とにかく推理の楽しさがふんだんに味わえる作品でした。
主人公の髙﨑が学校へ行った直後、御山御影という生徒から「ポーチ」の状態を手掛かりに、「自分がどういう風に学校まで来たのか」という事実を言い当てられます。
この過程がまさに「ホームズ」を連想させられ、推理小説ファンならニヤリとさせられました。
浮かんでくるいくつかの可能性。それらを断片情報から削除していき、最終的に正解へ辿り着く。それにひたすら「なるほど」と頷かされ、綺麗に着地する論理に頬が緩みます。
そんなスタートで始まった本作。今度はトイレに「謎の答案」が置かれるという事態が起こります。
『グロタンディーク素数』なるものの話も出て、一つ数学の知識もつくのも嬉しいところ。
そうして解かれていく真実。
情報としての「未知」と「既知」。これは人の行動に大きく影響を与える。行動パターンの数々から、それらを割り出していく推理がまたとても綺麗でした。
多段階で見えてくる推理と真相。理路整然としたロジックはやはり読んでいて心地よいと、改めて実感させられました。
この物語は高崎颯真という男が緑川御影という女性に実家暮らしだと言い当てられることから始まる。
なぜそうだとわかったのか、彼女は恐ろしい推理力を披露してくるのだが、この作品の本題はここから先にある。
ある日、御影がグロタンディーク素数って知ってると颯真に言ってくる。
これは数学者グロタンディークという数学者が講演中に実際は素数じゃない57をそうだと言ってしまったことからその数字がそう呼ばれているのだが、なぜ急にそんな話をしてきたのか?
というのも、あるテストの答案に57という数字が書いてあったかららしい。
それは「17番目の素数を答えよ」という問題だったのだけど、その答案用紙がトイレに落ちていたようだ。
名前は一枚目の答案用紙に書いてあるらしく、これは二枚目なので名前がわからない、そこで誰の答案なのか、当てようと彼女は言い出す。
そこから推理が始まることになります。
途中で明かされる答えに笑ってしまったのですが、まだそこで物語は終わりじゃなく、そこから先で明かされる真相の数々にはとても驚かされました。
トリックと推理も緻密で、非常にハイレベルか、ミステリー作品でした。おすすめです!