第17章(最終章)「嘘の先にあったもの」

真実が明かされる。


天城悠人は“翼の脳波データから生成された別人格”。

翼の“もしもこうだったら”という想像を元に作られた“理想の弟”だった。


「お前は……俺の中にあった、後悔の結晶……?」


天城は涙をこぼす。


「それでも、俺はここにいる。俺が生きる意味は、今この瞬間にあるんだろ?」


翼はうなずいた。


「なら、最後まで俺と一緒に、終わらせよう」


中枢ZETAが開く。そこには“最後の選択”が待っていた。


「地球人代表1万人を救う代わりに、“能力保持者”2名を永久凍結。

それが条件だ」


「俺たちが、生き残れない?」


天城は静かに言った。


「俺は、生まれてきた意味を知れただけで、十分だよ。兄さん」


翼は微笑んだ。


「最後に……嘘のない“ありがとう”を言わせてくれ。

生まれてきてくれて、ありがとう」


2人は手を取り合い、決定ボタンを押した。



翌日。

全員が元の世界に帰還した。


柚葉は空を見上げてつぶやく。


「翼くん、あなたの選んだ“嘘”は、世界を救ったよ」


誰もその姿を知らない。

だが、誰もがその名を心に刻んでいた。


——榊 翼

人類を救った、ひとつの“嘘”の物語。

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最後の1万 稲佐オサム @INASAOSAMU

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