリングは慌てて距離を取ろうとするが、くるみのスピードは彼を上回っていた。彼は、巨大なガトリング砲を捨て、パワードスーツの腕で殴りかかろうとする。その動きは、くるみから見ればスローモーションのように見えた。くるみの思考速度が、彼の行動を完全に上回っていたのだ。
「逃がさない!」
くるみは、ボロボロになった盾を振り上げ、ガトリングのパワードスーツに渾身の一撃を叩き込んだ。これまで防御に使っていた盾が、恐ろしいほどの破壊力を生み出す武器へと変貌していた。その一撃は、まるで巨大なハンマーで岩を砕くかのようだった。巨大な衝撃音が轟き、ガトリングのパワードスーツは大きくひび割れ、地面に激しく叩きつけられた。パワードスーツからは煙が上がり、機能停止を示す赤いランプが点滅している。ガトリングは呻き声を上げながら、動かなくなったパワードスーツの中で意識を失った。くるみは、力の奔流の中で、自分がまさしくヒーローになったと実感していた。その勝利は、これまでの苦労と努力が報われた瞬間だった。
くるみは息を切らしながらも、ガトリングの敗北を確信した。身体の奥底から力が漲り、疲れを感じさせない。彼女は、自身の身体に残されたバルドの破れたコスプレ衣装を見た。ほとんどの装甲は剥がれ落ち、生身の肌が露わになっている。しかし、その肌からは、微かな光が放たれ続けている。それは、くるみが獲得した新たな力の証だった。肌面積と能力の相関関係という、自身の能力の秘密を完全に理解した瞬間だった。
「やった……!やっぱり、肌の露出面積が増えると、能力が上がるんだ……!そして、もう制御不能じゃない!」
くるみは、この新たな発見に驚きと喜びを覚えた。これは、今後のヒーロー活動において、大きなアドバンテージとなるだろう。敵の攻撃を受けても、逆にパワーアップできるのだ。くるみの顔には、勝利の笑顔が浮かんだ。しかし、ボロボロになったバルドのコスプレ衣装を見て、くるみはため息をついた。この衣装はもう使えない。また一から新しい衣装を作らなければならない。だが、この勝利はくるみに確かな手応えと、自身の能力の秘密を解き明かす重要なヒントを与えてくれたのだった。くるみは、疲労困憊の身体を引きずりながらも、次の衣装の構想を頭の中で巡らせ始めた。肌面積の多い衣装を、どうデザインすれば、より強力な能力を引き出せるのか。彼女の思考は、もうすでに次なる戦いへと向かっていた。彼女のヒーローとしての道は、まさに始まったばかりだ。瓦礫の山となった工業地帯に、勝利の風が静かに吹き抜けていった。くるみの心には、かすかな希望の光が灯り始めていた。
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