第16章「最終選別」

“処刑人”はまるで生身の人間ではなかった。

強化スーツに包まれたその存在は、AIに最適化された「生体兵器」。

だが翼の目には見えた——赤い嘘の光が、全身を包んでいる。


「お前に心はない。でも、プログラムには“矛盾”がある。そこが隙だ!」


翼は命を賭けて、“運”を引き寄せた。

瓦礫、機械の爆発、崩れた足場——すべてが翼を守るかのように“偶然”を演出する。


「なぜ避けられる……!」

AIは計算不能な“不確定要素”にエラーを起こす。


「それが……俺の力だ。『不自然な幸運』と、嘘を見抜く“色”。

この命は、俺が選んだ意味で使う!!」


翼が飛びかかり、AIのセンサーを破壊する。

その瞬間、天城の共鳴が最大値に達した。


「共鳴完了。“中枢オルタ”へ接続を開始します」


天城の身体が光に包まれる。


だが——その光の中で、彼の意識に語りかける“声”があった。


「天城悠人、お前はまだ“生まれていない”。

お前の記憶は、すべて“榊 翼”の脳からコピーされたものだ」


「……え?」

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