第11話

 ――翌日、昼休み。


 教室で弁当を開こうとしたそのとき、

 俺のスマホに通知が届いた。


《📩 真央:ちょっと、あんたは来なくていい。》


 ……えっ。


 続けて、

《📩 星野みらい:今、大事な話してっから✋》


《📩 千景先輩:少しだけ、私たちに時間をちょうだいね。》


 そして最後に、


《📩 姫坂ほのか:これは、“私たちの戦い”。見守ってて。》


(…………こわっ)


 何が起きているのか、さっぱりだった。


 だがこのとき――

 学校の屋上では、四人のヒロインが顔を合わせていた。


 ◆◇◆


 屋上。


 姫坂ほのか、朝倉真央、星野みらい、南雲千景。

 全員が揃うのは、これが初めてだった。


 最初に口を開いたのは、ほのか。


「……ありがとう。集まってくれて」


「別にアンタに呼ばれたわけじゃない。勝手に来ただけ」


 真央が腕を組みながら睨むように言うと、みらいが肩をすくめた。


「でもまぁ、ちょうどよかったんじゃね?

 どうせ全員、同じ相手にガチで惚れてるんだし」


「ええ。だからこそ、話しておきたかったの」


 千景が優しく言う。


「このまま、何も言わずにぶつかり合うよりも、

 ちゃんと気持ちを共有して、フェアに、ぶつかり合いたいなって」


 四人の視線が交差する。


 最初に沈黙を破ったのは――真央だった。


「……あたしは、拓人の幼なじみで、

 誰よりも長く一緒にいた。

 だから、“当然の権利”みたいに思ってたんだ。

 でも、違った。あいつが他の人と笑ってるの、見て初めて気づいた。

 ……私、本気で、あいつのことが好き」


 ほのかが頷く。


「私も。フリの恋をやめて、初めて本当に人を好きになった。

 気づいたときには、拓人くんを目で追ってた。

 ……私、もう誰かの“役”でいるのはイヤ。

 だから、自分の気持ちに正直でいたいの」


「ウチも同じ。最初は仲間見つけたくらいだったけど、

 気づいたら……あいつと、もっと話したい、隣にいたいって思ってた」


 みらいはまっすぐに言う。


「ウチ、あいつにだけは素でいられるの。

 だから、この想い、絶対に曲げない」


「私も、拓人くんと出会って、前に進めた。

 自分がまた人を好きになれるって、気づかせてくれた。

 ……後悔したくない。最後まで、想いを伝えたいの」


 千景の声も、決意を秘めていた。


 しばしの沈黙の後、ほのかが口を開いた。


「……正直、敵にはなりたくなかったよ。みんな、いい子だから」


「うっせ、敵だろーがなんだろーが、やるからな!」


「ふふ……」


「じゃあ、決まりだね」


 そして四人は、視線を交わしながら――


「「「「絶対に、負けない」」」」


 その言葉を、同時に口にした。


 一方その頃、教室にひとり残された俺は、

 昼休みの弁当をつつきながら呟いた。


「……なんか、すごいことになってない?」


 このとき俺はまだ知らなかった。


 この“恋の会議”が、俺自身に“答え”を求めさせる引き金になることを。


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