第16話 何やってんだか

 開南高校駐輪場。

 屋根付きで4棟あるんだけど、その内バイク用は1棟だけ。後の3棟は自転車用。駐輪スペースの幅が少し違うんだ。

 バイク用は、横にヘルメットを掛けなければならない場合が殆どだから。

 それに、直立スタンドが無い型のモノもある。まぁ、これは自転車も同じだけど、バイクとは傾きもだけど、そもそもの車体の幅が違うし。


 亀沢が停めた後、あの一橋先輩がやって来たらしい。


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 あの女金井はビッチのくせに、オレ一橋とは殆どセックスしなかった。何かと理由言い訳つけてやがったし、まぁ、嫌がるアイツを押し倒すのは、オレの征服欲を程良く刺激してくれたが。

 が、それにも飽きたから、他にも寄って来る女はいたし、2ヶ月程~だよな、GW後に声掛けて、6月も終わろうとしてる頃に捨てたんだから。


 最近、クラスメート…って言うか、同学年の女共が誘いに乗ってこねぇー。だから1年にちょいちょい声をかけてやってるって言うのに。

 今年の新入生は、なんかパッとしねぇんだよな。確かに、その中じゃアイツ金井は巨乳で上玉だったんだが。

 捨てて間も無いし、また声掛けりゃ、アイツは靡くんじゃ?


 そう思ってた矢先だ。

 アイツ金井は次のオトコを見つけたらしい。


「おい、牧島」

 確か、アイツと同じクラスだったな。オレは中学ン時の後輩、牧島に声を掛けた。


「あ、ひ、一橋先輩。お疲れ様です」

「おう。お前のクラスに金井っているだろ。呼んでくれねーか?アイツ、オレの女なんだ」


 だが、牧島は怪訝な顔を見せた。


「何だ?」

「え?その、金井はカメと付き合ってるって」

「誰だ、それは⁉︎」

「同じクラスのカメ…亀沢です」


 次のオトコを見つけやがったのか。

 ったく、噂に違わぬビッチだな。


「どんなヤツだ?」

「どんな…、うーん、まぁ、付き合い悪くて、あ、バイトしてるんだった、カメの奴。バイク乗ってて、その、特徴無い奴っすよ」


 なんだ、ソレ。

 そんなんじゃ、ヨリを戻す奪い返すのも軽そうだなぁ。オレは再び、あの巨乳をどうしてくれようか、楽しい事を考え出した。


「あ、でも、金井、結構カメんちに泊まってるみたいっす。週末はほぼ。通い妻みたいって、クラスの女共も言ってたし」

「はぁ?」


 泊まって?通い妻?

 オレとは、何かと理由つけて言い訳してヤらせなかったくせに。

 その、カメってのが、オレよりいい男だとでも言うのか?


 会ってみたら、その辺にゴロゴロいそうな、誰がみても平凡モブな男だったが。

 バイク~まさか、軍団の関わり合いがある?バカが。そんなおいしいネタをくれるなんて、コイツやっぱ1年坊主ガキだな。

 それとなくSNSや口コミで拡散する。

 次の日には職員室に呼ばれやがった。これで停学か?


 だが、アイツは全くお咎め無しだと。

 信用度?その他大勢ザコモブのくせに、オレをコケにしやがって!


 見てろよ。


 駐輪場。確かPCXって言ったな。

 スクーターなんて、どれも同じに見える。どれだ?


「一橋?何やってんだ?」


 声を掛けてきたのは?同じクラスの川崎か?


「別に」

「おかしいだろ?お前、自転車通学ジテツウですらないのに」

「べ、別に」

「まさかと思うが、最近ココ、彷徨いてないか?」


 何だ?まさか噂になったか?


「はぁー。全く無関係のお前が彷徨いてると完全に不審者だぞ。それにな、ココの街灯の上、アレが見えて無いとは言わねぇよなぁ」


 街灯の上。は?か、監視カメラ?


「アレ、伊達ダミーじゃねぇぞ。お前、馬鹿だろ。悪戯や盗難があったら学校の評判信用ガタ落ちだろーが。ってか、マジで気付いてねぇーのかよ?そうやってさ、馬鹿やってる事、同学年はお前の本性バカさとチャラさ、知られつつあるんだ。いつまでもカッコいい俺様って思われてると思わないコッタな」


 な、何で、コイツにここまで言われにゃならないんだ。ふざけやがって!


「くっ」


 あの生意気な1年が言っていた"信用度"。


 まだ、この時のオレはピンと来ず、ただ傷ついたプライドに怒りまくっていた。

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