第11話 復讐代行業者

 「はじめまして、私はある新興中小企業に勤める営業マンです。―――」

 「ご連絡ありがとうございます。宍戸と申します。当社は日々の生活で起こる、様々な問題を解決する活動を行っております。男女トラブル、職場トラブル、理不尽な嫌がらせ、近隣トラブル、貴方が受けた攻撃、我々が仕返しします。」

 Mは業者と連絡を取るにあたって自分自身の身に危険が降りかかることは避けたかった。なにせ復讐代行業者という響きがそもそも怪しい。詐欺がいるかもしれない。いや殆どは詐欺ばかりなのではないだろうか。そうなると支払いをしても履行されないことだってあるだろう。犯罪絡みといえば暴力団が背後にいるとも思えた。そこでMは、可能な限り情報を集めた。が、大半は業者に対する根拠のない噂や偏見で、実態を知るには役に立たなかった。一方で、マルチ商法や新興宗教団体のように被害者の会が存在しないことは、このような業者を活用しようと気持ちが傾いた理由の一つだったかもしれない。また依頼経験者の実体験話が極端に少ないことが気になりはしたものの、実際に危険を冒して成功した身の上話など不特定多数に晒したがるバカはいないだろうと考えれば、それも理解できた。たとえ玉石混交であってもビジネスとしては成り立っているようだ。正しい業者を選びさえすれば目的は達成されるはず―――。Mはそう考えた。またMは、ウェブ検索結果の上位に露出している業者を意識して選んだ。繁盛している業者はSEO対策のための予算も他社より多く捻出でき、検索結果の上位に掲載されるはずだ。逆に検索結果で下位表示される業者は、詐欺か手の悪い業者である可能性が高い。声をかけるのはやめよう。Mは暫くの間詮索したのち、或る業者とコンタクトを取ることにした。最初はHPの問い合わせフォーマットで、その後はチャットアプリに移行して会話を始めた。チャットアプリ上には無料電話機能があったが、通話するにはまだ抵抗があった。何かを察知されるかもしれない。当面は電話はやめておこう。

「私は現在―――省略―――。斯様な当社に出向中の株主を退職させることは可能でしょうか。」

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